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第27話:学校には2つ穴のベルトをつけて行きますがなにか?


冬の色が濃くなってきた。まだまだ冬ではないものの、すぐそこまで迫ってきている気配があった。

今年は冬が来るのが早い。大人たちは日常会話でこんなことを口走り、子供達もそれを肌身で感じていた。

 10時12分16秒。北風があたりを吹きぬけ、一軒のボロマンションへとぶつかる。今にも壊れそうな姿をさらすそのマンションは、たぶん耐震強度もそれほどないだろう。地震でも来れば、すぐに壊れそうである。

 そのマンションの前に、1台の高級車が止まっていた。周りの風景からはまったく合わない黒い車体が妙な威圧を持っている。ドイツ生まれの高級車は、メーターも日本車とは比べ物にならないぐらい数字が高い。そんな真っ黒な車体に寄りかかって、1人の男が煙草をくゆらせていた。

 黒いスーツを纏い、長い髪をセットしているのにまるで自然になったかのように整えている。目は細く閉じていて、まるで寝ているかのようであった。手に持った煙草ケースには日本ではあまり見かけない名前のアルファベットが黒い色でケースに並んでいた。


 「ここが彼の家?」


男はもう一度煙草を口に咥え主流煙を深く吸い込むと、口からため息のように静かに吐き出した。

吐き出された煙は、フワフワとあたりを回ると星が輝く空へと登っていく。

 

 まるで、はやくその男から逃げたいかのように煙は空へと消えた。






「お袋・・・」

幾斗の言葉に赤黒い髪をした女性は少しばかり唇を吊り上げて、リビングの真ん中より少し東側にある大きなソファーにどっかりと腰を落ち着ける。まるで我が家にでも帰ってきたように。

「あのさぁーお袋。なにげない顔しってけどさぁーココは俺の家なんだけど?」

幾斗が抗議の声を上げるが、彼女はまったく気にしていない様子だ。細長い煙草シガリロを咥えると、ライターで火をつける。

「幾斗。お母さんが帰ってきたんだよ?お酒ぐらいだしなさいよねぇ?」

フゥーと甘い香りの副流煙があたりを漂う。その匂いとまったく正反対の念が雛菊ねこには2人から出てるように見えた。まるで龍と虎の戦いのようである。強大な威圧とただならぬ空気があたりを濁す。2人の睨み合い。

 あの怖い目つきの幾斗と互角・・または互角以上の怖さを彼女は目から、身体から、放出していた。雛菊はもし、今人間だったら冷や汗をかいているだろうと自覚した。とにかく怖かった。

「はぁ?」

「はぁ?じゃない!あたしは客だよ?」

「あぁ?招かざる客だろ?」

「なにが招かざるよ!」

 数分間・・・雛菊には無限に感じたその数分間。幾斗と幾斗の母の口喧嘩は続いたが、結局幾斗が負ける?ような形で終わりお酒を取りに台所にいったん消えた。幾斗ママは勝ち誇ったように鼻を鳴らすと、深くソファーに座りなおした。煙草シガリロから甘い香が立ち込める。





  何故だろうか?どうしてさっきまで怖いと思っていた人に私は近づいているんだろうか?



「にゃぁー」

不思議に身体が前に進み、彼女の足下に雛菊は歩み出ていた。雛菊ねこの茶色い長めの毛は幾斗ママの美脚にフワリとあたり、まん丸に見開かれた瞳は彼女をしっかりと見つめていた。猫に気付いて、猫の首根っこをつかむと、そのまま引き上げ宙吊りにしてから幾斗ママは雛菊ねこをまじまじと凝視し、台所からなにやらワインとグラスを運んでくる幾斗に対して幾斗ママは声を出した。

「幾斗〜あんた猫なんて飼い始めたの?」

「あぁ?・・・あぁ・・・その猫さぁー露子が連れてきてよぉー頭のいい猫だぜ?」

「頭のいい猫?露子が拾ったの?」

「あぁ…」

コポコポと幾斗がグラスにワインを注ぐ。お客用のワインであったが、たいしたお金の無い幾斗の家なのでごく普通に手にはいる素朴なワインだった。幾斗ママは幾斗の生温なまぬるい返事を聞いてから注がれた紅色の赤ワインをゴクリと一口飲むと満足そうにニヤリと笑みを浮かべてグラスに残ったすべてのワインをいっきに流し込む。プハァーと息をもらしてから緩んだ唇をキリっと結び、唇についたかすかなワインを赤い舌をチロっと覗かせて舐めとる。

