表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/30

第28話:おい!馬鹿犬!頼むから静かにしてろ!

生きてる間に

もし、天国を垣間見れるなら

きっとあの瞬間ではないだろうか?


 T.K.ねこたん 著

 夕刻も近い、下校時間。


それは突然のことだった。

「おめーらどこのシャバ高?いっちょ前に学ラン着崩してんじゃねーよ」

ブレザーを身にまとった数十人の不良に囲まれた青海高校の不良、数人は圧倒的な人数に睨みを入れられた。不良の世界ではよくあることだ。だが、少しもビビルことなく相手に言い返す。ビビッた奴は不良廃業である、と信じている奴等だからだ。

「てめーらどこに喧嘩売ってんのわかってんのか?」

「青海なめんなヨなぁ」

青海高校不良達は睨み返した。その睨みはヤンキー独特のもので、相手を威圧しようとしてか、顎をあげ眼球を下に向けるものだった。自分たちより圧倒的に人数の多い相手に、ビビルことなく挑む姿はどこか自信をただよわせていた。そりゃー幾斗や武藤に喧嘩売ったことあるこのメンバーは、こんなブレザー不良数十人なんかより怖いものを知っているからこんなことできるのかもしれないし、たんなる馬鹿なのかもしれない。ただ、人数が人数である。肝が据わってるとかそんな次元ではない。


 普通、高校生の喧嘩の勝率とはほとんど決まっている。それは、人数が深くかかわり、1対1なら5割。1対2なら7割、1対3以上になると8割9割の確率で少ないほう負ける。現在の青海の不良たちの状況は5対15くらい。つまり1対3に等しくなる。勝率は1割2割そこら… 

 

 ※注 幾斗、武藤は論外で…普通の高校生とは呼べないからね


 ブレザーの1人が殴りかかった。一瞬で間合いをつめ、ダボダボのコシパンズボンで動いたとは思えないほど素早い動きだった。ガードも避けることもできないまま、鈍い音と共に青海の1人が宙を舞い、後ろの仲間を吹き飛ばして転がっていく。転がった先にも敵はいて、顔面や足、手や腹に蹴りを食らう。仲間を助けようとした1人も羽交い絞めにされ、身動きできないまま殴られ、蹴り倒された。学ランのボタンは見事にひしゃげる。ほかのメンバーも鼻血を噴出し、無数のかすり傷を体に刻まれて、整えていた髪はぐちゃぐちゃになっていた。もともと、この青海のメンバーは青海不良の本隊ではない。以前、雛菊や美貴を殴った青海不良グループのリーダーが統べている本隊とは違い、その下っ端の分隊なのだ。もちろん、戦力もたいしたことないし、ずば抜けたリーダー格がいるわけではないので、敵さんの数に圧倒されてたちまち全滅することになる。


ブレザー集団は青海不良数名を真ん中に集めて囲う。それでもヨロヨロと立ち上がり、必死に抵抗を試みようとする青海。青海不良も殴りかかった、しかし、あと一歩のところでパンチを避けられ、その勢いで地面に転びそうになった青海の不良をブレザーは蹴り上げた。その一撃は腹へと突き刺さり、激痛を全身に伝えながら、転びそうになったのとはまったく逆のほうへと体の運動エネルギーを変更する。青海の不良は馬鹿ばかりだが、それでも徐々にわかりはじめていた。

 こいつらは、人数もいるし、喧嘩の実力もあるんだと。

ヨロヨロと力の入らない足で震えながら立つ不良にブレザーの少年たちは軽い蹴りを入れて、再度、青海不良を真ん中に集める。そして、圧倒的人数で囲む。息を荒げながら、痛む体を仲間に預けあいながら倒れることを防ぐ青海不良達は最後のあがきをみせた。

