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男女共学のバイビー50
愚直で寡黙な松田は密かに雅を慕っている。
フォグランプを付けたマイクロバスが濃霧の中、ゆっくりと峠道を走って行く。
窓越しに深い霧を見詰めながら、本能的なおののきと戦慄を覚えている松田は、仲間や腹違いの弟を何とか救助しようと、心の底から考えている。
松田は密かに雅を慕っている。
だが雅は自分の腹違いの弟をこよなく愛している。
松田はその複雑な相関関係に人知れず苦悩しているが、極端な程に寡黙な松田は無論そんな事、口には出さず己の胸に秘めている。
雅が「松田、私の為に死になさい」と言われれば、松田は迷う事なく死ぬ男だ。
実直で裏の無い愚かしくも真っ直ぐな心。
雅への恋心にも愚直な松田はそのまま雅のボディーガード、逆らう事の絶対に無い忠実な犬である事に疑問符を抱かない。
そして松田は自分の雅への思慕が成就するとは露程にも考えていない。
雅と一緒にいられる事だけで無上の喜びを感じている。
それが松田だ。




