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第20話「雇用騒動」

途中カタカナ表記が読みにくいかもしれませんが申し訳ありません


俺に話しかけてきた男は名前をリータスと名乗った。



身長は180くらいだろうか

かなりガタイがよく力仕事に向いているだろう

こちらが子供な事を加味しても見上げるような大きさだ

鑑定すると

 名前:リータス:竜人族

 年齢:15歳

 レベル:27

 性別:男

 体力:2470

 筋力:2800

 魔力:28

 敏捷性:722

 精神力:21

 耐久:4730

 抗力:198

 特殊:※※の魔眼


本物の竜人族だ!

よく見ると薄汚れた奴隷服から見える手首に鱗が見える。


ん?

魔眼の名前が読めない。

天魔の時ともハティの首飾りとも違う感じの妨害を受けてる。


それにしても身体能力だけはやたら高い。

体力、筋力、耐久の値は特に高い

マッキーの言っていた『力強き者』なのかな。



このリータスがいる店はオロール商会の三軒隣のクロティルド商店という店だった。先ほどのオロール商会に比べると店内も薄汚く、陳列されている奴隷もどこか目に光がない。

その中にいるにもかかわらずリータスの表情はとても明るい。


クロティルド商店の店内には店員がおらずリータスの話を聞く事もできなかった。

店内を見て回るが店員がいないのではどうしようもなくリータスには後で来ると言い含め先にヴィスの召使を探しに行く事にした。


事件はそこで起こった。


クロティルド商店を出るとヴィスが聞いてくる。


「なんであいつはお前に声をかけてきたんだ?知り合いか?」


「いや知らないけど、神のお告げかなんかじゃないかな…」


こっちにも事情は分からないのだから仕方ない。

どうして俺を見て買ってほしいと言いだしたのだろう

不思議な力と言ってしまえばそれだけだが…


「なんだよそれ。ずるいな!わたs」


きゅーーーっ、きゅーーーっ


ヴィスの言葉に合わせて何か動物が鳴いた。

猫でも犬でもない鳴き声だ。

鳴き声の方を振り返ると店先に繋がれた狐っぽい生き物がいる。


「なんだこいつ!かわいい!」


ヴィスは自分の言葉が遮られた事も忘れ狐ーー鑑定すると妖狐だったーーを抱きしめに行った。

しかし妖狐はひらりとかわすとお座りのポーズで俺の方をじーっと見つめている。


きゅーーぅ?


首をかしげるその姿は可愛すぎる。なぜこんな可愛い生き物が奴隷商の店にいるんだ?


「おい坊主!その妖狐に気に入られたみたいだなあ。買うか?」


店の奥から出てきた下卑た笑みの張り付いた男はクロティルドと名乗った。


「その妖狐はよぅ、こないだの仕入れからうちに住み着いてるから首輪をつけて奴隷登録したのよ。ぎゃはは」


「動物に奴隷の呪印をつけるなんて酷い事するわね」


「なんだぁお嬢ちゃんは世間知らずだな。貴族様の中には魔獣に呪印をつけてペットにするのが流行っているのさぁ。ヒヒヒ」


奴隷の呪印とは二級奴隷に刻む魔法陣である程度の行動制限を課す事ができるものだ。その効果はなかなか強力で消す事はほぼできない。


リリは完全にクロティルドを警戒している。

まあ仕方ない事だし俺もあまり長くここに居たくはない

大事なリータスの商談さえなければ。


「クロティルドさん、この狐よりそちらのリータスという奴隷の方が気になるんですが」


「坊主!なかなか見る目があるな。こいつは生きのいい竜人族の20歳男の二級奴隷。戦闘にも肉の盾にも使えるぜぃ。ガタイはいいし頑丈な事が取り柄の竜人だからなぁ。700ルノーってとこだなぁ。どうだ?」


