表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/68

第四話 古の国でのカウントダウン 残り一時間五十分

 残り一時間五十分


町はまるで、体内から排除するかのように炎の渦を吐き出していた。赤い柱はゴオゴオと雄たけびを上げて勢いづいている。

 町の人々は火を消すために走り回っていた。その状況は作戦通り。しかし、討ち合わせていた時間がずれている。

「これは、どういうことじゃ……」

 ゴーゴリは赤黒い炎を見上げながら呟いた。

答えられるはずもない。何故なら、僕もこのような状況を想定していなかったのだがら。

作戦が漏れる可能性を考えていなかった僕らのミスだ。

 呆然と立ち尽くしている僕たちの元へ、若者が一人駆け寄ってきた。

「いったいどうなっているんですか? 作戦決行までまだ時間があるはずじゃ……」

 若者は反乱軍の一員のようだ。

「わしにもわからん。このまま作戦を実行する。みんなにもそう伝えろ!」

 ゴーゴリは立ち去っていく若者を見送ると、険しい表情になって僕たちに指示をした。

「わしはリーダーのところへ行ってみる。あなた方二人はここで待っていてくれ。わしが真相を確かめてくる。それと、この騒ぎで茶色のフードをかぶった男たちが現れるはずじゃ。決して、やつらに手を出してはならない。わかったな」

 そう云うと、ゴーゴリは人ごみを掻き分け、路地裏へと駆けて行った。

 茶色いフードの男たち……。

「何か……嫌な予感がするな」

 僕はハートネットの呟きにうなずいた。

 辺りを見渡すと何人かのフードをかぶった男たちがちらほらと見える。ゴーゴリが云った者たちだろう。

 三階建ての屋上、人ごみの中、彼らのいる空間だけ時間が止まっているかのように静かだ。

 ぼんやりとした輪郭を持って、しかし確かにそこに存在している。

ただ者ではない。遠くから眺めているだけで、警戒をよぶ警報が心に鳴り響く。

 彼らは誰かを探しているように見えた。おそらく放火の犯人。

やつらは、噂に聞く亡霊騎士団だろう。マシアス直属の騎士団で、一度狙われたら最後、生き残った者はいないという。僕らの敵はマシアスとその騎士団。僕は彼らの容姿を、動きを、能力を、決して見逃さないようにと観察した。

そうしなければ、簡単に僕らはつぶされる。それほど、恐ろしい相手を敵にまわしているのだ。

 やがて町の人々による消火活動が始まった。

 火は最初に見たころより広がっている。鎮火するのはかなりの時間が必要だろう。しかし、町の人々は負けじと井戸から汲んだ水をリレー形式で運んでいる。それでも火の勢いの方が早い。

 僕は手を貸してやりたい気持ちを抑えた。

ここでも無力感をおぼえたが、道を誤るわけにはいかない。

 ふと、フードの男たちがある一点を凝視していることに気づいた。

 彼らの視線を追っていく。しかし、人ごみが邪魔で誰を見ているのかわからない。

 必死でその人物を見出そうと眼を凝らしていると、ハートネットが声を殺して呟いた。

「あいつは……何だ?」

 ハートネットとフードの男たちの視線が交差する場所を見ると、僕の心臓が早鐘を打つように加速した。

 その場所は禍禍しく空気が淀んでいた。

 その中心に一人の男が立っている。

そのとき僕は呼吸を忘れた。

 その姿を見た僕は、一人の男の名を口にしていた。

「暗黒騎士、パプケウィッツ!」


つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