「そんなワインで満足げな表情見せるなんて、お袋も貧乏癖なおってねぇーなぁー」

幾斗の皮肉めいた言葉に一瞬目を強張らせたが、1つ小さなため息をつくと

「私は、今でも貧乏だよ。」

と小さく囁いた。その囁きに「ほぉ」と生返事を返すと幾斗は

「つーわけだからさぁ、キャットフード代もかかるからもう少し仕送り増やしてくんないかなぁ?」

と、とんでもないことを呟く。

「はぁ?あんたねぇ!バイト行ってんでしょ?」

「はぁ…俺のバイトなんてなんの足しにもならねんだよ!」

悠治とおさんさんの貯金があったじゃない?」

「あれは学費、露子の未来のな」

そう言うとカエルの絵が描いてある貯金通帳を彼女に渡す。幾斗ママは貯金通帳にするどい目つきを通すと、小さな溜息をこぼすして机の上に通帳を置いた。

「ふぅ、贅沢はいけないよ!」

「俺のじゃねぇー露子のだ!年頃なのに兄貴のお下がりの鉛筆とかさぁー可哀想だろ!」

実際家計が厳しいときは鉛筆もペンも幾斗が使ってたけど使わなくなったものが多い。

「・・・・わかった・・・1000円アップね!」

「んん?いやいや5000円だろ?」

「はぁ?よし、1500円!」

「4500」

「2000!」

「4200!!!!」

「2150!!!!!!」


 「!! 」「!!」「!!」


壮絶な言い合い。最初こそ冷静だった2人は今は龍と虎の如く激しい喧嘩をはじめた。が、雛菊ねこにしてみれば、幾斗と同等に喧嘩できる人をはじめて見たので、どちらかというと新鮮な光景だった。しかし言い争いがますます過激になってきた瞬間に


「俺の家に来れば毎週1万はあげるよ」

そう誰かから声が上がった。今まで言い争っていた幾斗もお母さんもいっきに静まった。その男はリビングのドアに立っていた。ひどく細い目に長い髪が自然にセットされている。ピシッときまったスーツを着て口にはにきつい臭いの煙草がくわえられていた。その様子を見ていた雛菊はどこか怖いその男を見てゆっくりとソファの後ろに隠れる。あたりがいっきに静まり返った。雛菊にはその男の目がひどく冷淡にみえた。

「山下さん…」

「やぁ幾斗くん」

煙草を咥えた口がニヤリとゆがむ。まるで火のように留まることを知らぬ幾斗がこの男の前ではやけにおとなしい。

「幾斗、実はそれを今日は言いに来たの、ねぇ龍夫たつおさん」

山下龍尾やましたたつおこれが彼の本名なのだろう。山下は幾斗ママに相づちをうつ。

「は?あんたらが結婚すんのになんの文句もねぇーけど俺は赤城の姓を捨てる気はないって何回も言ってるだろ?」

「でもねぇ幾斗、あんたらもお金がなけりゃ「「うぜぇ!」

幾斗ママの猫なで声を幾斗は一喝する。そして、困った顔を作る幾斗ママをみて山下は

「でも、お金に困ってるってさっきいったよね?」

「・・・・」

押し黙る幾斗。山下は細い目の片方を少しだけ開いてかすかに苦笑した。

「じゃあ、決まりだな」

と山下が口を開いた。黙って動かない幾斗を少し見る、山下は部屋を出て行こうとした。しかし、幾斗の声がそれを許さなかった。

「俺は…俺は…ヤクザになる気はねぇ!」

山下は立ち止まる。ものすごい空気があたりを支配した。雛菊のひげはその空気に敏感に反応し、ピンと伸びていた。

幾斗ママも空気を感じ取ったのかごくっと唾を飲んだ。山下の機嫌が悪いならば、良くても半殺しはありえる。

「・・・・」

しかし、意外なことに山下はまたしても苦笑していた。

「そうか、残念だ。気が変わったらいつでもおいで」

と呟く。それだけだった。そして、幾斗に今週分の仕送りの封筒(仕送りはだいたい、この人が出してる)を胸ポケットからだすと幾斗の足元に軽く落とした。淡い微笑みを顔にててえながら山下は背中を向けた。幾斗ママも続いて立ち上がる。幾斗は足元に落ちている封筒をただひたすら見つめていた。まるで、死の宣告が書いてある封筒のように。

 山下は帰ろうとした。そして、その瞬間雛菊は見てしまった。机の上に置かれた貯金通帳を山下がスリとったのを!

