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イニーフィネファンタジア-剱聖記-  作者: 高口 爛燦
第十一ノ巻
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第百二十一話 剱士一閃、墜つ黒鉄の鳥

 ざりっ、っと悠は一歩進み出る。悠は左手で半ば顔を覆う。すぅっ、っと悠は右手をガンシップの操縦士に向ける。手の平を自身に向け、くいくいっ、っと手の人差し指をガンシップの操縦士にやって見せる。

「やってみろ、ガンシップ。お前程度の攻撃力で俺の『絶対防御』が崩れると思ってんのか・・・?」

 悠のその言葉がガンシップの操縦士に届いているとは思えない。だが、ふたたびガンシップは鎌首を持ち上げるかのように、機体を傾け―――ダダダダダダダダダダダダッ―――、ガンシップの六連の筒が回転する。


第百二十一話 剱士一閃、墜つ黒鉄の鳥


 ダダダダダダッ、、、ギンギンギンギンギンギン―――ッ、火花を散らし、、、回転する六連の重機関銃から放たれた実弾が、悠が造り出した青く透ける『絶対防御』の楯に全弾命中―――、だが。

「だろ―――?俺の『絶対防御』はそんな豆鉄砲じゃ崩れねぇ」

 にやりっ、悠がガンシップの操縦士に向けて口角を吊り上げる。

「さぁ、今度は俺の番だ・・・!!」

 自信満々に、すぅ、っと悠がその腰に差している『剣』の柄にその手を掛けたときだ。

 すっく。愿造がゆらぁりとその場に立ち上がる。愿造はそんな悠に近づく。

「すまぬ、悠。彼女を頼む。気を失っておるだけだ、急ぎ手当を頼む」

「お、おいっおっさん・・・!!」

 ぐいっ、っと愿造は半ばを強引にその少女に悠に引き渡すと、くるりっ、っとその黒塗りのガンシップに向き直る。

 すぅっ、っと愿造は開いた右手を掲げ―――、そこは何もないただの空中だ。ただ、熱気で焼けるような気温ではあるが。

「相解った、女神よ―――」

 ぽつり。愿造が呟く。すると、さぁっ―――っとどこからともなく白く光る靄が愿造の掲げた右手、右腕を包み込んだのだ。

 ぎゅっ。その白き靄の中で愿造は柄を確かに握りこむ。

「儂の忘れ物―――しかと受け取り申した」

 すぅ―――、引くように、愿造がその右手を手元に戻せば、その右手に握られているのは、鞘に納まっている一振りの刀だ。

「この一振りまさしく小剱の『一颯』なり―――」

 愿造は板についた流れるような所作で、名刀『一颯』を自身の道着の腰に差す。すぅ―――っ、、、『一颯』の柄を右手で握り締めたまま、左手は鞘。次いで腰を落とし、右脚は半歩前に、最後にまるで『一颯』を自身の半身で隠すようにして、愿造は自らの流派の構えを取る。

「小剱流抜刀式、、、刃一閃―――」

 疾―――。シャン―――ッ!!

「う、うそだろ―――、、、俺の『絶対防御』の楯ごと、、、き、切り裂いたなんて・・・」

 わなわな―――、悠の言葉が揺れる。

 ぎぃ―――、愿造が放った剱氣を纏う刃の一刀は、、、。―――ぐらぁっ、っとまるでスローモーションを見ているかのように一機のガンシップがそれぞれ左右に別れて傾く―――、切断部からは火花を散らしながらガンシップは左右に別れ、、、そこからは速かった。

 愿造の刃一閃により両断されたガンシップは、全て役に立たない物に成り果て、回転する羽根を撒き散らしながら、そしてどぉんっ、っと地に墜ち、激しく炎上―――ガンシップの操縦士が逃げ出したのか、それとも、、、彼がどうなったかは、愿造にも悠にも分からなかった。

「儂は黒鉄(くろがね)の鳥を()としてくるでな」

 ひゅんっ、っと―――、

「お、おいっおっさん―――・・・じゃなくて愿造さん、、、どこに―――、もういなくなってやがる・・・」

 ―――悠には愿造の姿が一瞬ぶれて見え、そして愿造の姿はその場から消えた。ただ、その足音だけは悠には聞こえてはいたが、、、それもやがて小さくなり消えていった・・・。

 タタタタタタタタ―――っ、

「―――、―――、―――」

 駆ける、駆ける、駆ける―――愿造は激しく燃える街中を無心で駆け抜ける。

「っつ」

 バッ、っと愿造はなにかに気づいたように上空を見上げた。バタバタバタバタっ、飛び舞うガンシップの一機。その操縦士はどうやら動く人を、上空から執拗(しつよう)に探しているようだった。

 ダンッ、タッ、タッ―――愿造は一足飛びで、近くの壊れた車のボンネットに跳び乗ると、あれよあれよと家屋の壁の取っ掛かりを蹴り、屋根の上に―――、

「ばたばたと五月蠅(うるさ)くてかなわんのう、、、疾―――っ」

 愿造は鞘より『一颯』を上空目がけて斬り上げる。しゃん―――ッ。愿造の氣を纏う剱氣の斬撃は正確に、ガンシップの底部から、そのテイルローターが回る尾から頭のフロントガラスまで一直線に一刀両断。―――屋根の上から上空を舞うガンシップを、まるで払うように斜めに直線に斬る。

