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第7話「天帝と地帝」


 ついに俺は3歳になった。今日が能力の見分けを行う日だ。



 家にはいかにも魔女らしい格好をした、くすんだ色のローブをまといつばの広い先の少し折れ曲がったとんがり帽子をかぶった老婆がやってきた。老婆はエストーラと名乗り、城下町で魔法店を営んでいるらしい。能力の見分けは、皆一度はすることなのでいい商売なのかもしれない。



 老婆は、小さめのテーブルにいかにも未来の見えそうな水晶を置くと、俺に自分の向かいに座るように声をかけた。



 椅子に座ると、老婆は水晶に手を置くように促した。



 近くで見ると水晶は吸い込まれるような深い青だった。手を置いてしまったら、そのまま沈み込んでしまいそうな深い青。少し怖くなって、手を置くことをためらっていると、


「別に、捕って食うわけじゃないんだから。さっさと手を置きな。」


 年輪のように刻まれたシワを歪ませながらエストーラはニヤリと笑った。

 意を決して水晶の上に手を置くと、スゥーッと何か手から抜けていくような感じがして、エストーラが目を閉じて呪文らしきものをモゴモゴと唱え始めた。

 小さい声だったのでよくは聞こえなかったが、「天帝」とかなんとか言っていたような気がした。


 呪文が終わって、少しの静寂が訪れた。

 すると、突然目を見開いたエストーラが俺の手を取ると、「解除」とつぶやくとみるみるうちに老婆はそこから消え、妙齢の女性へと変化していた。


「あなた凄い魔力量ね。それに魔眼も持っているみたい。うちの魔術学校に来ない?いつでも歓迎するわ。」


「待て、エストーラ、お前が直々に誘うってことは魔力はすげえってことはわかった。でも俺の子なんだぜ?魔力だけじゃなくて筋力なんかはどうなんだ?」


 後ろで俺の能力の見分けを待っていた父さんが慌てて聞いてくる。

 エストーラは怪しい笑みを浮かべると答えた。


「さすが、あんたの子だよ。そこらのゴブリンに今でも勝てそうなぐらいの力は十分にあるよ。でもそれ以上に、魔力総量が多すぎるのさ。そうさね、あと5年鍛えれば魔力総量だけなら、この王宮魔術学校校長の私をこえてしまうわね。」


「それは凄いですわ。さすが私とあなたの愛の結晶ね。」


「それは確かにすげえが、魔眼の方はどうなんだ?お前なら種類まで見分けられるだろう?」


 母さんと父さんが口々に感想を述べる。父さんは俺も気になっていたことを聞いてくれた。魔眼を持っているなんて最高じゃないか。


「それがねぇ、私でもわからないレベルの高位の魔眼なんだよ。こんなのは魔王様クラスかその側近でもなきゃいないんじゃないかねぇ。とにかくしっかり鍛えりゃ馴染み子でもなんでもなれるよ。だからうちの学校に入りな。」


 エストーラはケラケラと笑いながら結果を教えてくれた。

 王宮魔術学校がどれほどなのかは知らないが、「王宮」とつくくらいなのだからその校長ともなればそれなりには凄い人なのだろう。その人を超えられる素材と言われればなかなかなはずだ。さらには魔眼についてだ。魔王クラスだなんてかなり強い能力の魔眼のはずだ。


 勇者に転生していた頃にも数度、魔眼を持ったことがあるが、その時は「鑑定の魔眼」や「加速の魔眼」など1000人に1人くらいはいるいわゆるレアじゃない魔眼だった。この世界では「鑑定の魔眼」持ちは商人になれば成功できるなんて言われるコモン魔眼なのだ。確かに物の名前や状態を簡単に知ることができるのは便利だったが、大きな商店には一人いるわりとどこにでもいる感じの存在であり、さらには「鑑別」の魔法を使えれば同じことができるというのだから、魔眼なんていうかっこよさに対して地味な物だった。


 それに対して今の俺の魔眼はこれまでがコモンなら今回はスペシャルレアといったところか。

 だが、どんな魔眼かわからないと使いこなせるようにすらなれない。どうにかして知りたいものだ。


 エストーラは王宮魔術学校の案内の羊皮紙を置くと楽しそうに帰って行った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 その日は結局、誕生日のお祝いで1日が過ぎてしまった。

 

 酒を飲んだ父さんは、俺に近接戦闘術を教えることを約束して満足したように早々とベッドへといなくなった。

 母さんはエストーラと面識があるらしく、しきりに魔術学校を勧めてくれた。


 俺としてはいつもの転生時と違い特に目標もないので強くなる必要もないのだが、できることはしておいたこと方がいいのは十分にわかっていることだ。


 魔眼についてはいまいちわかっていないがまあ時間は沢山ある。

 おいおい調べていこう。

 今日はゆっくり寝よう。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 あれ



 ここは”いつもの”空間だ。



 寝てたら死んだなんて冗談じゃない。




 でも”いつもの”と違うのは砂に吸い込まれるような感覚はない。

 とても意識がはっきりとしている。



 背後から突然声をかけられた。これもこの空間で初めての経験だ。



 「おい、小僧、我輩が誰がわかるか。」


 「お兄様、わかるわけがないでしょう。はじめまして、”今は”ルース様でしたかしら?」


 あんたたちは誰だ?確かに初めましてだが。


 そこにはまんまる太ったマッシヴなオッさんと人族の教会で見たことがあるような綺麗な女の人がいた。”今は”、というからにはこれまでのことも知っているのだろう。


 「我輩が地帝ソーレである。」

 

 「わたくしが天帝ステラです。この度は転生100回目おめでとうございます。」


 おめでとうだと?こっちはそんだけ死んでいるんだぞ。


 「すまぬ。だが、小僧の生き方は我輩たちから見ていてなかなか面白いものでな。何度も転生させてしまったわ。はっはっは。」


 このオッさんは…


 だが、先ほどからこちらが話さなくても伝わっているのだから本当に神様なのだろう。


 「今回、ルース様に直接お話をさせていただいているのは、その眼についてです。それらは、私たちからの贈り物です。」


 

 どういうことだ?魔眼は天帝や地帝から付与されるものなのか?


 「小僧、勘違いをしているようだが、小僧の持つ魔眼はそこらへんのものとは全く違うのだ。小僧の右目は我輩の魔眼、左目はステラの神眼。魔王ですらこの片方しか持てぬのだから小僧は恵まれておるぞ。」


 「ルース様、私の神眼は応援チアー鑑定ジャッジ観察オブザーブ神速アクセラレート創造クリエイトの5つ。お兄様の魔眼は吸収アブゾーブ遠隔リモート消失バニッシュ回帰リボルブ強力マイティの5つの力があります。」


 「使い方は小僧自身で見つけるのだぞ。健闘を祈る。」


 「ルース様、ご健勝をお祈りしております。それではおやすみなさい。」



 ちょっとまてっ。こいつら説明丸投げでいなくなりやがって…

 

 ああ、くそっ。流砂に飲み込まれるれるようなこの感覚。

 抗えず俺は眠りの中に落ちていった。



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