「おめーら…んなことして覚えてろよ、てめーらカス高校と全面戦争じゃぁぁ、本隊に20人は兵隊いるぞこらァ!」

すると、ブレザーの不良達はニヤニヤしながら

「言ったな、なら青海と全面だな。決まりだ」

「こっちにはなー100人はいるんだよ。」

「なんもしらず、全面とか言ってんじゃねーぞ」

ブレザーの不良達は笑う。青海を罵るように笑う。そして、なにか面白いことを思いついたように顔をゆがめると。

「てめーら兵隊だけがやられるとか思うなよ、青海皆殺しじゃ。もう2度とそんなかっこうも生意気な口もきけなくなるからなぁ」

そして、蹴りを入れた。何発も何十発も…


「青海高校か…今度遊びに行くから、せいぜい20人で頑張って高校守ってくれよぉ」



そう言って、最後の一発をくらわした。
















「さむ」

冬だ、もう冬に近い。

「有理数。無理数の用語を定義にあてはめて・・・・

数学教師の柳原先生がいつものように数学の授業を行っている。そして、いつもと違うのは幾斗、武藤、安曇が真面目に授業をしていることぐらいである。は?あの3人が?

「では、今日の授業はここまで、宿題は先ほど言ったとおりだぞ」

授業が終わり、休憩に入ると、氷漬けにされていたところを、解凍してもらったような声を3人は出した。

「死ぬかと思ったよー。授業があんなに大変だったとは・・・」

「たしかに・・・リアル死ぬところだった」

「まぁー学園祭のためですから、頑張りましょう。」

そう、3日後にある学園祭(通称:青海祭)を補習で潰さないように頑張っているこの3人。高校になってはじめて訪れる文化祭に心を弾ませる3人なのである。

「俺、中学のとき、出たことないからなー」

と幾斗

「私もー」

と安曇

「僕の中学は、学園祭というより歌を歌う発表会でしたから」

と武藤


いろいろわけあって、中学でのまともな思い出がない3人。高校こそはと思っているのだ。


 そんな彼らを補習の心配が100パーセント無い雛菊と、何故か余裕な美貴が現金な奴らという目でみる。


ついでに、雛菊達のクラスがやる出し物は焼きそば屋と平凡で、仕組みもローテーションで店当番という、普通のものだった。このクラスは”やる”より”観る”の願望のほうが強かったようだ。ほかのクラスでは、お化け屋敷やメイドカフェ、迷路などがあり、その他、生徒会の出し物や各クラブ活動の展示や出し物がある。ついでに6人はクラブに所属していないため、雛菊を除く5人は焼きそばだけである。(雛菊は生徒会長だよ!)


「いやーマヂで楽しみだわー」

と幾斗がほざき、武藤、安曇がそれに続く。



 そんなどこか、ほのぼのとした1日。平和な1日。そんな1日で終わればよかったのに…



安曇、雛菊、美貴の3人の下校途中でのことである。いつもなら不良2人とオタク1名がいるのだが、今日はいろいろあっていない。(生徒指導室)

しょうがなく、3人で下校し高校の近くにある青海商店街を歩いているのだった。

「ね、会長さん。文化祭に赤城くん誘わないの?」

安曇の唐突な質問。

「へ?なんに?」

「だぁーかぁーらぁー、文化祭で赤城と一緒に回らないのか?ってことだよ。」

美貴が説明する。

「へ?あっ…でも…その…迷惑じゃないかな?」

 

 生徒総会の朝礼挨拶はあんなに堂々としゃべるくせに、こういうことになると小心者チキンになるとはどういうこと?


多少、安曇と美貴をイライラさせながら会話は進む。

「だいじょーぶだって、赤城だってあんたと回りたいよ」

「そーだよー会長さん」

どこか、イライラを抑えてやさしい笑顔で接する美貴と安曇。

「そうかな?」

少し乗って来る雛菊

「そうだよ!!!たぶん」

「そうそう、絶対そうだって!たぶん」

美貴と、安曇が最後の止めを刺す。しかし

「た…たぶん?」

しまった!っと雷撃に打たれる2人…たぶんという言葉に深く違和感を感じる雛菊。


 「!!  !!  !!」

 

「!! !! !!」


ぎゃーぎゃーわーわーなんたらかんたら宝船



そこに、大乱闘を繰り広げる3人に不意に近づいた4人の男女グループがいた。そして

「おぉ?お前ら、青海の生徒ぉ?」

急な呼び止めに驚いて振り向く3人。そこには、ダボダボのズボンに、ゆるゆるのネクタイをしたブレザーの不良男子が2人、かなりのミニスカ、ゆるゆるネクタイをした不良女子2人が立っていた。