 息を飲んだ、幾斗はまったく気付いていない。幾斗ママも何も言わない。今、何かを出来るのは自分だけだ!しかし、雛菊には自分がどうすればいいのかわからなかった。怖いという概念だけが自分の心を飲み込む。でも、でも…体は動いていた。後ろと前の足を上手に使い、放心した幾斗の横を通り過ぎ、今にも閉まりそうなドアを潜り抜け、2人の後をつけるように、いやつけて階段を降りた。追いかけるとも言う。2人はボロマンションを出ると、止めてあった黒々と闇に溶ける漆黒のベンツに乗り込む。雛菊も車にすべりこもうとしたが、ドアを閉められてしまった。ごついエンジン音、闇が創り保ってきた静寂をその音によって乱し、最初こそゆっくりと走っていたが、少しづつスピードを上げて追いかける小動物をあざ笑うかのごとくエンジン音を響かせた。闇を引き裂く闇のように車は悠々と走り抜けた。









「あれ?起きた?」それが幾斗と私の始めての会話だった。中学のころから人付き合いが苦手で、あまり友達も居なかった私。寂しかった。羨ましかった。家に帰っても誰も居なかったし、学校へ行っても話す友達は少なかった…いやいなかったが正しい。会話は両親との電話か、必要最低限の生活会話だけだった。孤独だけが私の心を蝕んでた。でも、

 彼は万人が創った私の孤独を、たった1人で壊してくれた。そう暗い暗い孤独という牢獄からたった1人で救ってくれたのだ。だからだろうか?恩返しでもするつもりなのだろうか?それともたんに、彼を愛しているからだろうか?だからまるで、敵を狩る矢の如く、物を壊す砲弾のごとく私はかけっているのだろうか?


 漆黒の闇夜を真黒な車体が通り抜ける。時刻はかなりまわっているだろう、国道を走る車は少なかった。そして、珍しく通る車はやけに闇に映えた車だった。おなじ漆黒の色なのにだ!いや、だからこそだろうか?闇の中に溶け込む漆黒は強大な威圧と怪訝である。その車のやや後方を追いかける一匹の猫がいた。説明しなくとも、幾斗ママと山下の乗るベンツを追いかける雛菊ねこであった。

 本来猫は、短距離タイプの動物だ。最高速度は実に60キロとも言われるが、出せるのはほんの数秒…長くても10秒だろうか?一方、車となればエンジンが健全で、燃料となるガソリンが入っていれば60キロなどというスピードは余裕以外のなにものでもない。出そうと思えば100キロ以上だって常時出せる。そんな人類の優秀ともいえる発明に、ついさっき猫になった雛菊がこの後、追いつけたのは奇跡に等しい。いや…ただ運がよかったのだろう。


「・・・・・」

雛菊は少しビビッていた。そりゃ、車が止まった先が青海組とか書かれた暴力を生活手段とする人々の巣窟だったりしたら、だれでもビビルだろう。正直、ダッシュで帰りたいが正しい本音に違いない。ドアの前には妙に怖そうな男の人が2人ほど立っていた。正門から入るのは不可能だろう。もっとも、裏にまわったら誰も居なかったってので、かすかに開いた窓に飛び乗り中に侵入する。その後、建物の中をグルグル回る。この建物は2階のようだが、上に上る手段は非常階段か、エレベーターしかないらしい。つまり、どうにかしてエレベーターに乗らなくてはならない。そう思い、この建物をグルグル回っているといかにもな中年男性が重そうなダンボール箱を抱えてやってきた。チャンスだと思い、その男性の死角に入ると、雛菊の予想どうり男性はエレベーターに乗りこむ。死角に入ったまま雛菊も乗り込むと2階へエレベーターは動き始め、ほんの数十秒で2階についた。 

