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第29話:不良のくせになまいきだor2 注:破壊神は出ません

いましめ

 君はどこまでもさすらう気か。

 見よ、よきものは足下にある。

 ただ幸福をしっかりと摑むことを学びたまえ、

 幸福はいたるところにあるのだから。

 

             作:ゲーテ

戦力とは数である場合が非常に多い。

無敵と言われたスペイン艦隊は、英国のエリザベス艦隊に数の差で圧倒され、無敵の名を奪われた。


青海高校の戦力とはたかがしれていた。戦力は2年生の不良グループとその分隊約30名、3年の先輩ヤンキー約6名と元安曇をいじめていたイジメグループの佐々木友美とその仲間のギャル12名、1年の武藤や幾斗、友一の3名。

 

    数を合わせても約51名ほどである。対する敵高校、青海北高校は一学年に50人上、少なくとも150人以上の兵隊がいることになる…


戦闘は学園祭終了までの1週間に青海高校学区内での戦闘が行われ、防衛線が崩れ次第、敵は青海高校に雪崩れのごとく押し寄せ、青海を全滅へと追い込むだろう。平凡な高校である青海は大した兵力も集められずにいる。対する青海北は大兵力をそろえている。


 負け戦 


そんなこと、誰でもわかっていた。不良グループも、幾斗も武藤も佐々木や3年だって…


だが、抗うしかない。無罪の青海生徒や先生、校舎を巻き込むわけにはいかない。


戦うしかない。恋人や仲間を守るために。





学園祭4日前の出来事であった。すでに、青海北高と青海の中間地点にある、ゲームセンターでの戦い(人呼んで、ゲーセンの変)に大敗した不良グループは、生徒達にゲーセンに近寄らないことを伝える。もともと、あまり頻繁には出入りされていないゲーセンだったので、なんとかなった。が、もしもゲーセンから南下され、青海中央運動場ぐらいまで制圧されれば、近辺で青海に通う生徒の数人は通学が不可能になる。ゲーセン撤退以来、青海の士気はいっきに下がり、巻き返しが図れる確率は下がっていた。

 作戦指令本部(校舎3階の空き部屋)の長は戦略ゲーム好きの友一が担当している。

「ユーチ、ゲーセンがやられたけどこのままじゃ、すぐに飲まれるぞ?」

幾斗がイライラと足を揺らす

「たしかに、そうですね」

武藤も若干不機嫌である。

「で…でもねぇー戦力的に無理があるよ。戦略がどーとか言う前にね」

友一は友一で冷静に戦局を理解しているようだ。友一が何も思いつかないのも無理は無い。実際、ゲーセンの変の時にだって武藤と幾斗は参加していないものの不良グループ屈指の喧嘩名人たちが次々に倒されたとの報告が上がっており、青海は何の戦果も上げることなく撤退したそうだ。人数と実力を兼ね備えた集団が相手だのだ…

「とにかく、今は相手の出方を見るしかありませんね。」

戦略ゲームとはまったくもって違うリアルな戦い。こちらが動けばあちらも動く。単純な行動は厄介で邪魔になる。

友一は考え込んだ。たとへ無謀だとわかっていても、彼にも守るべき存在がいるからである。

当初は他人事だったが、実際話を聞いているうちに身の危険を感じ取ってきた。自分ならまだマシで、美貴に火の粉が飛ぶかもしれないと考えるとどことなく憤怒が湧き上がる。美貴だけではない、安曇や雛菊などの親友兼恩人たちがそう易々と傷ついていい気分なわけがないのだ。

それなら、自分にできる最大限のことをしたい。

そんな気持ちで作戦指令本部長をやっているわけである。

だが、そううまいことにはいかない。

持っている脳みそのすべてをフルに活用し、策を巡らせ、効率的に高確率で戦争を勝利させなくては意味がない。

無力承知で全員、玉砕したとしても、それは形だけで、美貴たちを守るという目的を達成することはできない。

形などはいらない、確実に勝たなくてはいけない戦い。

そして、本来の玉砕の存在意義である時間稼ぎは、稼げども後方には味方兵力零といった絶望が広がっている。これでは、51名で玉砕して150人にことごとく敗れ去り、あとは野をかける狼のように、青海高校を蹂躙されるだけである。

