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転任の午睡 (1)  作者: 終身名誉東方愚民
1/1

the last conclusion

東方の二次創作小説 これが 初投稿です

色々至らない部分もあると思いますが

批評 感想等 頂けたら大変励みになります

   『アタリか?』足の裏の僅かな感触を踏みしめながら辺り一面の茅色の紙吹雪みたいな落ち葉を払い除ける。すぐよく目立つ緑色が顔をだした。

タケノコっていうのは、魚の背骨に小骨がずらっと並んだように地下茎に沿って生えている。


…そうは言っても見つけるのはなかなかコツがいるのだが、場所さえわかればあとは地下茎から切り離し、反対側から掘り起こすだけだ。

何回繰り返したかも分からない作業だが、待っているヤツがいるとあれば気持ちも上向く。

久しぶりに笑みを浮かべている自分を見つけ、我ながら恥ずかしくなるがまぁ悪い気もしない。


 

いつも薄暗いこの『迷いの竹林』の中でも分かる程度には日が傾きだした。「…そろそろ戻るかねぇ」


私の足元にはとれたてのタケノコが既に4本、タケノコ探しの片手間見つけたアミガサタケが5本置いてある。二人で食べる分には十分だろう。


この「迷いの竹林」は中々に厄介なもので、竹の成長が早く(ほかの竹林にそれほど長くいた経験がない というか覚えてない為あまり自信ない)

常に霧が立ち込めていて、目印となるものが自然には全くないので慣れていても移動には苦労する。



竹林を抜け出し、殺風景で地味な風景に馴れた目に綺羅びやかな後ろ姿に声をかける。「待たせたか?」「こんなの、待ったうちに入らないわよ?貴方ならそれくらい分かるでしょうに」 


少しおどけて振り向いた彼女は比那名居天子。こいつが地上に降りてきたときにはいい思い出がない。

かくいう私もこいつと貧乏神が急な思い付きの宴会を開いたときに毒見をさせられたことがある。なぜこの高慢天人は地上に降りここに至るのか。

その説明は少し時間を遡る。



……………

元々タケノコは一人で食べるつもりだった。前まではそこまで飲み食いするものに拘泥しなかったのだが、数少ない親友の説教にはかなわない。


先程のように丁寧には掘り出さず、湿った深々とした土の中から一気に引き抜いた。

時間をかけわざと竹林の中をのらりくらりと散歩しながら朽ちきった葉を踏みしめ出てきたわけだが、全く同じようにこいつが目に飛び込んできた。


「あら人間」

「あら天人」

何処となくとぼけた態度を返事であしらう。

「ふーーん…… よく見たらいつかの不老不死さんね」

先程より一層興味深そうにこちらを見る。


「よく覚えてたなー 死なないのがそんなに珍しいかい? お前さんの住んでるとこじゃ少なくもないだろうに」

「違うわよ、手に持ってるそれ、何かしらねぇ 妖怪でも懲らしめたのかしら?」

興味を引かれたのはタケノコだったらしい。


「角じゃない。この一面に生えてる植物の、赤ん坊みたいなものだ。飯と煮ると旨い」

「地上の民の食事事情はやっぱり貧相ねぇ…」

そう言いつつも距離をつめ、肌触りを確認している。

「…よければご馳走しようか?天人様」


そう言えばいつのことだったかこんな辺境では、暇つぶしもなくて仕方ないでしょう… といかにも暇そうで慇懃無礼な烏天狗の記者が文々春新報とかいう銘の雑誌を差し入れに来たことがある。(実際暇だったからそうは言っても重宝した)


その中にこの天人が寄稿した記事があり、

天界の食事事情というのも大層なもので、桃以外のものが碌になく、

『人間の里』で食べた料理の味があまりにも衝撃で忘れられないという(どうでもいい)ことだった。

(私としてはアガサクリスQの連載小説の続編が気になり、すっかり失念していた)


