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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十二ノ巻
123/460

第百二十三話 僕の作戦はこうだ―――

「「―――っ」」

「だが、信吾、愛莉さん安心してほしい。僕を奈留の後見人にするという、噂を流したらぱったりと尾行はなくなったよ。それにそこだけは侑那にも言ってある、最近奈留の周りに変質者がいる、ってね」

「「―――・・・」」

 二人は憂いと戸惑い、怒りから解放されたように塚本の目には見えた。


第百二十三話 僕の作戦はこうだ―――


「勝勇・・・っ、、、ありがとう」

「―――えぇ、私からもありがとう塚本くん。そうねいっその事塚本くんが奈留の後見人になってほしいぐらいだわ」

「ははっ―――ま、考えておくよ」

 にこりっ、塚本はきれいな陰のない笑みを二人に対して浮かべる。

「―――それに奈留も侑那に構ってもらえて内心では嬉しそうにしてたしね。今の侑那はあの子奈留が警備局の警備学校に入学するように洗脳―――、ごほんごほんっ目下説得中だったような、はは」

「そう、侑那ちゃんったら」

 愛莉は安堵したような、だが複雑そうな笑みを浮かべる。

「ま、そんな理由で話を元に戻すけど、僕は件の第六感社があの北西戦争に一枚噛んでいると睨んでいるんだ。だから、あの第六感社の輸送機は墜落()とすわけにはいかない。あれは拿捕(だほ)する。僕は第六感社の搭乗員からたっぷりと話を訊きたいからね」

 にぃっ、っと塚本は口角を吊り上げ、くいっと右手で自身の眼鏡を押し上げる。

「ま、どうせ戦闘専門の社員が載っているだろうし、戦闘にはなるだろうね」

「久しぶりの戦いか、腕が鳴るぜ、、、くくっ」

 勝気な笑みを浮かべる信吾。

「もうっ信吾くん。一応捕まえるのが目的だから手加減してあげないと・・・っ」

「おっとそうだったな、愛莉。でも、くくく・・・」

「僕の作戦はこうだ―――」

 そうして塚本は信吾と愛莉にこの己が考えた作戦を告げるのだった。


 塚本により、此度の作戦を一通り聞いたあと、神妙な面持ちの信吾が口を開く。神妙で真面目な顔つきに関しては、先ほどの奈留という娘の件で親友である塚本に感謝し、恩義を感じたのだろうか?それは本人でなければ分からないことだ。

「な、愛莉。愛莉には付き合っているときに話したと思うけど―――」

 信吾は脇を歩く愛莉を見つめる。

「・・・」

 うんっ、っと愛莉は優しい笑みを浮かべて信吾に肯いた。

「―――勝勇にこれを言うのは初めてかな・・・」

「なにかな?信吾。僕に言うことって」

「ごめん勝勇。今までずっと言えなかった。俺―――実は祖母ちゃんがイニーフィネ人なんだよ」

 親友の突然の告白だった。

「っつ」

 塚本はなるべく驚きの表情を出さなかったつもりだ、だがそれは簡単に看破される。

「、、、驚くよな普通」

「いや、僕は驚いていないさ。日下は日之国の中で位置的に一番イニーフィネ皇国に近い。長い間独立をしていたし―――、僕はイニーフィネ人の血が部分的に流れている人が一定数いる、ということは以前に聞いたことがあってさ。はは、まさか信吾がそうだったのは意外だったけどさ」

「塚本くんのその反応―――私も最初に信吾くんから聞いたときはびっくりしたけど、、、でも私は信吾くんと付き合っててその、、、彼の人となりを知ってたし、ね。信吾?」

 にこり。愛莉は信吾に微笑みかけた。その言葉と愛莉の表情で信吾は照れたようになる。

「あ、あぁうんまぁ愛莉。ごめん勝勇、、、いつかは言おうと思っていたけど、こんなときにこれはないよな・・・」

 信吾は自嘲的な笑みを浮かべた。だが、塚本のほうはいたって普通の顔で、むしろ『なんでだ』のような表情だ。

「いや、そうかな?僕はこんなときこそ、と思うよ信吾。とにかく信吾の秘密を僕に教えてくれてありがとう・・・っ」

 ぐいっ、っと塚本は自身の右手を信吾の頸に回し、互いに肩を組む。その衝撃で信吾の白銀の髪がきらきらふわっとなった。信吾の肩に手を回すのは親愛の情を示す塚本の愛情表現だった。

「よせやい、勝勇」

「はははは・・・信吾っ」

 そのように、よせ、と言う割に信吾も塚本も笑っていた。


「はぁ―――・・・、また始まっちゃった。信吾くんと塚本くん」

 そこで愛莉はしらぁっとした半眼になった。さらに肩を竦めて両手をはぁっ、っとさも呆れたかのように溜息をこぼしたのだった。


//////


 塚本は輸送機が着陸しようとしている地点に先行したので、信吾と愛莉の近くにはすでにいない。二人は、信吾と愛莉は塚本の立てた作戦通りに位置に着いた。ドッドッドッドっ、という重低音。信吾の黒くて大きいバイクのエンジンが噴かされている。