友一は考えた。頭をフルに活用して。1TBのHDDをかき回すPCのように、持てる知識をすべて使い、策を練ろうとする。

そこへ

「青海運動場にて戦闘が勃発!」

不良グループの1人が駆け込んできた。そしてよからぬ報告を口走る

「敵の数は80人上です」

敵兵力の半分以上。たしかに運動場まで南下すれば攻撃もたやすくなる。だが80は圧倒的だった。

報告によれば現在戦闘が始まっているそうだ。

不良グループの頭を先頭に計10人の仲間が死闘を繰り広げているとのことだった。

無謀だ、あまりにも無謀すぎる。

10対80?リンチの次元を軽く通り過ぎた圧倒的な人海戦術だった。

しかも、不良グループの頭が引き連れていたのは彼のグループの本隊ではなく、分隊の下っ端達であった。

たいした戦力ではない。頭がそれなりに強いとしても、いつものグループの力よりは劣るだろう。劣勢である。

絶望、そんな心境の中、もう1つの連絡が入った。

「大変です、青海小学校付近の稲妻神社に敵が集結中です。数はおよそ60上」

その他の兵力のようだ。しかも稲妻神社とは青海運動場より南にあり青海の学区内に余裕で入る。

これは、すでにその他と言うより、敵のメインはそこにあるようだ。

稲妻付近で勝利すれば、孤立した運動場部隊を挟み撃ちできる。

あとは、守りに入った青海に攻め込む。

徹底している。

数もそれゆえの策も、徹底している。

「くっそ!武藤、お前は運動場へ、オレは稲妻に行く。」

幾斗はたえかねた。その声に武藤も軽くうなずくと

「わかりました。御武運を…」

「お前もな」

2人の不良はたがいに見つめあい、少々うなずきあうと、少々緩んでいた口元を閉め、完全なる戦闘体制に体を入れ替える。

言えば、これは2人の初陣なのだ。

空き部屋を出た2人はそれぞれ12人の不良をつれて自転車置き場へ行き、12台の改造自転車に2人ずつで乗り込みそれぞれ戦場へ向かう。幾斗を筆頭にした自転車連隊(6台、12人)は稲妻神社へ、武藤隊(6台、12人)は運動場へ向けて出発していく。

青海北から大切なものを守るためか?

校門を出る12台の自転車と24人の少年たち。彼らはどんな思いでこの門を出るのだろう。

そして、笑顔で帰還することができるだろうか?

作戦指令本部部長の友一は直接は戦地には赴かない。

指令長は、部屋で携帯電話を握り締め、結果を待つしかないのだ。

そんな友一は、少しずつ遠くなっていく自転車連隊をどこか切なげな目で見送った。

決してあってはならぬ未来を脳裏に浮かべながら…













不良グループの頭である、山木戸直也やまきどなおやは仲間の不良たちと運動場の中央にある公衆トイレの障害者用トイレに籠城ろうじょうしていた。敵は約80人の大軍、味方は傷だらけで疲れ果てている。こんなスライド式のドアなど、今にも壊れそうである。鍵は閉めているがそれでも心配で、仲間は恐怖ゆえに力の入る手を必死にドアに当てて敵の侵入を防ごうとしていた。

「本部には連絡したのか?」

「はい、もうすぐ武藤さんが援軍にくるそうですが…」

はたして武藤達は80人相手に戦果を上げれるだろうか?

山木戸は不安であった。いかに武藤でも数に勝てるだろうか?

かの世界最大最強の戦艦も多くの雷撃機の爆弾の雨をくらい、撃沈されている。

山木戸の頭にはそんなことが浮かんだ。今でも、スライドドアはゴンゴンと敵の蹴りか何かを受けているし、時折換気扇の隙間から水などを入れられるという精神攻撃をされたが、こちらが健全であることを示すかのように落ちていたホースを水道につなぎ逆のことをしてやったりしていた。

敵に包囲されている。

この籠城はいつまで続くか。

つらそうに息を荒げる仲間や、ぐったりと動かない仲間たちをみて、この状況のヤバサが伝わってくる。

なぜにこんな戦いを始めたのか。

あぁ…分隊の奴らが肩に当たったからだったな。

本当にくだらない。

そんなことで、こんなにも圧倒的な戦力を見せ付けられるのか?

「か…かしらぁ…」

ドアを必死で守ってきた少年が呻くような声を発する。

その手はガクガクと震え、今にも手を離しそうだった。

「ぁあぁぁ」

少年は精一杯力を入れる。

仲間の数人が立ち上がり、少年を手伝う。

ガコンガコンと蹴られるドア。借金取りに怯える人のようにガクガクと震える仲間。

本当にくだらない。なんで、肩に少しばかりあたったぐらいで…こんなことに。

くだらない。

本当にくだらない。

くだらない理由に漬け込んで、結局はあおうみを配下に置きたかっただけだろう。

こっちが少数で、人員も不足していることに漬け込んだゆえの。

やつらが欲しかっただけだろう。

くだらない。本当にくだらない。

ちょっと戦争の口実を作って、戦いを正当化しただけだろう・・・

くだら・・・ない・・い

だが、彼は気づいた。

それは、少し前、まだ、学校に不慣れな少女に肩をぶつけられ、気弱そうなところに漬け込み、カツアゲのネタにした自分も同じだったと。

あの時、助けに入った生徒会長のあの少女はなんとかっこいいことだろう。

殴られても、殴られて目頭にいっぱいの涙をたたえても、自分に反抗してきた。暴力には屈しなかったあの少女はなんともかっこよかった。

くだらない正当化などには見向きもせず、現実を、実際に誰かが悲しんでいるといった現実をしっかりと見据えたその瞳は、いくら殴っても、脅しても、自分の意見をのんではくれないだろう。

そして、そんな少女を助けたあの不良。幾斗はなんともかっこいい存在なのだろう。(勘違い)

