10-12話 初恋
「あ!瑞子!」
と友人は声をかけた。確かに先日の女が立っていた。瑞子は俺の顔を見るなりハッとした顔をして気まずそうにしていた。
「まだいたんだ、修子」
と俺の存在を無視するかのように二人で話し始めた。それでもやがて瑞子は俺の方を向き「ねえ、古川君の入院先教えて。知っているんでしょ?」と言ってきた。「いや、それは…」と口ごもる俺に「ならいい、自分で探す」と言って去っていった。「へ?」友人も瑞子の行動に戸惑いが隠せないらしかった。
「どうしたんだろう」
「あの女の様子を見張っててくれないか?」と修子に言った。
あれから瑞子という女を追いかけようと走ったが、探すことが出来なかった。夕暮れ時、眠っている蓮を見ながらあの女のことを考えていた。
携帯の着信音が鳴り、電話に出ようと病室の外に出た。
入れ違いで誰か人が入ってきた。看護師だろうと気にせず電話に出た。
無言電話ですぐに電話が切れ嫌な予感が頭をよぎった。
(蓮!)
あの日、あの高校時代もそうだった。誰からか知らないやつから電話が来てそれも無言電話がった。急いで病室に向かった。白い服の女が蓮のベットの横で立っていた。
(なんだ…)
と安堵のため息が出たが、様子がおかしいことに気づいた。その女はタオルを細くねじっていた。(まさか)蓮の首に巻きつけ殺そうとしているのが目に見えた。慌てて女の行動をやめさせようと後ろからその行動を阻止した。
「なにすんのよ」と抑えられた女が叫んだ。そいつを見ればやはり瑞子だった。
「やはりお前か、何か関わっていたんだろ」
「知らない、私はただ頼まれたのよ」
「誰に!」「……憎かっただけよ。振られたのが」「…それだけじゃねえだろ」「……」「誰に頼まれた!」「黒沢よ、…もういいでしょ。離して!」「…うそ…」と別の女の声が聞こえた。見れば病室の入口に修子が花を持って立っていた。「…修子…」修子は黙って蓮のベットに向かった。緩く巻きつけたれたタオルを見ている。「違うの…修子…」と必死に瑞子は訴えていた。修子はゆっくりと向いた。
「ねぇ、どういうこと?なんでこんなことをしたの?」それを聞いて瑞子は泣き出した。
蓮のベットの前に俺の隣で修子が「ごめんなさい」と言って泣いた。
「私何も気づかなかった。竹林くんが言ってくれなかったらここに来ることもなかったと思う。…瑞子と位置情報を共有していてね、病院にいるんだって分かったから花を買って向かったの」
「……」
「何か揉めているのが聞こえてそれがまた瑞子の声だってわかったから走っていったのよ…」
「……」
「ほんとうにごめんなさい」
「君のせいじゃない」
「…ただね、ひとつ私も気になったの。それで私も確信ついた」
「なにに?」
「やっぱり竹林くんの言うとおりだった」
と俺にスマホの画面を見せた。
「これ、瑞子が間違えて私に送ったものなの。タイムリーで見たから不思議に思ってスクショして保存をしておいたの。…竹林くんが言っていたように瑞子は関わっていたのね」
それを見れば【飲ませることに成功したよ】【(/・ω・)/】と書かれていた。
「何を飲ませたんだ?」
「多分、睡眠薬。…瑞子前から眠れないって持っていたことがあったから」
「…」
「だって、今この状況でも寝てるじゃない。古川くんは」
「……」
修子は涙を流した。
「んん…」
とようやく蓮は目を覚ました。うつろな目で俺を見ている。
(かわいい奴だな)と心の中でそう呟いた。