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第26話:夢は時に現実となる。そんなことあったら俺は死ぬ。

どうもぉ久です。

私は猫である。


  夏目漱石先生もこんな感じの出だしをした有名な小説を出版されていた。そして、今もなお親しまれている。


 そんなことは、もともとこの物語にはあまり関係をもたない。では、なぜ書いたのか?


     人生、意味を持たないことのほうが多いからだ!


 そして、今私が猫になっていることもそれほど意味を持っているとは思えない。


   

  前回、山内雛菊は高熱にうなされた後に目を覚ますと外界は巨大に・・いや身体が縮小し世間一般に猫とよばれる小形動物に身体が変形していたのだ!そのせいで、自転車におびえたり野良猫に襲われたりと苦労してなんとか赤城家のあるボロマンションに流れついた。


 そしてそこで、恥ずかしいことをあせられたあげくに、ラザニアを腹いっぱい食わされた。


        はぁ・・・


幾斗の妹である露子は幾斗が雛菊ねこに”パスタ”と言う名前をつけたと聞くと大反対した。

「兄さん、もっとかわいい名前はつけてあげれないんですか?女の子ですよ?」

幾斗は反対する妹に対して

「悪かったよ、じゃあカワイイやつを考えてやれよ」

と、あっさりと反対意見を聞き入れた。幾斗にとって、名前など、どーでもいいことなのだろう。

妹に対してはまったくもっておだやかな性格を維持しているようだ。


 夕刻に近づき、今日も1日の仕事を終えた太陽が西へと沈んでいく。空は真っ赤に染められ、美しい光を撒き散らしていたと思えば、いつのまにか青ざめ、暗い夜へと向かう準備にかかる。幾斗の住むボロ家は現在露子、幾斗、雛菊ねこの2人と1匹だけである。

リビングでグダグダと流れゆく猫との戯れの時間を過ごしたあと、幾斗はなにやら台所へ消えてしまった。その間、雛菊は露子につかまっていた。しかし、捕まっているとは言ってもそんなに悪い気分じゃない。なぜか知らないが、そこまで嫌でもないし頭をナゼナゼされるのや首元を触ってもらうとものすごく幸せなのだ…


 そうやってだんだん心までも猫になってしまったりして?


 ないない  ないと信じたい


 日はすっかりと落ち、明るい星達がキラキラと瞬きはじめる。青海町は大都市ではない・・大都市の近郊にある小規模工業工場群の工業団地が出来た事をきっかけに出来た町であり、人口もいたって普通である。

 あちらの家庭、こちらの家庭と蛍光灯の光が付きはじめて終いには空を覆う星よりもキラキラと輝いていた。


「おぉーい露子〜飯できたぞ!」

そう言いながらエプロンを纏った幾斗が台所から出てきた。


         に・・・・にあわない・・・


 雛菊は心底思った。エプロンにはかわいいひよこが書いてあったし、なにしろ幾斗のイメージとなにかずれてる気がするのである。

   だって、幾斗不良だよ?

 しかし、これも幾斗が普段雛菊達の前ではけして見せないすがたで、なんだかとても新鮮に思えた。

 幾斗はいつもこうやって飯を作っているという新たな発見


 秘密というか、なんと言うか こういうことを知る事で、少しだけ自分と幾斗の距離が縮まった気がする・・雛菊であった。


「えーと、お前はラザニア食ったからこれだけな」

と幾斗は雛菊ねこの前にタコの煮付けを少しだけ皿に盛って差し出した。とても良い匂いだ。

「にゃぁー」

とお礼を言うと早速食べてみる。手を使えないから食べにくいがラザニアほどではない。鋭い歯でタコを噛み切り、口の中でよく噛む

「うにゃぁ・・」

 お・・おいしい・・

柔らかくなるまで煮込んであるタコと、よくしみこんだ甘い醤油・・・まるで母の味のような懐かしくて香ばしい・・・そんな味がした

 

 幾斗くんは料理が上手なんだ・・・ という発見

 


ちゃぶ台の上に露子は煮付けやご飯、味噌汁などをならべていた。どれも大そう良い匂いをあたりに撒き散らしていた・・・全部幾斗の料理だ

はたからみるとビンボー臭そうにみえるが、そのへんにある安物の冷凍食品よりはよっぽど上手そうだ。


露子が晩飯を並べ終えると、幾斗が2人分の箸を持ってやって来た・・そして手を合わせて食事を開始する。


ガツガツ モグモグ


 幾斗も露子もガツガツと飯を食べる。相当お腹が減っていたようだ・・・2人とも食事のスピードは半端無くて、食事開始から5分もたたない内にお皿は空っぽになっていた。ついでに、雛菊ねこはまだ食い終わってない・・。



「露子、今日は早く寝ろよ!」

食器を片付けながら幾斗が露子に言った。

「今日、なにかありましたっけ?」

妹は不思議そうに問うと兄貴は

「今日は御袋が帰ってくるらしいから。俺はバイトなんだよ。すぐ帰ってこれると思うけど、もしかしたらお袋のほうが先かもしれないから寝てろよ」

幾斗がそこまで言うと露子は納得したようにうなずいて、自分の皿を幾斗に渡すと風呂場へと向かったようだ。


 

 御袋?お母さんのことだよね?帰ってくるから寝てろってどういうこと?


