男女共学のバイビー3
たかがホスト遊び、勝ち抜いたとて殺される事はあるまいと、加奈は考えた。
動揺し瞬時躊躇ったが、加奈は気を取り直し機転を利かせて状況を分析計算しながら、ホストクラブに向かって行く。
車椅子に乗った中年女は自分に嫉妬して、脅しを掛けて来たのだと加奈は判断した。
ならばと加奈は考える。
あの中年女はヒロの上客であり、ヒロの細かい心の動きを的確に読みつつ、そこにのっぴきならない恋の予感と言うか芽を見出だし、嫉妬して、自分の素性を探り、正面切って深入りするなと警告して来たのだ。
そして、この事態は裏返せばヒロが商売気抜きに自分を気にいった事の証明となるわけだと加奈は計算する。
臆病な己を打ち消すように、加奈はしたたかに計算を為して行く。
この事態を逆手に取って弱い女を演じ、ヒロに庇護を求め、もっとヒロの気を吸引強く引き付け、その恋心を手の平の上で転がし、弄んでから残酷に棄ててやろうと加奈は考える。
殺すわよと言う、中年女の脅し文句に挑戦するように加奈は頬にしたたかな笑みを浮かべ考える。
これはスリリングな恋愛ゲーム、言わば女の闘いであり、闘いならば道は一つ、勝つしかないと加奈は己を奮い立たせる。
そして若い加奈は傲慢不遜に考える。
たかがホスト遊び、勝ち抜いたとて殺される事はあるまいと。