「―――」

 そこは戦場ではなかった。二人がいる場所はごくごく普通の道にいる。ただし、すでに周りの建物は戦闘機の空対地ミサイルにより空爆され、破壊されている。

 そんな中、信吾はその上着の内ポケットに手を入れた。

「氣導銃『日下零零参號』―――」

 信吾は氣導銃を右手に持ち、ぐっ、っとその銃把(グリップ)を握りこむ―――。ざりっ、っ信吾は両脚を肩幅に開く。そして銃把を握りこむ右手に左手も添える。

 その瞬間だった、ぱぁっ、っと氣導銃の銃身が明るく白く輝き出す。

 ぐぐっ、っと信吾は上体を、背中を反らし、眼を(すが)めた。彼信吾が視界に納めているものは遥か空を、円を描いて旋回する四機の三角翼の戦闘機だ。

 彼が銃口を遥か空に向けて構える氣導銃『日下零零参號』には回転するような弾倉も見えず、見当たらず、銃把に直接装填するような弾倉でもない。

 信吾が握る氣導銃『日下零零参號』の銃把の底はつるっとしていて弾倉が収まるような構造もなく、切れ目とかのような取っ掛かりも、なにもないものだ。

「俺のとびっきりをくれてやる・・・っつ」

 キュイイイィ―――、なにかが集束するような電子音のような音。信吾自身のアニムスを喰らって、その信吾のアニムスが氣導銃『日下零零参號』に吸収・集束されていくその反応だ。

「―――っつ」

 信吾の顔が苦悶に歪む。氣導銃『日下零零参號』の銃把、銃身、銃口まで縦横無尽、縦横に走る回路の道筋に光が走り、そのじぐざくの道筋が銃身に浮かび上がる。

 信吾の持つ氣導銃『日下零零参號』の銃口が真っ白に光り輝いた瞬間に―――

「いっけぇええええええ―――ッ!!」

 キュンっ―――通常の銃の発砲音ではない。その銃口から放たれたアニムスの弾丸、、、という物差しでは語れないほどのまるで砲丸のような大きさの氣弾が遥か上空へと発射された。

 信吾の放った特大のアニムスの弾丸を検知した四機の戦闘機は回避行動を採ることはしなかった。なぜなら信吾が放った氣弾は日下部の街上空を旋回する四機の戦闘機のちょうど真ん中、空白地帯を上へと向かったからだ。

 だが、氣弾は四機の戦闘機の上空で、四つに別れる。それぞれ四つに別れた氣弾はちょうど戦闘機の頭上から正確に敵機に命中―――。各操縦士達は機体の制御が効かなくなり、錐揉み状態のまま地上へと墜落ちていく・・・。

 ひゅおぉ・・・っと最後の氣の残滓が氣導銃より、まるで消えかけのガスバーナーの淡い炎のように輝いて、やがて掻き消えた。

 がくっ、っと信吾は思わず膝をつく。

「くっ・・・!!」

「信吾くん・・・っ」

 傍で見守っていた愛莉が駆け寄り、信吾を抱き起こす。

「ふふっ、戦闘機を墜落としたのは久しぶりだから、ちょっと疲れただけだよ。ありがとう、愛莉」

 彼信吾は清々しい笑みを浮かべる。だが愛莉はそうではなかったようだ。もうっ、っと不満げな顔で、

「もうっ強がって・・・っ」

 そんな信吾は愛莉の支えで立ち上がり、自分達が乗って来た黒いバイクの元へと向かう。

「行こう、愛莉。操縦士への尋問の時間だ」

「・・・えぇ」

 信吾と愛莉の目には、退避パラシュートでゆるゆると地上に降りていく戦闘機の四人の操縦士が見えていたからだ。


//////


 一方その頃―――。


「索敵状況―――、なし。周囲に敵軍の存在なし。これより我ら第六特殊部は落下傘による降下を変更し、このまま機体を降下させる。繰り返す。これより我ら第六特殊部は―――」

 二つ羽根の輸送機の機内にて、アナウンスが特殊部の部員達に流される。その第六特殊部の社員はみんな迷彩柄のヘルメットを被り、それと同じ色合いの服を着込み、その肩には機銃を掛けている。そして彼らの右腰には拳銃が、そして左腰にはナイフを差している。

 バタバタバタバタ・・・、、、ゆっくりとした動きで上空から舞い降りる輸送機は、日下部市の広いグラウンドのような広場に降り立った。ザザピーピーっ、っと社員達のヘルメットに装着されたツインカムから雑音が鳴る。雑音が声になり、、、

『こちら第六感社特殊作戦司令部。皆の武運を祈る―――』

 その通信の後、機体の胴体に備え付けられた扉が勢いよく横滑りして開く。

 ざっざざざざ―――。迷彩服に身を包む十数人が、その機銃を構え、勢いよく飛び出してくる。各個人が備えている索敵レーダーと己が視覚聴覚を最大限に研ぎ澄まし、彼ら第六特殊部の面々は緊張しながら、その『敵地』日下部市の大地に降り立ったのだ。

 ヒュルルルル―――っ、っとそのとき―――尾に炎を噴き出し、一発のロケット弾がまるで不意打ちのように発射され、飛んできた。

 輸送機の搭乗員、操縦士達は驚き慌て、輸送機の装甲を当てにしてそこに集うものの、その狙いは第六特殊部の面々ではない。

 そもそもがこのロケット弾の機影も、それを発射した人物の影も彼らが持つ索敵レーダーに映っていなかったのだ。だからこそそれだけ第六感社の兵士は、皆が皆慌てているのだ。

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