こんな状況になって、ようやく気がついた。雑魚で何もできない自分は、雑魚にしか相手にできない自分はなんともかっこ悪いのだろうか。

調子に乗っていたとかそういう次元ではない。

こんな状況で・・・いいや、こんな状況だからこそ気がついたのだろう。自分のやってきたことがどれほど恥ずかしい行いだったかを。

くだらない理由で、いきがってたのは自分も同じだった。

肩をぶつけられたら、大丈夫かと尋ねる。これは普通のことだろうに。

なんとも恥ずかしい。山木戸は赤面を隠せずにいる。

周りでその状況を見ていた仲間たちはものすごく不思議な気持ちになった。

頭である山木戸は少しだけ大きく息を吸う。トイレ独特の臭いが肺を駆け巡るが、まったく気にした様子はない。

ドアの前で必死に力をこめて抵抗している少年たちの前に言って、退くように支持する。

山木戸はドアの鍵に手をかけた。

「か・・頭?何するんですか?敵が、津波のように敵が雪崩れ込んできますぜ。」

失敗すれば、敵はこの狭い部屋になだれ込むだろう。狭い部屋なので下手をすれば圧死だろうか?

だが、山木戸はその手を止めなかった。さっきまでの恐怖はその顔にはひとかけらも残っておらず、ただどこか爽やかな笑顔だけがその面に張り付いている。状況だけをみれば最悪だが、なぜかこの男は恐怖をたたえていない。

なぜだ?

仲間たちは不思議だった。この数十分の籠城が、この男に何をもたらしたかは仲間たちはわからなかった。

「ココは俺たちの青海だ、恐れるこたーなんもねぇーだろーがぁ?」

山木戸は仲間たちに言った。力強く。力強く。

もう逃げない。その男の瞳にはあふれんばかりの闘争心と、みたこともないような誇りが漂っていた。

ゴツイ、ブレスレットが巻いてあるその腕はなんの躊躇も無く鍵のロックを解除する。

ガチャリ

死の音。希望の音。戦いの音。

感じ方は人それぞれだったが、たしかに鳴ったのだ。ロック解除音は外にも中にも響いたのだ。

そして、山木戸は開けた。パンドラの箱を。くだらない、憎しみや嫉妬や、恨みが詰まったパンドラの箱をスライド式のドアであけた。



 だが、忘れてはならぬ。パンドラの箱に詰まっているのは、なにも憎悪だけではない。

            最後に入っているのは希望だということは忘れてはならない。












幾斗隊が到着したのは、報告を受けた10分後ぐらいであった。6台の自転車は、この神社へ続く長い階段の前に止められる。木刀、バット、鎖で武装した不良たちの中心に、とくに武装した様子も無い幾斗が先頭で歩いていく。

かなり急な階段ではあるが、さほど歩くのに支障は無いようだ。

幾斗の後ろを歩く不良達はどこか緊張していた。

不良が全員、喧嘩が強いわけではない。もちろん、本当に強い奴もいるが、形だけの奴も少なくは無い。

不良のようなかっこうをするのは一種の威嚇である。

カマキリが敵に出くわしたら、釜を広げ、羽を鳴らし、敵を威圧しようとするあれと同じなのである。

幾斗との後ろの少年たちはそれに近いのかもしれない。

喧嘩はそこそこでも、自分の喧嘩力に自信を持っていないものは多い。

ましては、相手が大兵力、圧倒的な力を有しているとしたらなおさらであろう。

階段に積もった石がコロリと落ちる。

もうすぐ頂上だ、広場があるがそこは60人の大軍で埋め尽くされているだろう。

不安だが、いつものヤンキー歩きの足取りは変わらない。

仲間の1人が緊張をほぐそうとポケットから煙草の箱を出した。口に咥えて火をつけようとする。

「やめとけや、喧嘩する前に煙草はよくないぞ?」

幾斗が顔も向けずに言う。その背中を見上げてから、口に咥えた煙草を震える手でケースに収める。

コツコツ・・・・

階段を上っていく。

コツコツ・・・・

戦場へ上がっていく。

そして、やっと頂上が見える位置まで上った。

そこには想像通りの光景が広がっている。

広い神社の広場に数十人のブレザーヤンキー達が群がっている。そして、そのまっすぐ奥には階段に座り込んだ、周りの奴とはまったく違う空気を醸し出している男がいる。

奴がこの稲妻神社進行軍の隊長だろう。

幾斗は仲間に耳打ちした

「あの中央の男を倒せば、くずれるぞ」

仲間たちは軽くうなずく。そして再度、幾斗の顔を見ると軽くうなずいた。

ブレザー達も立ち上がる。舞台は戦場になっていた。

風は冷たく、が不良たちの魂は熱く。

くだらないことで引き上げられたハンマーが装填された幾斗という超絶弾を撃つ。

この瞬間こそが、青海最強の不良の力がもろに出た瞬間だった。

かつて、青海周辺でおこった2つの暴走族の抗争。その抗争を見事に粉砕せしめた、青き稲妻。

幾斗が飛び出す。一瞬で間合いをつめると、手始めに目の前の男をぶち殴る。胴体ごと飛んでいく相手を最後まで見ることなく、幾斗は次の相手にかかった。

ほかの不良たちも攻撃を開始する。なにやら叫びながら、バットや木刀を振り回して攻撃する。

幾斗の突然の襲撃にうろたえるブレザー達は、そのままやや後ろに引きながらも、攻撃態勢を崩そうとはしなかった。

そんな敵を、眼下に捕らえたら無事では帰さないのが幾斗であった。目の前の敵を片っ端から殴り倒し、後方に回った敵に殴った遠心力でさらに殴る。幾斗に近寄った不良達は強制的に半径3メートル外に吹き飛ばされる。

そんな幾斗の蒙闘っぷりに空気の流れを乗せて、青海の不良達は徐々に徐々に戦いを有利に進めていく。とどまることを知らない蒼髪蒼炎そうぱつそうえんの幾斗を戦闘に、青海高校は前進を続けた。目指すは敵将。壇上の偉そうな奴!