「どなたですかぁ?」

不良慣れっこの安曇が臆することなくたずねる。

「どなたって?オメーらが喧嘩売った相手だよw」



 不良は3人に飛び掛った…















「なー頼むよ赤城さーん」

いつか雛菊や美貴を殴った青海の不良グループのリーダーは幾斗と武藤にたかっていた。

「はぁ?全面戦争?隣の不良高校と?勝手にやってればいーじゃんか」

生徒指導室から出てきたばかりの幾斗は心底たいぎそうに押しのける。

「いやー人数が足りないんだよ」

「しらねーよ」

「そう言わないでさぁー頼むよ。」

武藤も、幾斗も学校の事情なんか気にも留めない性格で、隣の高校が攻めてくるって言われてもいまいち「えっ!マヂ?やったらーなー」という気は起きないらしい。そもそも、味方になってくれと言ってきている連中は昔、美貴や雛菊に対して暴力を振るった輩で、先輩の癖に幾斗や武藤に対して下手に出るという情けないやつ(しょうがない)なので…幾斗も武藤もあまり乗り気にも、やる気にもなれない。

 だが、青海高校のメンツを奪われるわけもいかないので、不良グループのリーダはしつこく協力を要請する。

「頼む。この通りだ。」

頭を深々と下げる不良。しかし、幾斗も武藤もまったくもって興味をしめさない。最終的には帰ろうとまでするので。

「まってくれ、絶対に負けられないんだよ!」

と、叫ぶ。そこで、一瞬2人は止まるが、振り向かずに廊下を歩く。

「おい!お前らの女になにがあってもしらねーぞ?」

その言葉に2人は歩みを止める。その言葉こそ、不良グループのリーダーの最後の一手だった。

「どーゆーことだ?」

幾斗が訪ねる。武藤も不機嫌そうな顔でリーダーを見る。その顔は、鬼の顔であった。鬼面。比喩にして、こんなにもあてはまる言葉があるだろうか?ってぐらい威圧と狂気に満ち溢れた顔。そんな顔を、リダーに向ける。そこへ

