第四話 古の国でのカウントダウン 残り五十分
残り五十分
パプケウィッツは心の底から悔しがっているようた。
僕たちだけならいざ知らず、フードの男たちと同時には相手に出来なかった自分の無力さに歯がゆさを感じているようだ。
パプケウィッツが鎧の留め具を緩めたところへ、フードの男たちの攻撃が集中した。ピンポイントの正確性、たまったものではない。
しかし傍観している場合ではなかった。亡霊騎士団の攻撃は僕たちにも迫ってきたのだ。
金属の針が一斉に飛んでくる。
ゴーゴリは二本の鞭を操り、すべての針を打ち落とす。
ハートネットは大剣を前に持ち上げて身を守り、サニエは向かってくる針を、身をひるがえしてすべて紙一重でかわした。
数瞬のうちに、何本の針が飛び交っただろう。幸いにも、僕への攻撃はゴーゴリが排除してくれた。
ふいに、彼らの攻撃がやんだ。
パプケウィッツはわき腹に傷を負ったようで、そこを抑えながら頭上を仰いだ。
僕たちもフードの男たちを見上げた。
「どうした……と、いうんだ?」
僕の隣でハートネットが呟いた。
「誰か、来たようです」
左後方からサニエの声がした。
その時、僕の頬に一粒の雨が当たった。
それを合図のように、豪雨が始まった。立ち昇る炎が雨雲を呼んだようだ。
閉ざされた視界の中、亡霊のように浮かび上がる人影があった。
フードの男たちも、その人物を見つめている。
人影はゆっくりと近づいてきた。
足取りは重く、やっとのことで歩を進めているようにも見える。
雨はさらに激しくなる。
雨に負けじと眼をこらしていると、人影の正体がわかった。と、同時に僕とサニエの叫び声が重なった。
「師匠!」
「グリニコさん!」
「み、みんな、作戦は失敗だ――に、逃げろ。逃げろー!」
師匠には左腕がなかった。
僕と同じ能力で止血はしているが、失った血は戻ってこない。青白い顔が貧血を起こしていることを物語っている。早く輸血しなければ危ない。
「くっくっく。我々を脅かすことは不可能。これで茶番は終わりです。あなた様たちの死を嘆き哀しむ者の姿が眼に浮かびます。もう……すべてが、遅いのです」
フードの男たちはグリニコを見ていたのではない。
彼の後ろにいた人物、
「お待ちしておりました、我らが王」
そう、マシアスを見ていたのだ。
つづく