 階段を作ってくれたらいいのに…

2階は4つの部屋に分かれているようだった。ダンボールを抱えた男性は手前の部屋に入っていた。でも、雛菊のお目当ての部屋はその男性とは別ほうこうだったらしくこっそりと男を離れると奥の部屋に向かった。雛菊のいつもより発達した耳は山下の声を奥の開け放たれたドアの内側に聞いたからだ。男性が手前の部屋に消えるのを確認してから奥の部屋に進む。隠れるものが少ない廊下を小走りで進み、声の聞こえるドアをそっと覗く「山下さん、美穂さんとはいつ一緒になるんですか?」

部屋の奥には大きな机と高級そうな椅子があり、部屋の中央にガラス張りの小机、その机を挟むように向かい合った2つのソファーが並べられていた。そのソファーに座った男が奥の高級椅子に座った山下に話しかけているようだ。

「あぁ…彼女の家に子供がいるんだが、息子さんがなかなか同意してくれなくてね」

「結婚に?ですか?」

「いやいや、俺の息子になることだよ」

「あぁ・・・」

男は少し微妙な顔になると少し間をおいてから苦笑混じりで口を開くと

「さすがにね、お父さんがあなたじゃ」

「あぁ…さすがに抵抗あるだろうな」

こちらも苦笑まじりで答える。

「マジメそうな子なんですか?」

そう聞かれて山下はポケットから煙草を取り出すと火をつけて、口の中で煙を楽しむと

「この辺のワルガキの蛇って知ってるか?」

「はい、たしかこの辺のワルガキをまとめてた…そいつが?」

山下は細い目をさらに不気味に細めると、煙草を咥えた口を吊り上げた。

「いや、その蛇を単身で倒したガキがいたろ?」

男の掻き揚げていた髪が額に少しだけハラリと落ちた。笑っている山下をみて男は口をすこしひくつかせるとポケットから煙草を取り出し咥えた。

「幾斗?幾斗なんですね?」

「あぁ・・・」


山下も男もあとは何も言わなかった。妙な沈黙の中、煙草の煙を吹く音だけが部屋の中を駆け巡っていた。しばらくその時間が続き、雛菊は妙な思考を巡らしていた。不良に関わったことは少なくないが、自分が不良になったことはないし、興味もない雛菊に蛇が誰か、どんな奴かは知るよしも無かったが、幾斗が過去にやったことの大きさは場の空気で理解できる。山下の微笑や男の硬直をみても同じことだ。

「そ…それでは私はそろそろ失礼します。」

そう言うと男は立ち上がり部屋を出ようとして、山下も立ち上がり見送ろうと外へ出ようとする。雛菊は慌てて廊下にあった消火器の影に身を潜める。出来る限り小さく小さく身体を丸めて動きを止める。山下たちの靴が接近するたびに心臓が爆破されそうになるがなんとか耐え抜く。そのこうしている間に、山下たちはエレベーターに乗っていってしまった。


 セーフ かなり危なかった!


少し安堵の溜息をつくと、山下たちがいた部屋に駆け込む。検討はつく、山下の座っていた椅子の前にある机!いっきにジャンプして机によじ登ると机の上においてあるカエルの絵が描いてある貯金通帳を咥えて机を降りる。しっかりと貯金通帳を噛み締めると、部屋を出ようと走った。中央の小机を飛びこえて、ドアまで到達するとエレベーターを目指す。腹に手がまわった。走っていた前足、後ろ足が宙に浮く。その瞬間、雛菊の頭は真っ白になった・・・・・・





きぃ

 深い夜、雛菊のママさんは愛娘の眠る部屋に入ると雛菊の熱を測った。まだ熱はあるが、昼間より引いている。もうほとんど能力を失った熱冷シートを雛菊のおでこから剥がすと、新しいものに張り替える。息もさほど荒くないし、明日には熱が完全に引いてしまうかもしれない。そう思うと少し安心できたようで、かすかな微笑を顔にたたえながら雛菊の上質なブラウン髪をそっと撫でた。

 愛。愛だろう。子供を想う愛なのだろう。熱でうなされ、苦しむ愛娘が心配で心配でたまらなったのだろう。普段、仕事で家にいることが出来なく、寂しい思いをさせてしまっている。そんな思いにママさんは包まれているのだろう。ただ、娘が愛しいのだろう。どんな状況であれ、人は人を愛す。



 


