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ココロの隙間、お埋めします~あなたの思い人は意外とすぐ側に!?~

作者: 原書

作品を書いた後の煙草が美味しい事に最近気づきました。心なしか煙も機嫌が良さそうですよ。ただまあ、吸い過ぎは良くないんで、、、

そういえば、原書って作家はここしばらく禁煙してるそうですね。

「ガッハッハッハ、ヤバいだらぁ」


 中村ユーヤ(20)は高笑いしながら言い放った。その生来のテンパは圧巻の物であり、どこか貫禄すら感じられる。そんなこの男見ての通り友達がいない。彼は徐にポケットに手を突っ込み、たばこをひと箱取り出した。中村ユーヤ(20)は彼の唯一の友人(池沼)にLINEを送信した。


『池沼さん池沼さん! 吉野かずきマジでヤバいっすよ』


 先ほど唯一の友人と言ったが、実際の所友人などではなく、唯の知り合いである。そのためこのようなLINEを送る事など出来ず、一人で二つのスマホを操作しているのだ。彼はいつだってそうだった。あの大学の講義中も、家族の食卓でさえ彼は一人だった。だが、彼は今まさに友達になりたい人物がいる。そんな彼の名こそ吉野かずきだ。


『吉野っていう苗字なのに、すき屋で牛丼頼んどっただにん。マジでやばいだらぁ』


 その日の晩、吉野家で牛丼を食べなかった罪で吉野かずきは死刑に処された。彼は行ってしまったのだ。あの吉野家のライバル店すきやに。吉野の名を持つものとしてしてはならない禁忌を犯してしまったのだ。

 吉野が死刑になった一報を知った中村は驚愕し、言い放った。


「吉野! 俺はお前がいないと勝てねぇ。俺はお前の事を地獄の果てまで追いかけてでも探し出してみせるぜ」


 中村は自らの胸にナイフを突き立てた。彼の胸から滔々と赤い血液が零れだす。そして、彼の意識は闇へと落ちて行った。




チカラガ……ホシイカ?


ナニヲ……ノゾムカ?


力は……いらない! かずきが欲しい!


ワカッタ。オマエジシンノカズキヘノカクゴをミセテモラオウ……




 そして、意識が遠のき、目が覚めたらそこは地獄だった。


「なんだ……ここは?」


 中村ユーヤ(20)が辺りを見回すと、半透明の体を持った恐らく亡霊と思わしき人間たちが、重石を持たされ浅黒い地面を闊歩していた。


〔亡霊A、B、Cが現れた!〕


〔亡霊Aの攻撃!〕


〔中村ユーヤは死んでしまった!!〕


 再び目を覚ますと死んだはずのかずきが目の前にいた。


「君の覚悟はそんなものだったんだね。失望したよ。今日から君は一人ぼっちだ」


 そんな彼に中村ユーヤは言い放つ。


「俺とお前は友達だろうが!」


 すると、彼はポケットからスマートフォンを取り出し、ツイッターの画面を見せた。


「お前と俺はFFだろうが! これが何よりの証拠だ!」


 吉野かずきはユーヤの手から素早くスマートフォンを奪い取り、音速で自身のツイッターアカウントのフォローを外させた。


「お前が見ていたFFはどうやら残像だったようだな」


 ユーヤは絶望した。かずきと再びFFになるには、この膨大なアカウントの海よりかずきのアカウントを探し出さなければならないからだ。


「かずき……これがお前が俺に与える試練なんだな」


 ユーヤの闘志の籠った目を見て、かずきは自身のアカウントを削除した。


 ユーヤは気づいた。俺が見ていたものは全て幻想だったのだと。俺の目の前にいるコイツを殺さなければ俺に友達はできない。


「この幻想を——ぶち殺す!!」


 かずきを殺そうと飛び掛かろとしたが、ふと手を止めて表情を変え、こう言い放った。


「どんなに俺を拒絶しても、辛いのはオメェだろ。本心を……言えよ!」


 そんなユーヤを見て、かずきは額に手を当て、堪えきれないといった様子で哄笑した。


「人を殺そうとしておいて一体何を言い出すんだ。ヤバいだらぁなのはお前だろ?」


 その時、ユーヤに閃光走る。自分でスマホを二台操作していたがゆえに誰にも届くはずのなかったLINE。


「やっぱりお前、あの時から俺の後ろに……」


 それを聞くとかずきは赤面して、俯いた。


「かずき! お前、俺のことすきだらぁ!」


「当たり前だぁ!」


 かずきは言った。


「……言えたじゃねぇか」


 ユーヤはボソッと呟いた。


 大学の講義中も、家族との食卓でさえも一人ぼっちだった中村ユーヤ(20)は、思わず目を潤ませる。この年になってようやく出来た友人——いや、恋人。

 これで俺もようやくLINEを誰かとする事が出来る。友達登録童貞卒業の兆しが見えて来た。そんな淡い想いが胸中を渦巻く。


「「俺はお前で、お前は俺だ。俺たちは互いに相反する事はない。俺たちはいつ、いかなる時でさえ、共にある。たとえ、水と油であろうとも、混ざり合うサダメの中にある」」


 その日から俺たちは全ての事を共にした。朝起きてから、夜寝るときまで、トイレの中でさえも俺たちはいつも一緒だった。

 しかし、安寧の日は突然崩れ去った。





 その後、ユーヤはとあるコンビニに立っていた。飲み物を買い、きのこの山のパッケージに手を伸ばす。しかし、体が動かない。その時、頭の中で声が響いた、



 ユーヤさん。ユーヤさん。きのこの山ですか? それヤバいだらぁ!



やっぱ釣りの後の煙草も美味しい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ネタバレ注意 本編で「ヤバイだらぁ」というセリフが登場するが、このセリフに込められた深い意味を理解すると思わず涙が出てこぼれた。伏線回収が見事な作品。 [気になる点] 序盤で登場した池沼…
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