 ギィ―――

「―――ふむ」

 愿造にテイルローターから操縦席そして、フロントガラスに掛けて一直線に一刀両断、真っ二つにされたガンシップの操縦士は機体の制御を失って、錐揉(きりも)み状態となって二つにばらけた機体双方が―――どぉんっ、どぉんっ、っと轟音を立てて、盛大に墜落―――爆発、炎上した。

「ほう?二羽。・・・そちらから儂の元へと来てくれるとはのう・・・」

 その様子を見届けた愿造は屋根伝いに。愿造が次なるガンシップを求めようとしていたとき―――、バタバタバタバタッ―――・・・、まるで黒鉄の鳥が二羽舞い降りるかのように、メインローターの暴風巻き起こしながら舞い降りる。

 愿造の頭上、空高くから、友軍機二機の反応消滅の報せを受けた戦闘ヘリコプターのガンシップが二機飛来する。

 ゆらぁ・・・二機のガンシップはその黒塗りの機体を燻らすのように移動し、愿造の左右に回り込む―――、二機のガンシップは機体を傾け、その前底部に装備された六連の重機関銃が震え、回転しながら火を噴く―――・・・。―――ダダダダダダダダダダダダッ―――。双方終わりのない銃撃が愿造を果てしなく襲う。

 ガンシップ二機の操縦士からすれば、目の前に立つ刀を持つ男を確実に蜂の巣にしたはずだ。現にこの二機の操縦士二人はそう思ったに違いない。互いの熱感知センサー及び、可視カメラには愿造が未だにアップされておる。

 ダダダダダダ―――、重機関銃の充填された全ての弾丸を撃ち終えてその弾幕が晴れていく。きっと自分達はこの剣士とおぼしき者を粉微塵にしたはずだ。

 ―――、、、そこに立っているは人影だった。その人影とは愿造である。

「「―――っ!!」」

 二人の操縦士の声は機体の中にいるせいで愿造の耳には聞こえないはずだ。二人の操縦士は心底驚いていた。

 ふぅっ、っとその愿造の影は揺らいでまるで風に吹かれた霞か煙のように消えた。

「儂の残像よ―――」

 一足飛びに愿造は、、、愿造とガンシップが交錯する。

 ガクンッ―――!!

「ッ」

 操縦士の心底驚いたような、絶望した顔。そのままガンシップが沈むように墜ちてゆく―――。愿造が擦れ違いざまにガンシップのメインローターを軸から切ったのだ。墜ちゆくガンシップとは反対でメインローターは、まるで竹蜻蛉(たけとんぼ)の羽根のように上空に跳ね上がり、やがて回転は落ちて地面に勢いよく突き刺さる。

 どぉんっ―――、そしてその同じくしてそのガンシップも地面に墜落、衝突―――このガンシップは重機関銃ごと大破した。

 時を遡ること刹那―――、愿造は自分がメインローターを切り落としたガンシップが地面に衝突する前に、ひょいっ、っとその機体の上部に跳び乗り―――ダンッ、っとそこを蹴って加速する―――。もちろん向かうはもう一つ右から飛来したもう一機のガンシップだ。

 う、うわぁああああっ、っとでも操縦席で恐怖の叫び声を上げているかどうかは分からない。もう一人のガンシップの操縦士は悲壮な顔で大きく口を開け、―――それでもなおその重機関銃の引き金を引こうとしていたのかもしれない。だが、愿造の動きのほうがずっと早かった。

「―――斬」

 愿造はもう一機のガンシップと擦れ違いざまに、そのもう一機のガンシップのテイルローターから尾部を切り落とした。愿造の剱氣を纏った『一颯』はいとも簡単に、まるで豆腐を切る包丁のように鋼鉄製のガンシップの機体を切り裂いたのだった―――。


//////


 肩を上下させ息を切らせながら、悠は傷ついた年端もいかない少女を医務班に託す。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ―――」

 その頃―――悠は、悠も愿造の戦いを見ていたかったが、彼は傷ついた少女を抱え、この場を離脱―――大急ぎで司令塔に向かった。、、、『僕も出よう』と言った塚本はもうこの司令塔にはすでにいないかもしれない、と思ってはいたもののそれが的中した。

 この場にはもう―――。

「塚本さん・・・っ、信吾さん・・・っ、愛莉さん―――、いや、きっとあの人達は日之国三強『四天王』の一角だ、、、きっと大丈夫・・・っ!!」

 悠が少女を抱えてこの司令部に駆け付けたとき、彼悠が呟いた三名の姿はなく、だが、ミサイルの直撃を受けたはずの司令塔は壁こそ焼けているものの、傷一つついていなかった。悠はそれに安堵しつつ、火傷を負った少女が手当されているのを見遣る。

 少女のお腹が上下している。

「―――」

 その少女の様子を確認し、安心したところで―――

「塚本さん・・・、信吾さん、愛莉さん―――愿造のおっさん・・・っつ」

 悠はそれっきり口を真一文字に食い縛り、、、この司令塔の天井を見上げるのだった―――。


//////


 つらつらつら・・・、祖父が失踪したときの話だ。その回顧を祖父より聞き、俺が焦心に駆られたのは言うまでもない。俺が『本気』になって、今すぐにでも剱士を目指そうと一大決心した大きな出来事の一つでもある―――。だが祖父との夜話はまだ続く。今までの御静聴誠に痛み入る。だが、祖父の夜話はまだ続くのだ。『第十二ノ巻』も祖父が俺に語ってくれた夜話の続きを記していこうと思う―――・・・。


『イニーフィネファンタジア「-剱聖記-第十一ノ巻」』―――完。

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