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第四話 古の国でのカウントダウン 残り一時間三十五分

 残り一時間三十五分


 僕の腕が小刻みに震えていた。

 パプケウィッツの姿を確認した途端、いいようのしれない電流が身体中を駆け巡った。

 この震えが恐怖なのか武者震いなのかは自分にもわからない。しかし、何かしらの期待感があるのは確かだった。

ここでなら、みんなといっしょなら、ヤツを倒せる。野放しにしてはならない。あの惨劇を二度と繰り返してはならない。

人類に害をなすパプケウィッツを、自由にしてはならない。

「あいつを……知っているのか?」

 ハートネットが疑問を投げてよこした。

「気が狂った危険な相手です。西の大陸で、彼の凶行を何とか食い止めたのですが、今回も防ぎきれるかはわかりません。それほど、危険な男です」

「だけど、お前はうれしそうだな」

「え?」

 僕は素っ頓狂な声を出してしまった。

「なんだかローランドを見ているようだよ」

 その時、僕たちの元にサニエとゴーゴリが駆け寄ってきた。

 ゴーゴリが息を整えてから云った。

「この混乱に乗じて作戦を決行するそうじゃ。グリニコは他の者を誘導して後からわしらと合流すると云っておった。わしらはこのまま城へ向かう。今なら手薄なはずじゃ。このチャンスを逃す手はない」

「気をつけなければならないのが、マシアスを守護する亡霊騎士団よ。彼らの能力は未知なもの。くれぐれも注意するように」

 と、サニエも口を入れた。

「亡霊騎士団……」

「そうじゃ。あいつらは神出鬼没、一瞬のうちに違う場所へ移動する。無防備な背後から攻撃されて何人の者があの世へ行ったか」

 ゴーゴリは顔を曇らせた。

「じゃあ、あいつもあの世行きだな」

 ハートネットが暗黒騎士を眼で案内した。

 サニエとゴーゴリが視線の先を見る。

「それはどうかわからないよ。暗黒騎士パプケウィッツは、本当に恐ろしい」

「パプケウィッツ?」

 僕の言葉にサニエが返した。僕はうなずき、そのまま言葉を続けた。

「ちょっとした縁で彼のことを知っています。迂回している暇はない。城へ向かうなら彼のそばを通らなくてはなりません。みなさん、覚悟しておいて下さい」

 僕の言葉で、その場の空気が変わるのがわかった。

「近づくと、きっと巻き込まれます」

「しかし、時間がありません。このまま突破します。だけどくれぐれも忘れないように、今の任務は城へ向かうこと、無駄な戦いは避けて、先を急ぎます」

おうよ、と応えるハートネットの言葉を聞き、僕は言い知れぬ不安にかられた。


つづく

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