男女共学のバイビー27
つまり私は過去と未来に同時にタイムスリップしたのと、加奈は不安にかられ喚いた。
加奈が電話をまさぐり、怪訝な顔をして言う。
「何故、時計が二時間程進んでいるわ。それに電話が繋がらない」
ヒロが同じように電話を取り出して、まさぐり言った。
「自分のも繋がりません。それに時間は二時間程遅れていますね」
加奈が不安にかられおののき言った。
「普通の別荘、普通の室内、普通の家具が揃っているのに、ここは私が住む現実世界じゃないの。ここは何処なの?」
生唾を飲みヒロが答える。
「進んだ時間と遅れた時間が同一となり相互に時間軸を歪め、その相互無関係の矛盾が未知なる互換性を作り、この世界を構成して、絶対の孤立感と不安を形作り集団自殺を招く起爆剤となっているのかもしれませんね」
加奈が自分を指差し言った。
「つまり私は過去と未来に同時にタイムスリップしたの?」
ヒロが頷く。
「理屈ではそうなりますね。この時空間の歪みにいるのは自分と加奈さんだけと言うことです。その孤立感といたたまれない不安が集団自殺を引き起こす起爆剤となっていると推測出来ますね」
加奈がかぶりを激しく振り言った。
「ちょっと待ってよ。それじゃ私は生きているの。それとも死んでいるの。どちらなのよ?」
ヒロが即答する。
「そのどちらでも無いと思います。加奈さん、寂しく不安ですか?」
加奈が声を限りに喚く。
「そんなの不安に決まっているじゃないの。この別荘は時間の化け物なの。誰かが入って来て私達を見たらどう見えるのかしら?」
ヒロが答える。
「多分眼に映らないと思います。だから僕らは安全なのですよ、きっと」
加奈がおののきもう一度喚く。
「この別荘は在るの無いの、どっちなの。この狂った世界から出るには私はどうすればいいのさ、教えてよ?!」
ヒロが物静かな口調で答える。
「この世界は限りなく時間軸が歪み無限大に隔絶されたカオスで、在るが無く、無いが在るという世界ですが、手続きを踏んだ者が出るのは簡単だと思います」
加奈が顔をしかめて質問する。
「外に出ればいいの?」
ヒロが相槌を打ち答えた。
「そうです」




