~エピローグ~
皆さんはお姉ちゃんや妹が欲しいと思ったことがあるだろうか?包容力のあるお姉ちゃんに甘えたり、かわいい妹に甘えられたいと思ったことはあるだろうか?俺はそういった欲望が全くない。何故なら……
「コウちゃんなでなで~」 「だから学校で抱き着いたり、なでなでするのはやめろって!」俺、一ノ瀬洸一には姉がいる。成績優秀で運動が得意でスタイル抜群ででとびっきりブラコンの。つまり俺は今、姉である一ノ瀬小春に教室でいきなり抱き着かれ頭をなでなでされるという公開処刑をされている。 「もしかして照れ隠し?かわいいな~」 「照れ隠しじゃない!とにかく離れろ!」こんな風に学校で抱き着かれるのは、いったい何回目だろうか?今月だけで十回、いや十五回わされていると思う。 「なでなでさせてくれったっていいじゃない。私達、姉弟なんだし」「姉弟だからダメなんだよ!」「じゃあ恋人なら、なでなでしてもいいわよね。コヨちゃん私と付き合って下さい。」 「お断りします」「当たり前です。お兄ちゃんは小夏の彼氏なのでお姉ちゃんとは付き合えませんっ!」 おいおい小夏、いつから聞いていたんだよ。 俺と姉の会話に割って入ってきたのは妹の小夏だ。姉とは対照的に勉強も運動も苦手で小柄なロリ体系である。 「なにを言ってるの?コウちゃんの彼女は私よ」 「お兄ちゃんは小夏の彼氏なんですっ」「俺はどっちの彼氏にもなった覚えはないけどな」 こんな似ていない姉妹にも共通点がひとつだけある。
それはブラコンということだ。それも重度の。 「そもそもなんでコウちゃんはわたしを彼女にしてくれないの?こんなに綺麗で優しくてスタイル抜群の女の子なんてめったにいないわよ」 「それ自分で言っちゃいます?」 まあ事実だけども。俺は盛大にため息をつき、今月二十回はしたであろう説明をまた一から丁寧にする。 「何度も言いますけど俺は、ねえちゃんも小夏も家族としか思ってない。だから恋愛感情も一切持っていない」 「じゃあ私に恋愛感情を抱けば恋人になってくれるのね?」 「はっ?」 おいおいまたとんでもないこと言い出したぞ。 「私とお試しで一週間だけ付き合ってみない?コヨちゃんなら一週間で墜とせそうだし」 「その案、小夏も乗ります。お兄ちゃんなら一週間もあればメロメロにできますから。」 ずいぶんな言われようだな。というかその自信はどこから来るんだ。「ちなみにこの案を飲み込まなかったらこれをコピーして学校中にばらまくわよ」 そう言って姉は鞄から一冊のノートを取り出す。黒色の表紙でタイトルは漆黒の堕天使コウイチ…… 漆黒の堕天使コウイチ? 「やめてくれ!それだけは本当に勘弁してくれ!」今姉が持っているノートは俺が中二病を患っていた時に書いた物である。しかもなんで男なのに堕天使だよ俺! 「お兄ちゃんの中二病はかなり重症でしたからね。今でも思い出しただけで笑えます。「頼むから笑わないで!」 「それでお試し付き合ってくれるの?くれないの?」 「ああもうっ!分かったよ。分かりましたよ。付き合えばいいんでしょ。一週間」 俺はヤケになってそう答えた。学校中にこんなのが知れ渡るなんて拷問以外の何物でもない。下手したら不登校になる。 「あらっ。物分かりが良いわね。」 クソッ!姉のやつニヤニヤして俺の反応を楽しんでやがる。 「というわけで明日から一週間お試しで私と付き合って次の週は小夏と付き合うこと。もし約束を破ったりしたら分かっているわよね?」「はいっ。わかってます」 こうして俺は実の姉と妹と付き合うことになってしまった。