雛菊は不思議がった…実の母が帰ってくるのに寝てろって意味がわからない。もしそれが雛菊のことなら、母が帰ってくるとなると家を片付けて首を長くして待っていることであろう。不思議でしかたない。


 お母さんのこと嫌いなのかな?


幾斗はしばらくすると、家を出て行った。さっきの話からしてバイトだろう。露子は風呂場でシャワーを浴びているのか、ジャーと水の流れる音がする。


 しばらく雛菊はボケッとしていた・・


 幾斗の家は外から見ても中から見てもやっぱりボロいマンションだった。ところどころヒビが走り、土塗りの壁は永い年月をかけてかとても色褪せている…それでも汚いという感じはしない。たとえるなら、ボロボロで今にも倒れそうな竜骨をさらす巨船のような感じ…

 

  どことなく懐かしく、まるでおばあちゃんの家のようだ。


 おばあちゃんの家=竜骨をさらすボロ巨船かぁ?気にしたら負けってゲーム?(作者)


 数十分後に露子が風呂から上がってくる。いつもクルンとカールした髪は水を吸ってまっすぐになっており、額に髪がべっとりとくっついていた。

「いけません…もうこんな時間です。」

時計を見ると9時を過ぎていた。幾斗がバイトへ出発してから30分ほどの時間がすぎている…露子はなにやらイソイソと寝間着を着ると、雛菊ねこ

「一緒に寝ますか?」

と尋ねてくる。ニャァーぐらいしか言えない雛菊ねこはどうしようもなくニャァーと鳴くしかないのであった。

 返事をした猫を抱き上げ、露子はリビングの隣にある露子の部屋に連れて行かれた。女の子らしい部屋が、少々ボロイ和室に広がっていた。リビングと露子の部屋をは引き戸で結ばれている。


 露子はさっさと毛布を用意して、雛菊を抱いたままベットに転がった。ほのかに香るシャンプーの匂いが雛菊を包む。清潔そうな白いシーツの上に、露子はピンクのふかふかとした毛布を並べると雛菊をベットに下ろしてから自分もベットに横になった。


 かなり冬が接近しているので、露子にとって雛菊ねこはいいカイロであった。ふかふかだし、あったかいし・・・・

 

ベットに転がって数十分とたたない内に露子は寝息を立ててしまった。


 寝るのハヤっ!作者じゃ無理だこの速度!



よっぽど眠かったのか、よっぽどお母さんが嫌いなのか…



 雛菊は横で寝るまだ小学5年生の少女を少しの間見ていた。自分に引っ付いて寝る幼い小学生を見て、雛菊は妹が出来たような心境になっていた…

          

          なんか可愛いかも・・・・


 といっても今雛菊は猫なので露子のほうがでかいけど・・・・


窓からこもれる月明かり。静かな静かな夜・・・・電車の音や、露子のスースーという寝息、


 そんなかすかな音たちが聞こえるが、睡魔という魔王は雛菊を夢の世界へ引きずり下ろそうとする。雛菊は抵抗することもせず、夢という名の深い谷へと落ちていった。





 ここはどこだろう?

延々と続く純白の空間・・・亜空間とでも言うのか、真っ白な世界は水平線が見えるまで真っ白だ…空も床もすべてが真っ白で、自分の存在が分からなくなる。純粋な白…それは何故かとても不気味に思えた。何も無い…不安と寂しさがこみ上げてくる。


 ここはどこ?


人一倍寂しがりやな雛菊がその亜空間にたった1人で突っ立ていた。真っ白な世界に真っ白なロングT-シャツだけを着こんでいる。なにか異様な光景だ、白の空間に白の服、唯一違うといえば真っ茶色の長い髪、真っ黒な瞳だけであろう。


 ここはどこ?


ここには自分の場所はない…ここには安曇や美貴や武藤や友一や…そして幾斗もいない。母も父も先生達もいない。まるで孤独の化身のような場所だ。


 ここはどこ?