「それは殊勝なこころがけね。地上の人間が足りないアタマ振り絞って考えた食べ物、どれ程貧相か試してみようじゃない」    


…いちいち相手の神経を逆撫でないと話せない性分なのだろうか。

「気が乗ったようでよかった。…量をとるのに時間がかかるがいいかい?」



……………

表情が幾分かの不快さをたたえるものに変わった。

「…なによその干からびたブドウみたいなの そんなの欲しいと言った記憶ないのだけど?」


「せっかくだから種類が多い方が良いと思って。吸い物にするといい味がでる茸だ。」


「枯れ木も山の賑わいねぇ」

「別に枯れてるわけじゃないんだけど…

まぁそこは食べてからのお楽しみだな。」



……………

『迷いの竹林』を離れ『人間の里』が見えてくる。


「前来た時とずいぶん変わるもわね。」

食材を両手に、気怠そうに天子が呟く。


「……そうかい?…天界は物事の流れがゆったりとしてるんだろうねぇ」

口は預けつつ、目は前を見据える。ここからでもよくわかる、小さいけれど綺麗に整えられた、数少ない私の親友、その持ち家。


「…あれがあんたの家?地上の家ってちっさいわねぇ」「なんていうか…知り合いのだよ。留守の時は自由に入れって言われてる」


いいのかしら…?とか言いつつも手は既に玄関にかけている。「邪魔するわね〜〜〜」「入るぜ」


部屋は綺麗に整っている。いつものことながら勝手に使わせてもらおう。

「別に手伝わなくていいけど、ぶらぶらしてきたらどうだ?」

…まぁ態度はおいといて一応客だし。


「こんな貧相なとこのどこ寄ればいいっての

よ。時間につぶされるのは慣れてるわ。」

言うなり床に寝転がるかと思えば、言われたわけでもないのに外に出ていきタケノコの皮を処理し始めた。


…と思ったらすぐ戻ってきた。 「…一応確認するけど除いていいのよねこれ。どこまでむくの?」

「皮取んのは半時ほどゆでた後だ。場所がわかればでいいから、茹でるのに使う米ぬかと唐辛子持ってきといてくれ。」


「うげーーー…」

「散歩でもしとけって言ったじゃないか」


「だってさぁ…」

何かぶつぶつ言いつつも慣れない手つきで協力してくれている。意外だと思った。


ひょっとしたら、こいつも何か今までに思うところがあったりして昔よりも丸くなったのかもしれない。


更にひょっとすると、私の評価が間違いで口は悪いが昔から根は良い奴だったのかもしれない…とも密かに思い始めた


結局茹でたタケノコが冷めて千切りになっておいしく炊き込みご飯になるのと、火を通す間にアミガサタケの吸い物を仕上げるまでに日はすっかり暮れ夜の帳が降りた。


その間作業が要らないときは相変わらず天界やこいつ自身についての自慢話に相槌を打ったり、将棋を指したりした。…連敗した。

(あくまで機嫌とりの為であって、思いのほか強かったとかいう訳ではない。)

「……夜雀のうなぎ屋に指させた方が断然強かったわねぇ」

何の悪気もなさそうに言っているがさっきの発言は取り消そう。

こいつ全然変わってない。





「……あんまり悪くはないわね…」

「おかわりできたぞ!」「…頂くわ。」

出で立ちと振る舞いからいかにも名家のお嬢さん、といった感じだが案外よく食べる。

相変わらず考えていることがよくわからなかったが、少なくとも悪い気持ちはしていない様子だった。

既に2度空になった吸い物の茶碗をどけ、今度はご飯茶碗を受け取った。

「流石に調味料まではあんまし用意できなかったけどな、 料理の腕もあんま自信ない、それでも気に入ってくれたら嬉しいな」 


にくい奴だが、喜ぶときは、その容姿によく似合った子供みたいなに無邪気な笑顔を見せるものだなと少し感心した。


「天界の食事も、悪いわけではないけれども、いささか種類が足りないよのねぇ」帽子のかざりを触りながら物憂げな様子で返してきた。


「自分で作って天界の人たちにも広めてみればどうだ?

