男女共学のバイビー97
出口はありませんとヒロが言った。
雅が震えおののき言う。
「私の配下の者達もお兄さんの配下の者達もこの精神病に罹患発狂、恐怖の妄想にかられて全滅したわ。この病気は人が孤立した時心配事や不安に巣食って、それを増殖蝕み、いたたまれない不安に陥れ発狂させ、自殺に至らせるのよ。薬物療法である程度緩和は出来ても限度があり、やがて死に至る病なのよ。人は生活の中で必ず孤立して寂しさを感じる時があるし、社会には虐めや虐待、心を不安にさせる悩みやストレス、心配事などどんな人にもあるし、不安材料は山ほどあるから、菌やウイルスと違って実体も無く、防ぎようが無い恐ろしい伝染病である可能性があるのよ」
加奈が反論する。
「でもデータが出揃っていない以上全て可能性でしかないじゃありませんか?」
若頭が口を挟む。
「逆に言えばデータが出揃った時点で伝染病である事を認定せざるを得ないだろう。もっとも医療機関や行政はそれを伝染病とは認可しないだろうがな。それよりもヒロ、お前はどのようにしてこの伝染病的集団自殺を惹起したのだ。それを聞かせてくれないか?」
ヒロが不服そうな顔付きをして、咳ばらいしてから答えた。
「入口に入る手続きとしては、濃霧の高原に入りその恐怖を押し殺して追っ手を巻き、高原から湖畔への道程を下り、この別荘に入るだけです」
若頭が話しを吟味してから再度尋ねる。
「出口としての手続きは無いのか?」
ヒロが即答する。
「ありません」