 幾斗が神社の砂利だらけの地を蹴ったかと思うと、軽々と数メートル前まで前進し、そこで構えていたブレザー野郎を2人まとめて吹き飛ばす。崩れた隙をついて残り5人の青海も適当な奴にたたみ込みをかける。

 また一歩、敵は退いた。ジリジリと。

「群れててもこの程度か?カスが!」

幾斗の後ろにいた不良が一言そう言う。幾斗はすこしだけ怪訝そうな顔をその少年に送ったが、すぐに前方に顔を戻す。

そこで、たえかねた敵の1人が鉄バットを持って幾斗に飛び掛った。喧嘩に強いといっても幾斗は人間だ。まともに食らえば死ぬ。

うぉーと雄たけびを上げながら、幾斗へ狙いを定め、バットを振り下ろす。

残念ながら、幾斗にはバットはあたらなかった。幾斗が相手の利き手を蹴り上げ、手首をひねった相手はバットを放してしまった。

カランカランというむなしい音だけが神社を支配する。

「いい加減たいぎいだろぉーが。そこで偉そうに座ってる野郎。下りてきて俺とタイマンはれ!」

幾斗が壇上の男にそう呼びかける。ブレザー達は一瞬、男を見た。男は少しばかりニヤニヤと笑みを浮かべて。

「俺はたいぎくないねぇ。自分でやるより、見てるほうが好きかもねぇ。」

そう返答してきた。幾斗はたいそう不服そうに男を見上げる。本当にたいぎそうな目つき。

 めんどくせぇ・・・・

幾斗は心の中で、そう呟くとまた戦闘体勢に入る。幾斗が入ったと同時に敵も一斉に突っ込んできた。

またもや神社は少年たちの雄たけびと、殴りあう音と、何かがあらぬ方向に曲がったような鈍い音が混ざり合う。さきほどとなんら変化もなく幾斗は眼下に入った敵を容赦なく吹き飛ばす。木の棒で殴りかかった奴は幾斗の蹴りで棒を粉砕され、バット、木刀ならば手からもぎ落とされて、素手でかかったならば、拳が幾斗にかする間もなく変な方向に投げ飛ばされる。

 止まらない幾斗を見ながら壇上の男はクスクス笑っていた。その行為がさらに幾斗の機嫌を悪くしていた。

ブレザー不良達は、だんだん幾斗に飛び掛っていくことが無意味に思えてきたのか、飛び掛るのをやめてジリジリジリジリと後ろに下がり始めた。壇上の男はそんな光景を見てもニヤニヤと汚らしい笑みを浮かべ、なにもせずにただ青海と青海北の戦いを見ていた。

 だが、戦意を喪失しかけた仲間を見て、少々焦りを覚えたのか、男は仲間に何かを耳打ちした。

 男の言葉に頷き、ブレザー達は急に幾斗から半径7メートルほどまで離れて下がり、距離を取った。

「死ね、青海の薄汚いドブ猫め!」

男が放った言葉と同時に、こぶしほどの大きさの石を幾斗に向かって1つ、男が投げつけた。

軽々と身をひねり、その石を回避すると、得意げに壇上の男に向かって幾斗は笑った。

「そんなんじゃ死ねないよ。」

男は黙ってる。幾斗はさらにかまってやろうとした。口をまた開く。

「そもそも俺を倒そうなんて・・・・?!!「ゴン」!!???

なにがおこったのか?

ただ、頭がヒリヒリと痛む。どうやら石が頭に直撃したようだ…誰だ?幾斗があたりを見回そうと顔を上げた瞬間、一斉に敵から石の雨が降ってきた。さすがの幾斗もよけれない。打ち所が悪かったら軽く死ねる。とっさに頭を手で覆って、ガードするが、手や足、腹にはもろに石が直撃する。

 動けないのは他の奴も同じで青海はみな頭をガードしてるか、もう直撃して伸びてるかであった。

幾斗は初めてそこで動きを止めた。攻めが得意な幾斗が防戦に回っている。というより、防戦以外は無謀という状況。

 ガスガスと直撃する石たちは無残にも幾斗の腕の皮を剥ぎ、足や腹に痣を残そうと強打を加えてくる。雨はやまない。

そこでチラリと壇上の男が目に入った。男は石を持って大きく振りかぶると、石を投げた。ビューンと風を切る音がしたと思うと、幾斗の腹部に正確に打ち込まれた。

 その石は他の雑魚とは違った。速度も正確さも、そして強さもまたく別格である。防戦で動けない幾斗に正確に打ち込まれた石は、幾斗に激痛を腹から広がるように走らせ、あの幾斗を後方にのけぞらしたのだ。思わず、床に伏せてしまう。こみ上げてくる吐き気。だが容赦なく石の雨が伏せた幾斗の背中にゴンゴンとヒットする。苦しみながら幾斗はもう一度、あの男をみる。そこには想像した通り、下品な笑みを惜しげもなく披露した男が気持ちの悪い視線を送ってきていた。