こいつの笑い方は本当にいやらしく不快感を掻き立てる。

しかし700ルノーはきついな。

非合法な手段をとれば金すら払わずに買う事もできるかどうしたものか

クロティルド(こいつ)は嫌な奴だが別にルールを破っているわけではない。


おそらく竜人族の奴隷となれば高額にもなるだろうし魔獣をペットにするのだってモラルに反してもルールに反していないってとこだろう。

うーん、クロティルドの後ろでリータスが期待にあふれた眼差しをこちらに向けているがさすがに犯罪はだめだ。


一度考えてみます、と言って店を出ようとするとクロティルドは下卑た笑いで声をかけてくる。


「この竜人は明後日には貴族様に売り込みをかけるつもりだからなぁ。買うなら今のうちだぞぅ」


本当にいやらしい奴だ

いやらしいがルールを破らないあたりはさすがに商売人といったところか


「あんな奴の店で買うことねぇ!他行くぞ!」


忠勇義烈を地で行くヴィスには耐えられないようで店から出るとすぐに声を荒げた。

気持ち的にはそうしたいのも山々だがリータスは譲れない。

まあ今回選ぶのは俺だけではないのだし他の店を見て回るか…



ヴィスの召使選びは難航した。

条件は一言「強い奴」

これはと思う奴隷を一人一人俺に鑑定させていった。


しかしリータスのステータスを教えてしまったのがいけなかったのか其れなりのステータスでは満足しなくなった。

その上俺の言う「家事ができる奴」という条件をつけてしまうとさらに候補の数は減ってしまった。


十数軒ある奴隷商を巡ったがいい候補は見つからなかった。

理想が高すぎるというのもあるが…

かなりの時間がかかってしまったので俺たちは一度オローンさんの店に戻ることにした。


「イヤーーーーーーーーッ!!!」


甲高い女性の絶叫が聞こえる。

俺は杖をヴィスは剣の柄に手をかけ声のした方へとかける。


声のした路地裏に入ると同時にヴィスを手で制す。

いくら子供では腕が立つといっても相手によっては敵いもしないかもしれない。

人助けは大事だが一番大事なのは自分だ。よく自己犠牲を顧みず人助けをする人がいるがこの世界でそんなことをする奴は馬鹿にされておしまいだ。


今にも飛び込みそうなヴィスを抑えつつ曲がり角から声のした方を覗き込むと昼間のクロティルドと猫の獣人が二人いる。

クロティルドは一人の猫人を背中からざっくり切りつけたようだ。

路地の地面には赤い血海が広がっている。


「貴様何をしているっ!」


ヴィスは怒りを隠さない


「この獣人が逃げ出そうとしたんだよぅ。なめてる態度とってる奴には躾けなきゃだろぅ。お嬢さんには関係ないから早くお家に帰りなぁ?」


ねっとりとした声でクロティルドはヴィスを黙らせる。


「二級奴隷であろうと傷つけてはいけないのは奴隷商が守るべき法だ!貴様の行いは法に反する!ルース、兵士を呼んでこい!」


罪を咎めるヴィスに対してクロティルドは悪びれる様子もなく反論する。


「その法律に守られているのは何もしていない奴隷だけだぁ。こいつらはうちから逃げようとしやがったんだから多少の武器の使用は咎められねぇんだよ。残念だったなお嬢ちゃん」


クロティルドとて馬鹿ではない。売約もされていない奴隷が定められた土地から無断で出てしまえば奴隷の尊重は当てはまらない。この場合逃走を止めるためにある程度の武器の使用も認められる。つまり怪我をさせたとしてもやむを得ず、と言われてしまえば誰も文句は言えない。


