男女共学のバイビー33
君の死には人を巻き込む権利は無いのよ。死はその人の死であり、他人と共有するものじゃなく、巻き込むのなんて、いい迷惑じゃない。そう思わないと加奈がヒロを詰った。
リビングは広くて天井も高く開放感があって暖房も効いているのだが、逆にその広さが人気の無いうそ寒さを感じさせる構造となっている。
加奈が言う。
「その消息を絶った客とは相思相愛にはなれなかったの?」
ヒロが哀しそうに瞼を伏せ答える。
「旦那さんもいた人ですからね。一緒に死ぬ事には無理が有りましたね」
「心中を回避して、家族の本に帰るつもりが、捕まって消息不明になったんだ。可哀相に」
言葉を詰まらせつつヒロが答える。
「そうなりますね…」
敵意を込めて加奈がヒロを責める。
「君の死にたい願望が大勢の人の命をそうやって巻き込むのならば、君の寂しさは殺人凶器なのだし、君にはそんな権利絶対に無いのだから、巻き込むのを止めて猛反省して、やはり君は一人でひっそりと死ぬべきだと私は思うわ」
ヒロが恭しく頷き答える。
「そう思い一人で何度も死のうとしたのですが、どうしても寂しくて死に切れないのですよ。自分は駄目な男ですから」
加奈がもう一度念を押す。
「君の死には人を巻き込む権利は無いのよ。死はその人の死であり、他人と共有するものじゃなく、巻き込むのなんて、いい迷惑じゃない。そう思わない」




