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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十三ノ巻
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第百四十一話 絶対防御 対 氣刃投射

 ゴアぁっ―――、そしてそのラルグスの右腕の動きが『氣刃投射(サイコ・バリスタ)』を放つ合図だったようで、放たれた氣刃が一瞬で悠へと肉薄する!! 迫る刃、迫る鋩、迫る鏃・・・発射された兇刃の群れ―――。

 にぃっ、っと、だがしかし悠はその口角を吊り上げた。すぅ―――っ、悠は左手を出してその手で顔半分を覆う。そして、悠が叫ぶはあの言葉。

「『絶対防御』・・・っ!!」


第百四十一話 絶対防御 対 氣刃投射


 キン―――っ、という小さな甲高い音を僅かに発し、悠の眼前に壁のようであり、楯のような遮蔽物が形成される。それは『絶対防御の楯』。青く透明で、それは悠が空気を、悠自身の異能で圧縮し固めた『楯』

 ―――木星や土星、天王星、海王星などと言った外惑星の超高圧化された内部に存在するとされる『金属水素』や『超熱水』と同じ類のもの、悠が異能で大気を金属空気化したものだ。それを金属空気をさらにアニムスで強化した『絶対防御の楯』である。空気に含まれる酸素により淡く青味がかって見える透明の楯だ。

 その直後―――ババババババッ―――っと弾幕状に、まるで弓かボウガンで射られた矢のようにラルグスが投射した氣刃の群れが雨霰のように悠に降り注ぐ。

 ギンギンギンギンギンギンッ、っと、だがしかし―――ラルグスの『氣刃投射』は悠の『絶対防御』の楯を前にして全ての氣刃が弾かれる。『絶対防御』の楯に傷一つつくことはない。そして、弾かれた氣刃はまるでドライアイスのように昇華してそれはまた再びラルグス自身へと還っていくようだ。

「くそってめぇっ!!」

 一通り全ての氣刃を撃ち終えてラルグスは悔しさに顔を歪めた。

「・・・っ、―――っ///」

 にやっ、くくくっと悠は口角を吊り上げる。だが、直後内心でいたたまれない恥ずかしさが込み上げてきた。なぜならば、その自身のにやっとした笑みを塚本 勝勇のそれを意識してしまったからだ。

 ふしゅっ、っとラルグスは再び全身から淡く光る氣を放つ。それはラルグスの頭上に光る雲のように漂い、、、先ほどと同じく『氣刃投射』行使の準備だ。

「喰らいやがれっ―――『氣刃投射』ッ!!」

「やってみろっ!!俺の『絶対防御』はあんたの技じゃ崩せねぇぞ・・・!!」


 ラルグスの『氣刃投射』による攻撃。悠の『絶対防御』による防御。それらの応酬がしばし、続き―――だが、ラルグスはまるで難攻不落の鉄壁の防御を誇る城塞を相手にしているように悠を攻め(あぐ)ねた。一方の悠のほうもラルグスの苛烈な攻撃に『絶対防御』を行使し続けるという攻め手を欠いた戦いの様相を呈していた。

 悠とラルグス二人は徐々にアニムスが底を尽きはじめていた。

「ぜぇぜぇぜぇっ―――くっそッてめぇ―――エアリス人の分際でさっさと死んどけよっ!!」

 悠の淡く青い透明の『絶対防御』の楯の向こう側でラルグスはその両手を両膝の上に置いて肩でぜぇぜぇと疲れたように息をしていた。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ―――あんたこそ・・・っ!!」

 先ほどからずっとその異能を行使し続けている悠も疲れが見え始めて、息が切れ始めている。

「くそぉおおおっ―――」

 ラルグスは両膝に手を置いていた体勢から勢いよく起き上がり、再び両拳に力を入れて全身を力ませ、先ほどと同じように氣を放出―――ふしゅ・・・っ、、、だがそれは霞か煙のように霧散。

「ばっばかなっ・・・くそっ俺様の氣がッ!! くそくそくそくそくそってめぇっ」

 地団駄を踏むラルグス。自動車でいういわゆるガス欠だ。ラルグスは己の信じられないその様子を見て、地団駄を踏んだ。

「くっ―――」

 っ。ラルグスの悔しがる様子を後目に、だが、悠の『絶対防御』もやがて、、、すぅっ、っとその存在が淡くなり、まるで空気に溶け込むかのように『楯』が消え失せていく。悠、ラルグス双方が異能を行使し続けるだけのアニムスの絶対量を消費して、自然と異能が解けたのだ。

「おいてめぇユーっと言ったな―――だったらこれしかねぇよな?」

 にやりっ、っとラルグスは悠を見た。長く長く自分と互角に戦える日之民。ラルグスの言動はまるで悠を認めているかのようなものだった。

 ちょんちょん、っとラルグスは自身の腰に帯びている直剣(スパタ)を指で示し、その指を今度は悠の腰に向けた。

「―――」

 悠は無表情で、自身の左腰元に差している直剣にその右手をすっ、と伸ばした。悠もまた、ラルグスを好敵手―――もしくは互いの異能の相性が良くない相手だと認め始めていた。

「いくぜ―――ユー」

 シュラーっとラルグスは腰に差しているその直剣を抜く。ラルグスの直剣の柄は革紐が巻かれているが、全体が金属で鍛えられており、その柄頭の材質も金属だ。柄頭は玉のように丸くなっており、宝飾としてなにかの、群青か、青玉かの青い宝石が嵌め込められている。鍔は棒状だ。また剣身はすらりと反りはなく、金属の煌めきを放つ。ルメリア軍団長や軍司令官が用いるスパタという直剣だ。