もしかしたら、あれこそ自分の居場所ではないのかもしれない。こここそが私の居場所なのかもしれない。



 そう思ったとたんに天上から、地平線から、大量の真っ赤な液体が流れ出してきた。床を紅に染めながら雛菊に迫って来る。真っ白だった世界はすぐにも真っ赤になり、赤い液体はすぐに雛菊の下へ届いた。形の良い素足が真っ赤に染まっていく…。液体は生温い、そして生臭い。まごうことなくそれは血だった。


人一倍怖がりな雛菊が叫んだ。



 

 










 ガチャ


ドアが開いた音がした。その音で現実世界へ雛菊は引きずり戻されていた。怖い夢を観たためか、心臓はいつもの倍以上の速度で脈をうっている。もし自分が今人間なら体中が汗でビッショリと濡れていたに違いない。しかし現在は猫なので体は濡れない…代わりに鼻がビショビショであった。

 ドアの音がしたのだから、誰かがやってきたのだ。幾斗が帰ってきたのか…または幾斗の母か…


少しドキッとした。幾斗の母。幾斗が妹である露子に早く寝ろといった元凶。すこし体が恐怖し、露子のベットから降りるとリビングに通じる引き戸へ向かい、そこで隙間から様子をうかがう…誰が帰ってきたのか?注意深くあたりを覗くが良く見えない…しかたなく、爪を出してから引き戸に引っ掛け、少しだけ引き戸を開けようとした。


 ガラァーー


引き戸を開かれた。無論、雛菊の力で開かれたのではなかった。あきらかに外部から強力な力で(猫にとっては)開けられたのだ。突然すぎる出来事に、高鳴っていた心臓は爆発しそうになる。

「なんだ、寝たんだと思ってた…」

聞き覚えのある声が頭上で響いた。まごうことない赤城幾斗であった。


 まん丸に目を見開き、今にも壊れそうなぐらい高速で心臓を鳴らす雌猫を幾斗は抱き上げるとリビングに連れて行った。


壊れそうなソファーに腰掛けると、雛菊ねこの体にノミ取りグシを入れる。なんだか心地がいい…


 ダメだ!心まで猫になりかけてる?


残念ながら?ノミは一匹も出てこなかった。幾斗はノミのいない元野良猫を珍しそうになでることになった。


 さっきとは全然違う意味でドキドキしていた。雛菊だって健全なる乙女である(多少ズレてるが)。好きな男に体を撫でられ飯をもらい・・抱きつかれと、ドキドキの連続なのは当然である。読者諸君だって、猫になって好きな男だか女だかに拾われあれやこれやされるのを想像すればドキドキするんじゃないですか?今夜のベットでの妄想材料になったろ?(気にしないで)


 

 つかのまのひと時…つかの間は永続きしないのが法則である。


ガチャ


また音が鳴った。古いドアが開く音が部屋中に響き渡る。幾斗の顔が一瞬硬直した。

 赤と黒の混ざった色の髪の毛を揺らしながら、その女性は入ってきた。赤黒い髪は腰まで伸びており、つややかであった。前髪は長く伸びてすっぽりと右目を隠している。美しい肩を大胆に露出させ、谷間が見えるような黒いドレス。手にはドレスと同じ生地で作られた長い手袋をしていた。綺麗な人だ…雛菊はそう思った。どことなく幾斗に似ている目、背丈は確実に雛菊より高く幾斗と同じぐらいある。甘い香りのするタバコを吹かしながらリビングに入ると彼女はこう言った。

「ただいま」

どことなく澄んだ声…それでも強大な威圧がある声だった。つまり怖い。幾斗は気に入らなさそうに彼女を見ると一言、言い放った。

「お袋…」

まぎれもない赤城ママであった。








***

 


「雛菊?大丈夫?」

夜中、雛菊のママさんは雛菊の額に手をのせる。まだ熱い。熱を測ってもかろうじて下がっているもののやはりまだ熱がある。まだ汗をだらだら流しながら寝ている愛娘にもう一度声をかけると、雛菊は苦しそうに一言言ったのであった。


「ニャー」


 まるで本物の猫のような鳴き声だった・・・・

















 


どうも、またまた続く!の形で終わってしまうことに深くお詫びいたします。もとより、猫になっちゃう非現実的なお話でしたが(コラ!まだ終わってないだろ)猫の視点で人を見るとは大変です。実際に経験したわけでもないですので、なぜだかベタに…いやもうベタベタになってしまいます。赤城ママの登場、次回はもっと怖い人が出てきたりします。前々回の予告で幾&雛の急展開なんていっときながら、こんなんでスミマセン【泣 もう、それしか言えません。やっぱ非現実的は難しい…もうメチャクチャ非現実的なら簡単なものの…現実に非現実が混ざったなんて難しいです。


 泣き言言ってるわけには行かないので、よければ次回にご期待ください。読んでくれた方には深く感謝します。コメント、感想、評価してくれた人、本当にありがとうございました。これからも、評価とかしてくれたらメッチャ嬉しいです。ヨロシクです。


では、長くなりましたがこれで…



 あっ!キャラ人気投票やってます。よかったら投票してみてください。では…

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