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男女共学のバイビー61
ただ込み上げて来る自殺願望に翻弄され戸惑っている自分がいるのを、若頭は抑えがたく本能的に感じ取っていた。
若頭の斜め後ろで救援隊のメンバーがいたたまれず狂おしくナイフで喉元を突き自決、悲痛な断末魔の絶叫が上がった。
若頭は濃霧の冷たさに一つ身震いし、ほふくしたまま固唾を飲み、濃霧を掻き分けるように、そのメンバーを助命すべく手探りしつつ近寄ると、そのメンバーの遺体は消え失せていて、あろう事かそのメンバーの不気味な断末魔の絶叫を象った黒い影が濃霧にくっきりと浮かんでいるのを感じ取り、濃霧がその黒い影を生き物のように徐々に飲み込んで行き、完全に消えて無くなった。
そんな超現実的な光景を目の当たりにして若頭は戦慄驚愕し眼を見開き、背筋に悪寒が走るのを覚えた。
敵味方関係なく濃霧の中、無差別に悲痛な自殺の連鎖が続いている。
得体の知れない敵の脅威を前にして、若頭は濃霧を凝視し、おののきながら何故と自問自答するが。
何も分からない。
ただ込み上げて来る自殺願望に翻弄され戸惑っている自分がいるのを、若頭は本能的に感じ取っていた。




