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エピローグ

エピローグ


この星を覆った光は、信じられない奇跡を起こした。

あるふたりを残して、すべてがもとに戻ったのだ。

自分の身体を信じられないように見る者、抱く者、涙する者たち。しかし一番多かったのは、笑顔だった。


ぼろぼろだった村を復興し、ようやく、以前の活気を取り戻したとき、僕のもとにハートネットからの手紙が届いた。

一週間後、結婚式を挙げるので参加してほしい、という内容だった。相手はバーで出会ったアリソンだった。

参加するにあたってひとつだけ危惧することがあった。だから僕は訊く。

「旅に出たいんだけど、大丈夫? ついでだから、お世話になったひとたちに挨拶もしたいんだ」

ええ、問題ないわ、と応える女性のお腹は、大きく膨らんでいた。


あれから数年経ったにも関わらず、サニエはまだ奮闘していた。猫の手も借りたい状況なのに、僕たちが来たと聞くと駆けつけてくれた。

汗とほこりまみれなのに、以前よりも美しかった。ここに住めば? ゆっくりしていってよ! と言われたが、丁重に断り、妻が落ち着いたら手伝いに来ます、と約束して僕たちはその場をあとにした。


パプケウィッツは普通の少年の笑顔、笑い声、行動を取るようになっていた。本来あるべき姿、それを見ていると、僕は妻のお腹の中にいる子も、こうなってほしいと思った。


ファイルーザは自ら笑顔を見せ、エリシャはウーフとともに占い業を再開し、クリフとユマは海のそばを駆け回り、ソレンとストックエイジは腕を上げるために旅立ち、ニールは隠居し、スタークは弟のケビンとひと時も離れず、ディミートラは能力開発をつづけ、グリニコは学校を開き、そして、ゴーゴリとマシアスは……。


すべてが光に包まれたあと、世界樹のもとで息を吹き返した者たちは、それぞれ故郷に帰って行ったのだけど、僕だけはしばらくその場にとどまった。


ローランドとレオノールの姿を探したのだ。しかし、どれだけ待っても、彼らを見つけ出すことはできなかった。


僕は気づかないうちに、ゴーゴリを訪ねていた。そこにローランドたちがいるのではないか、そう思ったからだ。元マシアス自治領。ゴーゴリは城の地下牢にいた。顔色はすぐれない。

「どうしたのですか?」

ゴーゴリは苦しそうに答える。

「マシアスは、マシアスと戦っている」

意味がわからない。牢の中を覗く。するとどうだ、ゴーゴリの言葉は正しいのだと知った。

「マシアスは復活したあとも、その性格は情けないままだった。正直、あやつは最強じゃ。つまり最強の者を倒すことができるのは、最強の男、というわけじゃろう」

殺しても殺しても、次々と復活するマシアス。この戦いはいつまで続くのだろうか。そして、この偉大なる老人を、いつ、笑顔に戻せるのだろうか。



息子はすくすくと育ち、僕たちの戦いに興味を持ち始めたころだった。

村長の診療をしているとき、妻が駆けつけてきた。その表情に一瞬、事件でも起こったのか、といぶかしんだけれど、次の言葉でそれは覆された。


「ふたりの旅人が、あなたを訪ねてきたの。背の高い男性とあまりにも美しい女性。もしかして……」


僕は村長に断って、腰を上げた。


最後まで読んでくれて、ありがとうございます。次回作では、もっともっと楽しんでもらえるよう、がんばります。

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