「主人が死んで幾斗や露子の生活費、学費、に困ってから、私は死にもの狂いで働いた。夜も昼も、身体が動く限り働いてお金にした。そんなことしてたから、家には帰らない日が多くなってね。とくに、露子はまだ小さかったから悪い事したと思うよ。幾斗だって、優しいから何も言わなかったけど辛い思いをさせた。それでも、それでも働かないとあの子達に食べさせていけなかった。主人の死に、犯人を今でも深く恨んでいるんだよ。だって、それまでの生活が幸せすぎたから。でも、そんなの永くは続かなくてね。いつしか身体はボロボロになってたよ。すぐに身体は倒れるし、めまいと頭痛が常時鳴り響くし。苦しかった、辛かった、死んでしまいたかった。なにより犯人が。犯人が憎かった。憎かった。憎かった。でも、どうすることも出来なかった。ボロボロになった身体をどうすることも出来なかった。その時ね、彼はね・・・山下龍尾はね、たった1人で私を救ってくれた。お金とか、服とかも与えてもらった一部だけど、惜しみも無い愛を彼は私に与えてくれた…。前の主人には悪いと思うけど、今は彼が何よりも愛しいの。彼は不器用だし、あんな仕事してるから幾斗もああ言うんだろうけど、優しいところもいっぱいあるの


 

走っていた。国道を走っていた。雛菊ねこは走っていた。夜道には車は少なく、人もいない。青海組の事務所から一度も止まることなく走っていた。あの、ボロマンションを目指して。


 


あんたは頭のいい猫だって幾斗が言ってたけど、これほどとは思わなかったよ。本当にすごい。貯金通帳を取り返しに来るなんてね。でも、勘違いしないで、山下はあんたの主人いくとを苦しめるためにこんなことやってるんじゃないのよ。それは、幾斗はいやかもしれないが龍尾さんだって一生懸命なんだから。だから…




走っていた。冷たい冷たい夜道を雛菊は走っていた。




いい?猫ちゃん。愛ってのはイロイロあるのよ。私は子供達を愛してる、主人も愛してるし、龍尾さんも愛してる。深く、強く。わかってくれないのは残念だけど、やっぱり幾斗にも露子にも龍尾さんのことをちゃんと分かってもらいたい。そして、納得してもらってから結婚したい。今はまだ無理でもいつか…いつか…。あなたも、いっぱい幾斗や露子に愛してもらい。



何故か涙が浮かんだ。猫なのに、涙が浮かぶのか?悲しいような、嬉しいような



貯金通帳、おとさないようにね。」

 


あの時、幾斗ママに捕まってイロイロ話しをした(一方的にしゃべっただけです)。あの山下って人のことや、幾斗のこと、そして逃がしてもらった。だから私は落とさないように、自然に力が顎に入るのを感じてる。ただ、冷たかった。








幾斗の家のチャイムをならし、幾斗がピンポンダッシュと勘違いしている間に入る。そして、幾斗に貯金通帳をみせる。部屋はぐちゃぐちゃできっと探していたのだろう。幾斗は雛菊ねこが貯金通帳を持っているのをみて大喜びし、ひたすら猫を握ったまま万歳を繰り返した(アホだ! 作者談)そして、雛菊ねこに喜びのキッスをしてからソファーに寝転び雛菊を抱いたまま寝てしまった。雛菊の心境的には、抱きつかれキスされ、死ぬほど脈をはやくしなくてはいけなくなっていたとだけ書いておこう。そして、ソファーで寝転んでいる2人は今度こそ深い眠りに落とされた。



 Истечения



 時間切れ



目をあける。手を見ると5本の指がちゃんとあり、足をみるとちゃんと人間の足だった。2足歩行もできる。髪もちゃんとあるし、顔に髭はない。



 ひたすら爽やかな太陽の篭れ日や小鳥達のさえずりを聞きながら、雛菊は自分の部屋を出てリビングに向かった。いつもならいないはずに雛菊ママが朝ごはんをつくってくれていた。ママさんはは愛娘に気付くと「おはよう」と優しい微笑みをたたえて言ってくれた。






「おはよう、お母さん」





 今自分にできる、精一杯の母への感謝と愛を雛菊はその言葉に込めた。










いやぁ、みなさま大変おまたせしました。雛菊、猫になる がやっと終われました。死ぬかと思った。


 みなさま、コメント、感想、どうぞヨロシクです。


あと、応援してくださった人々、本当にありがとう。そしてこれからもヨロシクお願いします。


 では、28話で会いましょう〜ノシ

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