「幾斗さん、武藤さん。大変ですよ!!」

と我らがヲタク、佐山友一が駆け込んできた。携帯電話を握り締めて、どことなく焦っている。

「あのさぁー友一ぃ、今、話中なんだよ。空気読めよ!」

幾斗が不機嫌な声を上げるが、友一は顔色ひとつ変えずに、

「それどころじゃねいんだから!美貴、糸河さん、会長さんの3人が、隣の高校の不良4人に襲われたそうですよ!」

えらくタイミングが良すぎると思った。しかし、あの不良グループの頭が言おうとしてたことが少しずつわかってきた。

「それで?3人は無事なんですか?」

武藤も少し冷静さを失いかけているのか、どこか焦った声になる。

「はい。青海不良の数人が戦闘に乱入して救出されたそうです。」

友一の言葉に2人は肩をなでおろした。

「そういうことですよ、赤城さん、武藤さん。」

リーダーは言った。

「なるほど、それはそれはまたなんともいえねーぐらい、めんどうだな?おい」

幾斗が不機嫌に言ったあと

「でも、あの3人をお前の手下が助けてくれたみたいじゃねぇーか?」

と付け足す

「俺らにも、青海のメンツがかかってっからさ」

リーダーは言う。

「よし、今日の礼に手伝ってやろうじゃんか。」

幾斗がそう言った。

「では、私もお手伝いしますよ」

武藤も続く。

「2人とも、怪我しないようにね」

友一が心配そうに言う


 と・・・・


「なに言ってんだ?ユーチ?お前も行くんだぞ?」

「って?ええぇぇっぇっぇぇええええ???」

「えええ!じゃねぇーだろ?仲間だろ?連帯責任じゃねぇーか」

「そんな、バカな話があるかよ!」

「友一君、がんばりましょうね」

「武藤さんまで・・・」

「そうと決まれば(ry

「そんなーそれこそ(ry


 ゴホン


リーダーが咳払いを1つする。

「で、攻めてくるのがなんだけどさぁー、文化祭の前夜祭真っ最中ってとこだな」

リーダーの言葉に3人が唖然とする。

「てく、メーワクな野郎どもだ」

「せっかく、美貴と楽しい前夜祭がおくれると思ったのに・・・」

「本当に無粋なやつらですね」


   3人は怒った。攻撃力が上がった。タラララッタラ♪


「でも、文化祭となるとこのことは安曇さん達には言えませんね。」

「そーだな、心配するだろうし、何よりまきこみたくないし」

「・・・なら僕も巻き込まないで・・・」

最後の、友一の発言に、怖い視線を向ける武藤と幾斗

「とにかく、あの3人にはバレるなよ」




 

 今、大戦が始まろうとしていた!!

















「本当に、びっくりしたよ」

安曇が声をあげる。美貴も雛菊も続く。

「てか、なんで青海北高校となりのこうこうやつらが喧嘩売ってくるわけ?」

美貴が不機嫌に言う

「とにかく、みんな無事でよかったね。」

雛菊が安堵の息を漏らす。

商店街を抜けて、それぞれ自分の家の方向に曲がらなくてはいけない場所にさしかかった。

「で?文化祭どうする?」

美貴が話題を戻す。

「私は、前夜祭を武藤君と2人きりで過ごそうと思う。」

安曇は言った

「私は、友一と過ごすから。」

美貴も言った。

「だから、会長さんも赤城くんをさそってみたら?きっと良いって言ってくれるよ。」

「そうだよ!赤城、誘わなかったらあんた、ポイジル(ひとり)よ?」

2人は、雛菊に詰め寄る

「そ・・うだよね・・・・」

「そうそう」

「そうそう」

 2人はうなづく。

「わかった・・・勇気を出して誘ってみるよ!」

「おぉおおおおお!!」

2人から歓声が上がる。さっき、不良にからまれたことなんてこれぽっちも気にしていない様子のこの3人。肌寒くなってきた冬の空気に、3人のどこか幸せな笑い声が反響する。そこにあるけど、なにもない、気づけそうだが気づけない、重要なことがあるのにわからない。そういう状況に陥っている。それは、幸せである。知らず知らずのうちに、誰かに守られている。



 冬は寒く、彼らの心は熱く、彼女らの想いは切なく甘い。



そんな、そんな文化祭がはじまろうとしている。

























おまけ



「龍尾さん。幾斗の文化祭があるけどいく?」

「そうだな、好感度を上げるために行こうかな・・・」

青海興行の事務室で幾斗ママと山下の会話が行われていた。どこか威圧を感じる部屋だが、今の会話を聞いていたものがいるとしたら、その威圧もすこしだけ薄らいでしまうだろう。そのくらい、どこかほのぼのとしていた。

「でも、幾斗くんが文化祭ね・・・中学の頃の彼からは、想像もできなよ」

山下が、ため息のようなタバコの煙を口から吐き出す。煙はどこか寂しげで、ふらふらと浮遊すると、各地に霧散した。

そんな山下をみて、幾斗ママもタバコを咥えると、マッチで火をつけ、ゆっくりと口に吸引し、その味を楽しむ。

「きっといるのよ、幾斗にも・・・一緒にいて楽しいと思えるような人達がね・・・」

幾斗ママも山下に続いて、吐息のような煙を口から吐いた。

そして、彼女もまた、ただよう煙が霧散していくのを見送った。ただ、その目はどこか寂しげで、そしてどこかうれしげにも見て取れる・・・とても不思議な表情だった。

 まるで、息子を想う母のように



            




どうも、お久しぶりです。今回は不良小説っぽく喧嘩の話です。おとなりの青海北高校という不良高校が攻めてくる話ですね。前半ですが。次回は幾斗と武藤も動きます!そして、文化祭の前夜祭はいったいどうなる!?雛菊、美貴、安曇の運命は? 

 

 そしてなにより、友一君が生きて帰ってこれるかどうか・・・・w



 作者へのコメント、感想、評価をできればお願いします。もらうとすごくよろこびます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