男女共学のバイビー29
金なんかいくら有ったて、愛の無い人生は寂しく不毛で無意味ですねと、ヒロはしみじみと言った。
ヒロが愁いを湛えて言う。
「自分は現実世界を生きて来て何も良い事が有りませんでした。ホストとしてお客さんに接し真心を込めて恋愛をしても、たかがホストと馬鹿にされ、真心で応えてくれる人は一人としていませんでした。心はいつも寂しく虚ろで、死んでいたのも同然です。だから自分は最愛の人と相思相愛になり、死ぬ事を夢見たのです。でもとうとう自分には相思相愛の人は現れませんでした。寂しく一人で死んで行くのが自分の人生の終着駅なのかもしれませんが、本当に寂しくて寂しくて仕方ありません。それだけです」
加奈が冷ややかに言う。
「脅しの次は泣き落とし。でも私はこの別荘の正体を知らないから、それを知りたいだけで、あなたの身の上話しなんか聞いても同情なんかしないわよ。そのつもりでいてね」
「いや、自分は同情を引こうと思って言っているのではありません。ところで加奈さん、本気で人を好きになった事って有りますか?」
加奈が答える。
「それは有るわよ。孕まされて中絶、こっぴどく棄てられちゃってさ。だから私は男なんかまるで信用していないの。男は単なる遊び相手。それ以上のものでもなければ、それ以下のものでも無いわ。遊び相手となんか死んだって寂しいのは変わらないしね。そこまで私は馬鹿じゃないし」
ヒロがしきりに頷き言った。
「それも又寂しい話しですね。自分は親にも兄弟にも縁が薄くて愛情を注いだ事も、受けた事もなく、まともな恋愛さえした試しが無いし、愛にはぐれっぱなしで、いつも寂しく一人ぼっちですよ。金なんかいくら有ったて、愛が無い人生は無意味ですね。つくづくそう思いますよ」




