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プロローグ「いつもの」
ここはどこだ。ゆっくりと目を開く。一面白に染まった世界は自分の体を確認することすら叶わない。
いや、俺だけは知っているこの浮遊感。まるで流砂の中に飲まれたようなこの感覚は”いつもの”だ。
また、死んでしまった。これで記念すべき100回目の転生だ。今度はどこの誰になるのだろう。初めての転生時にあった期待や不安は既に枯れてしまっている。
自ら決めることができるなら、そうだ、あの愚王の妃が毎日世話をする庭の花などはどうか、きっと彼女は俺を慈しみ水をやり、枯らすことなく天寿を全うさせてくれるだろう。だが、これまで獣人や魔物になったことはあれど植物になれたことはただの一度もない。
おそらく勇者、もしくはそのパーティへと名を連ねることになる職業へ着くのだ。大穴としては、勇者を陰ながらバックアップする商人や町人Aといったところか。
そろそろ目を開ける時がやってくることに気付いた俺は”いつもの”ようにゆっくりと目を閉じ、誕生のとき、正しくは”転生”の時をただ待つのだ。