男女共学のバイビー32
消息を絶ちましたと、ヒロは言った。
加奈が蔑むような目付きをして尋ねる。
「あなた日本人なの?」
「いえ、自分と若頭の兄は在日韓国人ですね。会った事はありませんが、もう一人の兄は韓国と日本人の合いの子です。軽蔑しますか?」
加奈がどうでもいいという顔付きをしてから答える。
「別にそんなのはどうでもいいけれども、随分複雑な家庭だなと思って。それで君は誰に育てられたの?」
「祖母ですね。その祖母も今はもう亡くなっていますが」
「それじゃ君も以前はやくざ屋さんだったわけだ?」
ヒロが肯定する。
「そうですね、準構成員でした。その時に客と不始末を起こして、組の金をつかい込んでしまい、捕まってけじめをつけるところを兄に助けられて、それ以来ずっと組に百倍付けで金を返し、今に至っているわけです」
加奈がしきりに頷いてから尋ねる。
「それじゃ、君は今回、こういう騒動を起こしたのは二回目で、助けてくれたお兄さんを裏切った訳だ?」
罪悪感にかしづくように相槌を打ちヒロが言った。
「そうなりますね」
「以前君と一緒に逃げた客はどうなったの?」
息を辛そうに吐き出してからヒロが答えた。
「消息を絶ちました」




