男女共学のバイビー85
血糊や鼻をつく死臭、荷物、死体が一体も無いのを不審がり、ナトリウム灯の下、その旨を松田は雅に報告した
敵味方の区別なく、幾多もの同時多発的に上がるくぐもるような銃声や、悲痛な断末魔の絶叫をかい潜り、捜索隊救援隊共にほぼ全滅、濃霧が醸し出す不気味な静寂を、深夜の山林が取り戻した頃、松田は無残に破壊されたバンガローに辿り着き、血糊や鼻をつく死臭、荷物、死体が一体も無いのを不審がり、ナトリウム灯の下、その旨を雅に報告した。
雅が応答する。
「そう、敵味方関係なく、連鎖的な集団自殺をするようにほぼ全員自決、全滅したのね?」
「押忍」
「それにしても異様な話しよね。死体は捜索隊が迅速に片付けたにしても、死臭がなく血糊や荷物が見当たらないというのは変ね?」
「押忍」
雅が息をつき続ける。
「ならば松田、状況から判断して周辺に自殺した者の死体がある筈だから、それを捜して頂戴。濃霧の中手探りの作業になると思うけれども、必ず有るはずの物証としての死体の有無を確かめて頂戴」
「押忍」
「そしてそれを確認したら取り急ぎこちらに戻って来て頂戴。私もヒロの事が心配で不安にいたたまれなく、発狂しそうなのよ。松田、だから取り急ぎ確認を済ましたら、私の元に戻って来て頂戴。頼んだわよ。松田?!」
「押忍」