材料ならいくらでも用意できるが?」

「誰でもアンタみたいに作れるわけでもないっての」

そう言いつつ茶碗に箸を叩きつけるように置く。

「ごちそうさま。」

これまでの言動からすると褒め言葉みたいなものだ。そう思いながら勝手に満足することにした。




「…こっちにはなんで降りてきたんだ、お前の言う通り天界に比べたらそれこそさ、何もないだろうに」


「あーー……   」言いにくいことでもあるのかすっかり食後のくつろぎを決め込んだ帽子を外した頭をぼりぼりしながら、ちょっと目をそむけ、少し渋った様子で天子は口を開いた。

「景色…というか…そうそう、ある場所を探してるのよ 場所よね」


言いつつも少し上の空といった感じで

髪を整えている。「アテはあるのかい?」「そうね…有ると言ったら嘘になるわね」


「時間がかかるようならここで寝泊まりしてもいいんだぜ?ここの家主は見かけによらず心が広いから、きっと許してくれるさ」

そう言いつつ妹紅は竹製の日よけを少し上にずらした。


「ーーーーーーー・・・・」

何か言おうとはしたが、天子は、言葉を呑み込むよりほかになかった。








既に博麗大結界がその効力を失ってーーー

ーーー幻想郷が滅んで もう 久しかった。







壁際にかかっている色褪せた写真に映る天子の知らない女性と妹紅の笑顔がかつてみたことないほど眩しかったから。


『人間の里』もすっかり荒廃しきり建っている建物なんてほとんど見当たらない中、この家だけが手入れが施されおそらくは家主と妹紅が交流があったころの姿そのままで残っていたから。



気遣いの言葉をかけつつも、妹紅は決してこちらに顔を向けず、ひたすら窓の外を見続けていたから。


言葉は、呑み込んだ。

恐らくはこの誘いも断るべきなのだろう、

私は、時間の中に置き去りにされた二人きりの思い出の空間に何も知らずに混ざってしまったのだから。


…恐らくは妹紅の顔を壁際の美しい写真の中とはかけ離れたものにしてしまったから。

しかし、ここで彼女を置いて出て行ったらどうなるのだろうか、

おそらく彼女は文字通り永遠にほかならぬ妹紅自身が作りだした幻影と、亡霊に囚われ続けることとなるだろう。


しかし加えてそれは今の彼女にとって不可欠なものであるとどうしても否定できない。今無理矢理私が目を背けさせたら、どうなってしまうだろう。


彼女に比べれば些細なものではあるけれど、自分も永く生きる者として生と死のうつろいは常に心の中にあって離れない事柄だったし、今も悩みのタネであったし、胸を痛めることも、数えるくらいには憶えがあった。

ならば自分がすべきことは。


「ーーーー・・・それはお断りするわ。」

先ほどのような居丈高な態度を保つのが、少し難しい。

「でも、確かに時間はかかるわね。誰か地上の奴でうーーんと経験豊富で、役に立つ奴がお供に欲しいとこねぇ。」



妹紅は顔を背けたままで。

「……私は経験こそ豊富だが、あまり竹林を離れたことがない」

「それで十分よ」

がらっと玄関の扉を、全開にする。

「行くアテない旅も、それはそれで乙ってものでしょう」

二、三歩踏み出した。

あとは彼女の行動に、委ねることにした。


家から十間ほど離れたところでがしゃりと扉が閉じる音がした。妹紅だ。荷物をいくつか抱えている。役に立ってくれる対価ではないが、彼女にとってもここを暫く離れる時間が必要だろう。


「どうなるかことかと思ったけれど、」

水たまりをそっと避ける。既に日が昇り、

反射がかかった水面がまぶしかった。


ーーー最初に思いやったほどわびしくてつまらない旅ではないかも?


後続のために少しペースを落とす。


まだ梅雨が明けてないころで、雨が産んだ

土と芽吹きのにおいを運ぶ風が、

鼻先をくすぐった。


藤原妹紅×比那名居天子

不死だったり いいとこの娘さんだったり

いけめんさだったり 意外と共通点が多いですね


幻想郷の同じく命永い故に苦悩や生死感など独特な哲学を持つ住民達と自分なりの結論を見つけていくといった感じです


それが 良いか悪いか 誰にとってそうかは別として

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