「ぐっ」


ぐうの音も出ない状況であることはヴィスもわかったようで言葉を続けることができない。


「その子を治療してもいいですかね?あなたも商品がくたばっては困るでしょう?」


「坊主は話がわかるじゃねぇか。たのむぜぇ」


回帰を使用し傷を回復させる。

傷つけられた猫人はミオル、その様子を怯えたように見ていたのがカシルという名前の姉妹のようだ。


「ありがとうテスよ。お姉ちゃん死ななかったのあなたのおかげテス」


妹のカシルの方が涙を目にためて俺に謝意を示す。


「坊主、感謝するぜぇ。こいつら二人で250ルノーでどうだぁ?買いだろぅ?」


「後でリータスを買いに伺います。契約書の方をよろしくお願いしますね」


「気前がいいなぁ坊主。わかったぜぇ、待っとくよぉ」


そう言うとクロティルドはミオルの首筋を掴みカシル持たせ睨みつけながら店内に運ばせた。

カシルは俺の方を一瞥すると悲しそうに店内に入っていった。



「なぜ、あんなことをした!あのクズに媚びを売るようなっ!」


「落ち着け。今から面白いものを見せてやる」


ヴィスの怒りは収まらないようで剣を壁に突き立て俺を逃さないようにしている。

何これ壁ドンならぬ壁グサ?

きれそうだからやめてほしいんですけど、二重の意味で。


「巫山戯るなっ!あの二人に期待させるようなことをして買えもしないやつを引き合いに出しからかうなど、裏切るとは騎士の風上にも置けん!」


壁に刺した剣を抜きそっぽを向き意味のわからないことを言い出した。


「貴様の金をよこせ。あの二人を私が雇う。貴様に召使など必要ない」


はあ、熱くなるのはいいけど周りが見えなくなるこの癖は玉に瑕だな

こちとら昼間はルールを破ってない相手に対してズルをするのは申し訳ないと思って我慢してたがそれもあの態度を見たらヤメだ。

全力でリータスを手にいれる。


「うるさい。黙れ。今から俺は非合法なことをして資金の範囲内でリータスを雇う。お前が話を聞くならあの二人を雇うのを手伝ってやる。どうするヴィス?冷静に考えろ」


これまである程度下手に出ていた俺から強気に言い返されて少しぎょっとしたがすぐに再起動した。


「本当にそんな手段があるのか?頼む、私はあの二人を助けたい」


助けるって随分強気に出たけど、俺の邪魔にさえならなければ手伝うのも悪くない。


「いまからクロティルド(ヤツ)と商談をする。ヴィスの商談も同時に進めるが非常識なことが起きるが決して声を荒げるな、無駄に突っ掛かるな。粛々と奴隷契約を結べ。終わったらすぐに店を出る。わかったか?」


ヴィスはゴクリと唾を飲み込むと首を縦に振った。



最近あまり使っていなかった遠隔リモートを使う。

初代マッキーとの実験では10秒程度しか持たなかった遠隔だったが、効果時間と命令指定の精度は対象の知能レベルに依存するようだった。

天魔戦後にリリの協力を得て実験した結果だ。

ちなみに命令に従っている間は意識がないらしいが大きな声などは聞こえると言っていた。



疑心暗鬼なヴィスを従え、クロティルド商店の中に入る。


「コンニチハ、ミオルトカシルヲヨンデマイリマス」


クロティルドは俺を見た瞬間に意識を失い命令通りに行動を始める。


「さすが英雄様です!何の術をお使いになられたんですか?」


「説明は後だリータス。さっさと面倒なことをすませるぞ。黙ってついてこい」


「コチラガケイヤクショルイデス。ゴキニュウクダサイ」


ヴィスが小さな声で話しかけてくる。


「お前のことを見つめていた妖狐も買ってやったらどうだ?今も物欲しそうにお前の方を見ているぞ」


きゅぅ?


かわいい


「あいつの契約書も頼む」


「ショウチシマシタ」


四枚の書類にサインをするとクロティルドに奴隷契約の呪法を使わせる。

俺とヴィスの書いた書類がそれぞれの呪印の中に消えていく。


「コレデケイヤクハオワリデス。オダイハソレゾレ250ルノーデス」


俺とヴィスは250ルノー入った皮袋を渡すと店を出る。

あと10分すると遠隔の効果は切れクロティルドの元には三人と一匹を500ルノーで売約するという契約書だけが残る。

契約書を見る限りでは何も違反していない。

モラルのかけらもないがルールは破っていない。



街を出て改めて確認すると妖狐の名前はユオというらしい。

馬に乗り王宮の転移陣へと急ぐ。

これで料理する必要はなくなるだろう


いや、なくなれ


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