 ラルグスの鬨の声に悠は触発されたのか、

「あぁ―――ラルグス」

 すぅっ、―――っと悠も自分の左腰にその右手を伸ばした後、その手でぎゅっ、っと悠は自身の直剣の柄を握り込んだ。

 悠の剣の剣身は日之刀と比べるとやや短く、腰から垂直に近い角度で差されている。悠はそのような自身の剣を鞘から引くように、さぁっ、っとその直剣を引き抜いていく―――。

 悠の剣は父親譲りのもので、その柄頭は黄金に細工され、柄を握ったときに手を守るためにある鍔は棒状であり、だが、その棒鍔の周囲をぐるりと覆うようにお椀のようになった鍔が覆う。まるで近世の騎士のような剣の柄に近い。

 抜身の悠の剣はすらりとしていて、日之刀を比べて見事な反りはないが、やや短いためおそらく振り回しやすいことだろう。ラルグスのスパタと比べて全くもって見劣りしない剣だ。むしろ、長大なラルグスの剣のほうが振り回しにくいことだろう。

 ヒュオーっ―――っと一陣の風が吹いた。悠のその前髪を揺らす風。一方のラルグスには全く風は届いていない。

 否―――悠の剣から風が吹いているのだ。

「ッ・・・!!」

 キッ、っと悠の眼に力が籠る。悠は勢いよく口を開きつつ―――、その剣を正眼に構える。

 悠の直剣が淡く緑色の光を発するっ。ぶわっ、ビュオオオオっ、っとその直後―――、悠が構えるその直剣から暴風が吹きすさぶ・・・!!

「てめぇっ魔法剣か・・・!!」

 ラルグスの問いかけに悠はなにも答えず、

「―――」

 ラルグスは顔を、眉間を、その眼差しを歪める。

「・・・っつ」

 悠の周りの、地面のあらゆる砂塵、ごみなどを吹き飛ばし、まるで悠を中心にして竜巻が発生しているような錯覚さえ、ラルグスは覚えた。


「これで決めるッ―――魔法剣『朝凪の剣(シルフィード)』・・・っ!!」

 一瞬全ての暴風が止み、キラリっ、っと瞬光のように悠の『朝凪の剣(シルフィード)』が緑色の光を放ち煌めいた。その直後ごあっ、っと―――、『朝凪の剣』から旋風と暴風を纏いし、風刃がラルグスに向かって放たれる・・・!!

「ッツ!! ―――っ」

 ラルグスの眼が、瞳が大きく見開かれ!! ―――だが、その直後ラルグスはにやりっ、っとその口角を吊り上げる。白光するラルグスの直剣(スパタ)―――ラルグスが僅かに余るその闘氣(アニムス)を自身が右手に持つその直剣に通わせたのだ。

 彼ラルグス=オヴァティオスとてただ者ではない。月之国にあるルメリア帝国では最高軍行政官(ドゥクス)の地位に就き、またそれと同時にこの『五世界の権衝者』を自認する『イデアル』の強者の選抜である『イデアル十二人会』の一員である

 ラルグスは直剣を頭上に掲げ、勢いよく叩き斬るように斬り下す―――!! するとそのラルグスの直剣から白く光り輝く氣の斬撃が放たれ―――、悠とラルグスが互いに相対するちょうど真ん中。ドウッ、っとそこで両者の斬撃はばちばちっと激しくぶつかり(せめ)ぎ合うっ!!

「「ッ―――!!」」

 悠の緑の氣光を放つ風氣の斬撃―――、ラルグスの白く輝く氣の斬撃―――。拮抗する両者の『力』。バァンッ、っと大きな音を立てて双方の氣の斬撃の威力がプラスマイナス零で相殺し合う。

 そんな中、悠は己の『朝凪の剣』を自身の足元に向けて横薙ぎに振るう。

「そら・・・っ!!」

 ぶわっ、っと『朝凪の剣』から吹き出た突風。それは軽々と悠々と悠の身体を持ち上げる。悠の身体を軽々と宙に浮かせるには充分な風力だ。

 ぶわっ、っと悠は足元に巻き起こった突風を利用して高々と空へと舞い上がる。地上からおよそ十メートルと言ったところで、悠は地上にいるラルグスを見下ろし、見止めた。

「ぉらぁ・・・ッ!!」

 悠は『朝凪の剣』を駆使し、空中で体勢で整えると、ブンっ、っとその『朝凪の剣』をラルグスに向かって薙いだ。

「てめぇっ!!」

 ラルグスに向かって放たれた風を纏う氣の斬撃。

「喰らえっラルグス!!」

 悠が『朝凪の剣』から放った三日月型の斬撃は真っ直ぐにラルグスに肉薄していく。

「だがなっ俺は『不死身のラルグス様』だっ!!」

 そんなラルグスは、悠が放った自身に向かって飛んでくる風氣の斬撃を、迎撃すべく己のその右手で握る直剣スパタ。その柄を握る右手の後ろに左手も添えた。

 すっ、っとラルグスは両手で持ち直剣スパタを振り上げる。

「そんなもん・・・しゃらくせぇっ―――」

 ラルグスはいきったように言い放つと―――、悠の斬撃が自分に届く瞬間だ、それは。ラルグスは自身の氣を通わせ、淡く輝く直剣スパタを思い切り上から下へと振り下ろした!!

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