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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十二ノ巻
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第百二十四話 ようこそ、僕達の日下部市に

 輸送機の搭乗員、操縦士達は驚き慌て、輸送機の装甲を当てにしてそこに集うものの、その狙いは第六特殊部の面々ではない。

 そもそもがこのロケット弾の機影も、それを発射した人物の影も彼らが持つ索敵レーダーに映っていなかったのだ。だからこそそれだけ第六感社の兵士は、皆が皆慌てているのだ。


第百二十四話 ようこそ、僕達の日下部市に


 不意打ちのロケット弾は輸送機のメインローターの内、進行方向前部のメインローターに直撃―――、メインローターを盛大に破損させた。第六感社特殊部の輸送機はそのようにして、飛ぶ羽根を捥がれたのだ。

 ざっ、ざっ、ざっ―――ざりっ、っとその男が現れた。怖いぐらいの哂みをその頬に貼り付け、その口角に哂みを湛えた男はその右手には対戦車バズーカ砲を持っていた。

「ようこそ、僕達の日下部市に」

 ぽいっ、っとその男塚本 勝勇は弾がなくなったバズーカ砲をグラウンドの地面に置く。

「キサマ、何者だ!? 不意打ちとは何様のつもりだ」

 その第六特殊部の社員一人の言葉を皮切りに、十数人全ての社員達が塚本に向かってその黒い機銃を構える。

「不意打ち?きみが言っている言葉の意味が解らないな? 先に仕掛けてきたのはきみ達第六感社のほうだったと思うけど?僕は」

 ぐぐっ、っと引き金に置かれている指が引かれ―――、

「やかましい!!死ね―――」

 ―――タタタタタタタタタタッ―――、第六特殊部所属の社員達が構える全ての銃が火を噴き、この場に現れた塚本を狙い撃ちにする。確かにその数十発の弾は塚本に命中したはずだ。

「ど、どこに消えた!?」

 だが、蜂の巣になったはずの塚本は既にその場にはいない。その姿がかき消えたのだ。

 きょろきょろ・・・っと。各個人が持つヘルメットの索敵レーダーも未だに塚本の影を捉えてはいない。レーダーによればここには誰もいないことになっている。

 バチン―――ッ、そのとき高出力の電撃の音がして―――

「ぐわッ・・・!!」

 ―――一人の特殊部社員の断末魔が聴こえたのだ。

「「「―――ッ」」」

 その断末魔を聞いてその声の出所を皆が見るものの、塚本の姿はすでになく、白目を剥いてびくびくっ、っと昏倒する迷彩服姿の社員の姿だけがある。

「お、おい大丈夫か・・・!?」

 仲間の一人が、びくんっびくんっ、っと昏倒する社員に近づき抱き起そうとその手を伸ばしたときだ―――・・・パァンっ―――っとどこからともなく聴こえた一発の銃声。

「ぐわぁああああああッ!!」

 倒れた仲間の社員に手を伸ばそうとしたその社員の右太腿に一発の銃弾が命中したのだ。この塚本に撃たれた第六特殊部の社員は、がくんっ、と落ち、脚を押さえてもんどりうって転がりまわる。―――彼は太腿から血を流しその機動力を奪われた。

「くそっ不可視能力者か・・・!?この化け物め―――」

 タタタタタタタタッ―――その中の一人が手にした機銃を縦横無尽に、縦横、銃口の向きを変え、角度を変え撃ちまくる。もちろん友軍には弾が当たらないように配慮している。

おおよそ蟻が入る隙間もなく機銃の弾を撃ち切ったはずだ。すでに引き金からはかちんかちんっと引き金が空になった音しかしなくなっていた。

 だが、しかしまた―――パァン―――っ、

「ぎゃ―――ッ」

 その銃を縦横無尽に乱射したその男も銃弾に倒れる。

「「「「ッ!!」」」」

 ―――その様子を見て、機銃を構える第六特殊部所属の社員達総員に戦慄が走った。

「いやいや、化け物だなんて、うんきみ達の所業のほうがよっぽど化け物だと僕は思うよ?」

 すぅ、っとその場に塚本がその姿を現す。

「「「ッ」」」

 ぎょっ、っとして残った第六特殊部の社員達がその機銃を構え引き金に沿えた指を引き―――タタタタタタタタッ―――っと塚本を撃って撃って撃ちまくる。だが塚本は―――、

「・・・だがしかし、―――きみ達が撃った弾は全て外れてしまった、かな?」

 にぃ―――塚本が哂う。それを見て、その塚本の様子を見て、、、わなわな・・・がくがく―――恐怖が第六特殊部の社員達を襲う。銃で狙撃すれば消える男。たとえ不可視の異能を持っていたとしても、あの弾幕の中、な、なんでこの男は生きていられるのだ、と

「「「「~~~ッ!!」」」」

 機銃の雨霰を受けたはずの塚本は傷一つ負っていなく、さらにそう『・・・だがしかし、―――きみ達が撃った弾は全て外れてしまった、かな?』と第六感社特殊部の社員達に言い放ったのだ。

