男女共学のバイビー84
私は生還の目に希望を託し、伸るか反るかの賭けに全身全霊を傾けるわと、加奈は言った。
加奈が全否定する。
「君の言っている事は全て私を陥れる為の推論、可能性論、悲観論でしかないじゃない。だから逆に言えば朝になり霧が晴れていれば、私は簡単に生還出来る楽観的な目も当然あるじゃない。私はこんな所で犬死にするのは真っ平御免なの。裏表どんな目が出るかは一切分からないけれども、私は一点生還のチャンスに全てを賭けるわ」
ヒロが恭しく相槌を打ち答える。
「それは構いません。加奈さんが勇気を以ってこの別荘を出るのがパズルの集団自殺の加速度的増殖を惹起し、そのパワーを増幅するものならば、加奈さんは自分の失態を歎きながら自滅し、自分も後を追いますから、何も心配はしていません」
己を奮い起こす為に自分自身に言い聞かせるように加奈が言う。
「この自殺願望はいたたまれない不安に押し潰され絶望し発狂したらそれでお終いなのよ。だから私は何を言われようが、邪魔立てをされようが絶対に希望を捨てないわ。生還すると言う希望に向けて全身全霊を傾けるのみよ」
ヒロが受けて立つぞと言わんばかりに加奈を鋭く睨みつけ答える。
「でも加奈さんはいたたまれない不安におののき、早く自殺願望に身を委ね楽になりたいと心の底から思っているじゃありませんか。全身を震わす恐怖感から一刻も早く逃避したいと言う気持ちが自分の方にダイレクトに伝わって来ますよ」
加奈が首を振り頑なに答える。
「これはいたたまれない不安にかられ、恐怖に震えているのではなく、逆に突発的に自殺する事を恐れる震え、勇躍希望を託し生還の賭けに臨む時の武者震いよ」




