男女共学のバイビー30
だから自分は現実世界で、逃避としての現実を直視して、最愛の人と心中を図りたかったのですよと、ヒロは言った。
加奈が厭味っぽい口調で尋ねる。
「それじゃ尋ねるけれど、雅会長さんはあなたに御執心で、あなたを最愛の男だと思って追いかけて来ているじゃない。あなたもまんざらでもなくお世話になっているのだし、それは相思相愛では無いの?」
ヒロがきっぱりと答える。
「相思相愛ではありませんね。むしろ自分は雅会長に金で買われた奴隷ですから。そんな関係に愛なんか感じた事はありません」
「雅会長さんの方はあなたに夢中なのに、それじゃ雅会長さんが可哀相じゃない?」
「可哀相なのは自分ですよ。雅会長との売買契約がうとましくて、自分は心中を考えたのですから」
加奈がせせら笑う。
「でもいくら愛がなくたって、君がしている事は現実逃避の何物でも無いじゃない。違うかしら?」
「現実に求める物が何も無ければ、現実逃避死にたい願望は自然現象だと自分は思いますが」
「死んだって君が求める愛は得られないと思うけれどもね?」
ヒロがため息をつき答えた。
「だから自分は現実世界で、逃避としての現実を直視して、最愛の人と心中を図りたかったのですよ」