「ふむ・・・、いっぱいの鉛玉をくれてありがとう。あの大破したガンシップと一緒に日下部の復興に使わせてもらうよ」

 塚本はその左胸の内ポケットの中に手を入れ、、、それを、右手に握りこんだ。ピンっ、っと信管を外す小気味のいい音―――

「そのお礼にこれを僕からきみ達に進呈しよう」

 ―――ぽいっ、っと塚本は右手に握りこむ黒いごつごつとした塊を第六特殊部の社員達の頭上に放り投げた。

 「「「「―――ッツ」」」」

 第六特殊部所属の社員達が驚き目を見開く中―――バァンッ、っと塚本が放った手榴弾は迷彩服姿の社員達の頭上で炸裂・・・その中身を爆風と共に四散させた。

「こんなものかな」

 たった一人で第六感社特殊部の社員十数名を制圧した塚本は、すたすた、とその輸送機へと向かった。そして、その外から口を開く。

「さぁ、おとなしくでてきてくれるかな?」

 しーん。塚本の呼びかけに誰も応答しない。

「ん?聞こえなかったかい?なんならもう一発手榴弾をきみ達操縦士さんにあげてもいいんだよ?」

 しーん。それでもまだ、なしの(つぶて)だった。

「ふむ―――」

 思案顔の塚本は一歩、二歩、数歩足を退く。倒れた第六感社特殊部の兵士とその輸送機が一まとめに見える位置まで退いた。そこは、塚本が立ち止まった場所はグラウンドの周囲に植わっている木の下の辺りだ。

 そこでやはり独りで輸送機機内に突入するのはさすがにまずい、とでも思ったのか、塚本は電話を取り出し、取り出そうとしたときだった。

「・・・っつ」

 思わず塚本は目を細め、その眼差しがきついものになった。


 タンタンタンっ、っと輸送機の金属の床を歩く音―――。それの音が塚本の耳に聴こえたのだ。

 ざっ、っと一人の男が機内から現れ、輸送機の側の地面に、ざりっ―――っと降り立った。

「・・・ごめん、侑那―――」

 じぃっ―――っと塚本はその男を注視する。その一方で塚本は右手に持った電話でその男を密かに撮影―――、すぐさま侑那の権限を使って警備局のデータベースにアクセス。もちろん自身の居場所がばれないように、恋人である諏訪 侑那の端末を装うことを忘れない。

「っ」

 だが、該当者なしの表示。この場に現れた人物が日之民である可能性は少なくなった、ということが塚本には判った。

「―――」

 仕方なく塚本は自身の端末から視線を外す。じぃっ―――その塚本の様子は、輸送機から現れたこの男を、どんな人物であるかの見極めているように見える。現れた男は気怠そうな表情で、、、その口を開く。

「―――おぉ・・・」

 先に男のほうが『おぉ』と言葉を発した―――。その輸送機の機内から現れた男は色の付いた髪をしている。髪を普通に下ろしており、前は分けたような髪型だ。

 その男の顔は目鼻立ちがはっきりとしていて一見すると優男風で、さらに長身だ。その体格は筋骨隆々ではなく、痩せているわけでもないがやや細身の三十代から四十代の男だ。この男の一際目立つところはその眼だ。その真紅の色をしたきれいな眼である。

 その男の上下の服装は黒もしくは猩々緋(しょうじょうひ)臙脂(えんじ)色よりも黒に近い赤黒色に統一され、さらにその上着の上にマントような外套をはためかせている。

「おぉ・・・日之民(エアリス人)にしてはやるではないか―――、数で圧倒していたクルシュの兵隊どもを沈黙させるとは」

 輸送機の機内から現れたこの男は、すぅっ、っとその紅い目を閉じる。その表情は、やれやれ・・・とでも言っているかの表情である。

「・・・きみは誰だ・・・?」

 クルシュ?一方の塚本はやや当惑していた。『クルシュ』などという名前?や組織名はこれまで聞いたことがなく、聞き始めだったからだ。塚本はややゆるりと慎重な態度で口を開く。もちろんこの男の名前や正体にも興味はあるが、もっと興味が湧いたのは、この現れた男が第六感社特殊部の兵達を見て、『クルシュの兵隊』と称したことだ。

「クルシュの兵隊とは・・・?」

 塚本の呟きが聴こえ、すぅっ、っと男は閉じていた目を開く。

「・・・」

 その赤黒い外套服の男は塚本を一瞥するも―――、塚本に征圧され、グラウンドに倒れている第六感社特殊部の兵達に再び視線を移す。

 すぅ―――、また再び、敵である塚本の目の前で己の目を閉じ、遥か空を思い詰めた顔で見上げる。

「確かに『流転のクルシュ』の貴女の言ったとおりだ―――、」

 その声は軽い調子の声ではなく、暴力的な怒鳴り声のような声色でもなく―――理知的で落ち着いた低い男の声だ。現れた男は遥か空への視線を切り、すぅっと再び頭の位置を元に戻して塚本にもその紅い眼の視線を戻す。

 ざりっ、っと赤黒い外套の現れた男は一歩前へと踏み出した。そのときにむぎゅっ、っと倒れている第六感社特殊部の兵を踏む。

 それは誤って踏んでしまったものではなく、ワザと倒れている人を踏んだのだ。踏まれたその者は死んではいない。塚本の放った特殊な手榴弾によってただ意識を失っているだけである。

「―――『流転のクルシュ』貴女の仰るとおり、彼奴(きゃつ)ツカモト=カツトシは強い」

 塚本は現れた男に抑揚のないその声で自分の名前を言われた。

「そいつはどうも―――」

 この男に自分の名を名乗った覚えなど塚本にはなかった。であるのに、自分の名前を口に出された。それ故に塚本はやや警戒した面持ちだ。この現れた男の、まるで思考を見透かしてくるようなその紅い眼に、塚本はこの男は底知れぬなにかを秘めている、と。

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