最終話 第一章 ストックエイジ その2
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ストックエイジは先の大戦では、ニール軍と戦う反乱軍の勇者だった。
幼い頃から剣の腕だけを磨いてきて、いつしか彼は、剣神ストックと呼ばれていた。
敗北を知らず、自分より強い者を探すようになっていた。
そんな時、彼の町に侵攻してきたのは、近衛騎士隊だった。指揮するのはソレン。
防衛兵として、ストックエイジは近衛騎士隊と互角以上にわたりあった。ストックエイジの武勇を訊きつけたソレンは、彼の元へと向かった。
「名に聞く剣神とはお前のことだな? 俺と一騎討ちをしてもらいたい。お前が勝てば町を滅ぼさないでおこう。もし俺が勝てばお前の力を俺にささげろ。俺の名はソレン。剣の腕ひとつで近衛騎士の隊長の座を手に入れたものだ」
断る理由があろうか。ストックエイジは嬉々としてそれを承諾した。
近衛騎士隊、それに防衛兵も剣をおさめ、二人の戦いに眼を奪われた。
それは壮絶を極めた。
近衛騎士隊はそのひとりひとりの力が、並みの戦士百人に匹敵するという。その中で隊長を務めるソレンの実力は計り知れない。
いくら武勇伝を轟かせたツワモノであろうと、ソレンとの一騎討ちで勝てた者はいない。剣神と呼ばれるストックエイジでも、近衛騎士隊隊長を倒すことは出来ない。誰もがソレンの圧倒的有利を疑いはしなかった。
ところが戦いは互角。それもソレンが手を抜いているのではない。全力で……だ。
繰り出される剣激はうなりを上げ、交差された剣は雷鳴を轟かせる。
「お前の実力はこんなものか? 剣神」
「ふふ。近衛騎士隊隊長というのも、名ばかりだな」
どれくらい剣劇が繰り返されただろうか。空も陰りを見せたころ、一進一退の攻防にも、終焉を迎えるときがやってきた。
ソレンの突き出した剣を、払おうとした、その時、ストックエイジの剣は鈍い音と共に根元から粉々に砕けたのだ。
ソレンの剣は迷うことなく、ストックエイジの右眼を刺し貫いた。
だが、ソレンはそこで剣を止めた。
「何のまねだ? 憐れみなどいらん」
「そうじゃあない。俺はお前の力が欲しいだけだ。約束しただろう? 今このとき、剣神ストックエイジは死んだ。これからは、近衛騎士隊副隊長ストックエイジとして俺に剣をささげろ」
「確かに約束した。しかし、俺の夢は剣を極めること。お前の元につくことによって、夢をあきらめなければならないとしたら、俺は信念を曲げてでも、お前の背中に剣を振り下ろすぞ」
「剣を極める……か。近衛騎士とは主に王城を守護することだが、俺はそれを覆した。俺たちは常に前線へ赴き、より強敵を相手にする。あちこちから文句も出たさ。しかし、この圧倒的強さを敵に見せつけ、恐れおののかせ、俺たちにたてつこうと思う気持ちを無に返す。それはすなわち、王を守ることに直接つながっている。今までそうしてきた。結果を残し、周囲を黙らせた。そして、これからもそれは変わらない。騎兵隊? 切り込み隊? そんなヤツラは関係ない。前線に赴くのは俺たち近衛騎士隊だ。どうだ? 行く先々で、これまで見たこともない手だれと相対する、俺の近衛騎士隊に入ってはくれないか?」
この男は……本気で云っているのか? ストックエイジは考えた。そして、決断した。
「わかりました。我が命、近衛騎士隊隊長、ソレン様にお預け致します」
こうして、世界最強剣士のコンビが誕生した。
つづく