 頭に血が上る。あの顔をみたら、もう殴らずにはおれないといったように、幾斗はそっと立ち上がった。ガードもせず、石の雨も気にしなくなっていた。走り出す。目指すは壇上のあの男。目的は壇上のあの男を殴ること。それ以外、何にも考えれなくなった。どんなに石が幾斗を叩こうと、まったく気にせず、前進した。

 とどまることを知らぬ蒼髪蒼炎の名が帰ってきたような気がした。石石石石・・・ぜんぶ受け止める。そして進む。今なら足をもがれても進み続ける気さえする。

 そして地面を蹴り上げた。壇上まで飛び上がる。敵は、男は目の前。拳に力を入れ始め、敵の顔面を正確に狙う。あと2センチでこの男は殴られる。宙に浮いた幾斗は全体重を拳にかけてついに相手に殴りかかった。

 突然、目の前に大きな黒い塊が見えた。直後、腹部を何かに押されたようになり、その押す力が前に落ちようとする幾斗の力を上回り、幾斗を後ろに吹き飛ばす。吐き気がする。目の前が真っ白になる。さっきまでとはまったく別の。言うならば幾斗は地面を蹴った場所に回帰していくような形になった。しかし、体勢が悪く、背中を地面で強く打ってしまった。せきが自然とこぼれる。肺が圧迫されたのだろう。またひどく腹部が痛む。一般に言う溝に入ったのであろう。幾斗はそこで戦闘能力を失った。

 汚らしい笑みを浮かべながら男は幾斗を壇上から見下ろした。さげすむような目線、優越感に浸る唇。

最後にトドメをと思ったのか、男は落ちていたやや大きめの石を持ち上げた。


















武藤のチャリ連隊が青海運動場についた時、そこには驚くべき光景が広がっていた。報告によると、山木戸をあわせた不良達はトイレで籠城していたはずだ。なのになぜ、今、彼らはこんなにも勇敢に戦っているのか。

 山木戸は顔から鼻血をダラダラと流しながら数人の相手に蹴りを加えていたし、正規のグループメンバーでもない雑魚な不良達までもが山木戸に同調したのかかくも勇敢に戦っていた。無謀という言葉が良く似合うはずのその光景だが、なぜか見ている武藤や仲間達にまで闘争心が強くなるのを感じる戦いだった。

「たった1人に何やってる!」

敵の1人が山木戸にひるむ仲間に叫んだ。奴らには戦力としてみなされているのが山木戸だけなのだろう。だから1人なのだろう。だが、

「はぁ?こっちには10人いんだよ!ナメんなぁ!」

鼻からドロドロと流れた血は山木戸の唇に触れて唾とまざり、山木戸の声とともにあたりへ飛び散った。滴り落ちた血は山木戸の学ランを染め始めるが、本人はまったく気にしていない様子だ。

 彼の言葉に、仲間達が静かに頷く。

団結。彼らは団結した。願わくばもっと平和的な団結を望んでいたに違いないだろうが、とにかく彼らはここで団結したのだ。

「俺らの地元でワヤすんのやめてくんねぇーかなぁ?さもねぇーと俺ら10人で全員シメてやんぜぇ」

山木戸がとどめの言葉を吐き捨てる。その気迫に押されて、敵の数人がのけぞる。

「ふざけやがって。調子にのんなよ?たかだか10人で」

数で物を言わせてくる青海北は、なんの気迷いも無く10人を見やる。

たった10人。しかも戦力は山木戸1人。負けるわけには行かない。人海戦術を使えば、こんな奴らどーってことない。

「10人?数え間違えないでくださいね。16人です。」

どこからか口が挟まれた。援軍に駆けつけた金髪ピアスの丁寧な不良は、さわやかな微笑を浮かべながら青海北の連中に言ったのである。

だがそのさわやかな微笑一転し、鋭い目つきになると青海北に向かって行く。切り替わったのだ。

やわらかで優しげな普段の彼の顔からは想像もできない強面。さわやかなはずの金髪が金獅子のような威圧に化ける

「安曇さんに何かしようとしたらどうなるか、教えてあげますよ。」

その言葉を合図に武藤が敵に突っ込んだ。武藤の後ろに、味方の不良少年5人が続く。

 まるで戦国時代の合戦のように両者が正面から衝突する。

木刀、バットを持つ敵に対し、武藤は素手でかかる。最初はとび蹴りを放つ。前方の1人がやられ、吹き飛び、それによって後ろの数人も倒れる。

「お話にならない方はひっこんでてくださいね。」

武藤が少しだけ微笑を取り戻してから言った。

「ちょーしこいてんじゃねぇーぞ、コラぁああああ!」

武藤に対して手持ちのバットを振り下ろす少年。だが、武藤にはあたらない。まるでダンスでも踊るかのように軽やかにステップを踏んで、バットをかわし、その勢いで背後に回り込む。焦って振り向いた相手は顔面を殴られて倒れた。

