リメンバーミイ
大切なのでしょう?
ちゃんと思い出して、私のことを、あなたの愛しい恋人のことを。
忘れないで、私のことを。
彼は事故で記憶の多くを失ってしまった。
私も彼に忘れられてしまった。
私は彼の苦しむ顔も悲しむ顔ももう見たくはなかった。
彼は今、孤独の中にいる。
彼の周りにはたくさんの人がいるのに、彼はそのほとんどを思い出せないから、人の好意に対する接し方さえもわからず、人との以前の関係も思い出せない。
そんな深く暗い孤独の中に彼はいるのだ。
結論から言うと彼の恋人は彼の記憶と共に事故で消えた。
彼は辛い事故の記憶も、失った悲しみも、過ごした時間の重みさえも思い出せないのだ。
それは考えようによっては幸せなのかもしれない。
しかし、彼に空いた穴をどのようにして埋めることができようか。
彼は思い出すしかないのだ。
さぁ、思い出して、私のことを。
あなたに眠る優しい記憶を、あなたに告げる悲しい別れを。
私は記憶、あなたの記憶、あなたと彼女の短い記憶。
もう消えたりしないから、思い出して、私のことを。