「耳が遠いのですね。もう一度いいますよ?カスは引っ込んでてくださいね。」

武藤の言葉に青海北の不良が頭に血を上らせるが、今やられ、地面でのびている奴の姿が一瞬目に入り、少したじろぐ。

武藤の仲間の不良、数人も武藤の作った勢いにのって、それなりに奮闘していた。

たった1人の強大な存在感が、自信となり、勇気となる。

俺達にはあの人がついてるんだ!

武藤に向けられる信頼。そしてその信頼に答えるほどの圧倒的な力。両者は均衡を保ち、青海の喧嘩の流れをつくりあげていた。

「武藤、来てくれて助かったぜ。」

山木戸が武藤に言う。鼻血をダラダラとたらした顔は痛そうだったが、その顔には笑みが覆っていた。

「なに言ってんですか。なかまでしょ」

武藤が言う。山木戸も照れくさそうに笑う。青海北の不良は、青海を囲んではいるもののうかつに手を出せなくなった。

金髪ピアスの敬語野郎

武藤勇気の存在と、山木戸の思い切った行動に北は若干戸惑い、焦り、戦闘への集中力が極度に低下し始めている。

青海中央公園の何も無いグラウンド。2つの高校に通う不良達。

「さて、山木戸さん。そろそろ片付けませんか?」

武藤がニヤリと笑みを浮かべる。山木戸も血をぬぐうと首を縦に振って了解の合図をする。

他の14人の不良たちも、それぞれ頷いたり、拳を握ったりする。

「おっしゃぁああ、行くぜぇえええ!」

武藤の掛け声と共に、青海高校はいっせにに飛び掛った。








目の前では敵の大将的存在の男が伸びている。こんなチャンスをのがすわけにはいかない。

壇上の下で延びている、幾斗を見下げて男はとどめの一発を放とうと決心した。

「悪く思うなよな」

少々、下品な笑みを浮かべ男は足元に置いてある大き目の石を持ち上げた。

投げる必要は無い。これほどの重量を持つ石をわざわざ力を入れて投げれば、逆に的をはずしてしまうのである。

かるく力を入れて、ほとんど落とすだけでいい。あとは重力が石を幾斗まで届けてくれる。

壇上からあたりを見回したら、仲間達も石を投げ、青海高校の不良は大半が全滅していた。

これで終わりだ。

稲妻神社陥落を完遂すれば、中央公園に進撃してる奴らと合流できる。あとは、青海を挟み撃ち。

そこで転がってる蒼髪の少年も、喧嘩は強いみたいだが、これで終わりだ。

男はズシっした重さを感じながら石を持ち上げる。石についたコケが彼のブレザーにハラハラと落ちるが気にしない。

「青海北に喧嘩を売ったこと、後悔させてやるぜ。」

石を持ち上げた。あぁ、重い。さっさと落としたいに違いない。

周りを針葉樹林で囲まれたこの神社。神主もここ数年みつからないらしい。

だからわざわざ戦場に選んだ。

地元不良との戦いで怖いところは地の利を生かされることである。

だが、今回は関係ない。ここは人数も、戦法も、北が勝っている。

そして手を離す。ゆるんだ笑み、汚らしい目。幾斗が倒れたままこちらを見ているのが見えた。

あぁ、かわいそうに

そうは思うものの、男は躊躇ちゅうちょしなかった。

終わりだ。

そして・・・・

激痛。体が反応できない。男は笑みをこぼしたままだったが、顔の右側。耳の少し前あたりにひどい激痛を感じた。

あまりにも唐突なことに、体が反応することができない。

自分の体がどうなったかもわからない。

手に持っていた石は、手から滑り落ち。幾斗とはまったく違った場所に落ちた

よろめく体をなんとかささえ、何が起こったのか頭の中で整理を始める。

いったい、何が?

だが、考える暇もなく2発目が来た。次は首の根元やや上。

また3発目。今度は額。

どうやら壇上から見て右側から何かを飛ばしているらしい。しかし、次の1発で男は地面に倒れてしまった。

仲間達も気がついた。右側からなにかを投げられてる。いや、撃たれてると。

全員が右側を向いた。必死に敵を探す。

しかし、事態はそう単純ではなかった。

右側をみた北の不良達の後頭部に激痛が次々に走った。その射撃の正確さは、驚くべきことであった。

ほとんど全員、同じ場所にあたるのだ。

1人の少年が気がついた。

さっきから痛みをさそっているものは、なんとただのBB弾である。

と、今度は左側に集中しはじめると、右から小石が正確無慈悲に飛んでくる。小石やBB弾がここまで強力な武器になるとは不良達は信じられなかっただろう。

そのうち、あまりの痛さに耐えられなくなった奴が逃げ出していく。

逃げるという空気の流れが出来てしまい、不良達は出るための階段に殺到する。

逃げる間も、神社の敷地を出るまでは容赦なく発砲が続けられた。

北の数人は、小さな痛みが延々と広がるBB弾とくゆうの痛みに涙し、泣きながら走り去っていく。

情けない下っ端をなんとか起き上がった男は壇上からみていたが、やがて仲間がほとんど出て行ってしまったころになって我に返る。

血だらけの幾斗がおぼつかない足取りで立ち上がるのとそれは同時だった。




幾斗は驚いた・・・

幾斗が目をさますと、そこには不思議な世界が広がっているでわないか。

俺が眠ってる間に、幾千年もすぎていたようだ・・・・というオチはありません


幾斗が目を覚ますとそこには不思議な光景が広がっていた。

壇上の男は倒れ、周囲の敵は拡散、すでに逃げ始めたものまでいる。

仲間のだれかがうまくやってくれたのか?

と思って後ろを振り向いてみたが、仲間は全員そのへんでのびている。

何かに怯えて逃げまとう敵

味方は全滅しているのに・・・

だが、迷うことはない。体はそこらじゅう痛むが、なんとか立ち上がれる。

丁度、壇上の男も幾斗が復活していることに気がついたようだ。

男は幾斗を見て、その目を驚愕に染めたが、すぐに目をそらし逃げる仲間を追うように自分も逃げようとした。

「させっかよぉ!」

今度は幾斗が落ちていた小石を逃げる男の足へと投げる。多少狙っていた位置とはズレたものの、当たった。

足に石を食らって無様にこけた男は少々そのままの体勢だったが、意を決したのか落ちていた鉄パイプを拾って幾斗へと向く。

その目は殺気を帯びていたが、幾斗はそんな男をみても動じない。むしろ呆れているような顔つきだ。

「てめぇ、ぶっ殺してやる」

幾斗の顔を見て、男はすこしすごんだ。

そして、落ちていた釘バットを幾斗に向かって投げつける。グルングルンと上下に回転しながら幾斗へと近づく

風かすり抜ける透き通ったような音とともに飛来したバットを幾斗は軽く身をひねってかわす。

が、これが狙いだった。かわしている、この一瞬の時間に男はいっきに幾斗との間合いを詰める。

当初、お互いの距離は5メートルはあったが、一瞬にして2メートルまで迫った。

鉄パイプの長さが約1.5メートル。幾斗は射程圏内に入った。

男は軽くパイプを振りかぶると力を手首に入れて、パイプを幾斗に向かって押し出す。透通った風鳴りがパイプの速度を表す。

「しねクソがきゃぁ!!!」

だが、パイプが幾斗に致命的ダメージを与えることは無かった。振り下ろしたパイプは幾斗の片手でつかまれ、静止していた。

射程圏内とは決して自分だけのものではない。自分が射程に入ったということは、相手からみても自分は射程に入っているのだ。

おぼつかなかったはずの足を力強く踏み出し、幾斗は拳を男の腹にぶつけた。

くの字に折れ曲がって飛んでいく男。その長めの髪は乱れ、汚らわしかったあの笑みはすでにどこにもなかった。

数メートル先で地面に落ちて、そのまま気絶してしまった。

終わった。

青海戦争稲妻神社の変 ここに終結せん


「ずいぶんとかっこいいことで」

声がした。聞き覚えのある声がしたと思うと、神社を囲う林から1人の女の子が出てきた。

後ろで結んでクルンとカールした髪、白い肌、少々無表情な顔・・・

「露子?」

赤城露子。幾斗は妹の名前を口にした。

「おにいちゃんがここで喧嘩していると、友達に馬鹿にされました。」

と少しむっとしながら幾斗に告げる。

「なので、やめるよう言いに来たらこのありさまです。なので仕方ないですから周りの三下は私達が片付けました。」

そう言うと露子は手に持っていたバチンコを見せる。どうやら敵はこれに怯えていたようだ。

「そうかそうか・・・・・・・・私達?」

幾斗が露子の発言の文脈で納得できないところをもう一度尋ね返した

「私もいるんだけど?幾兄いくあに。」

声とともに今度は露子が出てきた場所と反対方向の林から女の子が出てきた

長い天然パーマのかかった髪、どこか得意げな顔、小柄な体

「龍子?おめぇーもバチンコ?」

糸河龍子。露子の幼馴染にして親友である・・・安曇の妹。

「ちがうしー。龍子はぁーコレ」

そう言って、手にしていた恐ろしい物を幾斗に見せる。

「?・・・・!!ちょっ・・・おまww」

それは龍子の身長の3分の2はあるだろう、ライフルであった。コッキング式、銃身以外は木で出来た第一次世界大戦に出てきそうな見栄えは旧式の銃。

だが、銃身の上に乗ったスコープや、それにさっきの戦闘で逃げまとっていた敵の顔を思い出せば強力な銃なのは間違いない

「エアーガンか?」

「NO。ガスガンだよ。」

ヘリウムガスを圧縮して力にし、その力を使ってBB弾を撃ち出す銃。たとへおもちゃといえど、危ない代物であろう。


注: ガスガンは年齢制限がある場合があります。ガスガン、エアーガンなどは決して人に向けて撃たないでください。


露子のバチンコ、龍子のライフル。2人の小さな狙撃手スナイパーによって青海はなんとか勝った。

60人の不良をたった6人(龍・露子コンビをあわせれば8人)で倒したのだから大勝利といっても言い過ぎではないだろう。

「それにしても、オメーらの射的能力はすげぇーなぁ」

幾斗が本心から感心したように言うと

「半分以上気絶しててみてないくせに・・・何を言っているんですか?」

と冷ややかな言葉と目線を妹から送られていた。

「本当に・・私達がいなかったらどうなっていたことか」

と、少しだけ心配の色に目を染める。

「あぁ、今回ばっかりは助かったよ。オメーらには感謝してるよ」

幾斗は頭をかきながら無造作に言う。

「ならさぁー今度、ステーキおごれよ!」

龍子が口を挟む。

「むちゃ言うな!家には、んな金ねぇー!」

貧乏な幾斗の家にそんなお金はないです。はい

とにかく、幾斗とその仲間達は稲妻神社を死守に成功した。これで敵の進撃は遅れるだろう。

武藤から何の連絡もないので、あっちもあっちで援軍無しでもやっていけてるのかもしれない。

少し前向きな考えを頭で構想し、ひとつ安堵のため息をつくと幾斗は立ち上がった。

絶望なんて、切り抜ければこんなにもすっきりしているものか。数だぁー戦力だぁー関係ないのかもしれない。

とにかく今日は勝った。明日、明後日、どうなるかわからないが、今日は無事に帰れそうだ。

体を動かして火照った幾斗の体は外気に触れて温度を弱め始めた。もう冬だ。



戦闘終了後学校に戻ると武藤、山木戸達が少々傷だらけだったが、笑顔で幾斗達を迎えた。

やはり、武藤、山木戸もあっちで一暴れしてきたみたいだった。

今日は勝った。80人、60人、そんな数字で怖気づいていてはいけないのかもしれない。

無謀?いや、怖いもの知らずなんだよ。





だが、喧嘩を目撃していた近所のおばちゃんが高校生が喧嘩していると学校に通報したこともあって、幾斗、武藤、その他諸々は後日生徒指導室に

送られることとなった。それに加え、わりとおしゃべりな性格の龍子(安曇の妹)によって安曇に喧嘩についてもれてしまった。

 当然、そのことは雛菊、美貴の耳にも入ることになったわけだが・・・・。








†††




「はぁ?おめぇーらはアホかぁ?」

青海北高校の裏庭で、この学校を仕切る幹部達が頭をそろえていた。

「何十人も頭そろえて、何返り討ちにあってんだよ!」

その中でも、ダントツ偉そうな男が色落ちした古いドラム缶に腰を下ろしている。

「てめぇーらにはがっかりだ。負けそうだったら逃げんのか?玉砕しろ!何、平気なツラでノコノコ帰ってきてんだ!」

男はそう怒鳴り終えると、煙草を咥えた。隣の男がライターを出し偉そうな男の煙草に火をつける。

濃い臭いを撒き散らしながら、男はゆっくりとため息をつく。

「どんな奴にやられた?」

「はい。青い髪の男です」

「俺らは金髪の男です」

青い髪?男は少々いぶかしげに眉をゆがめると

「はぁん、幾斗かぁ。それなら、お前らが返り討ちにあったのもわかる・・・・か」

「蛇さん、知ってるんすか?」

蛇と呼ばれた男は、ドラム缶から立ち上がった。

「あぁ、知り合いさ」

蛇はそういい捨てると、もう一度タバコを深々と吸い込む。有毒なガスが肺を黒く汚す感じがする。

「よぉし、白龍爆走連合に連絡しろ。青海一掃に付き合え、青海はオメーらにくれてやるってな」

はい。と1人が返事すると校舎に去っていった。この男は隣町、宝美町の暴走族を従えている。そして高校どうしの喧嘩に、族を利用しようとしている。だが、文句を言う奴はいない。それだけの力がこの男にはあった。

「幾斗かぁ、今度こそぶっ殺してやるぜぇ」

呟きと共にいっきに主流煙を吸い込み、吸殻をポイっとなげやる。



戦いが動き始めた。


















気がつけば5ヶ月以上も更新しておらず・・・なんという放置プレイ・・・

ですが!ついに今日!更新されました。それで勘弁してくださいまし


今回は前回の続きです。武藤くんなり、幾斗くんなりが一生懸命喧嘩しました。

不良グループの頭も、自分の男を磨きましたね?(ハァ?

彼らの活躍?見てくださってありがとノノ


そして、おそろしいスケットも2名出てきましたね。結構、このコンビ好きなんで今後もたまにちょくちょく出てくるかも?


今回も女性陣は出番なしでしたね・・・


みなさまのコメント、評価、お待ちしています。もらったら喜びます!←ココ重要


次回予告的な何か

 次回はついに青海北の本隊が動きます。もちろん女性陣も出ます!

幾斗、武藤、山木戸の3人もさらなる活躍をみせてくれると思います。

複雑な過去、縄張りにうるさい暴走族、イロイロからんで大爆走でしゅ


          では

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