男女共学のバイビー23
これは他言無用だが、あのガキは若頭の弟なんだと、頭は言った。
総勢十六名の中から二人が名指しされ、濃霧立ち込める外の見張り役となり、他の者は銘々、草色の戦闘服を着たまま武器を傍らに置いて胡座をかき、ザックから食料や水を取り出して補給し、息をついた。
そこで当然の流れとして、頭を議長と成し、自然発生的に建て前を排した本音を言い合うミーティングが為されて行く。
手前のスキンヘッドのメンバーが挙手して、それを頭が「よし、林、無礼講だ、忌憚無い意見を言ってみてくれ」と指差し、林が座ったまま自分の意見を述べ立てて行く。
「本音を言えば自分は今直ぐにでも捜索を中止し、敵とは手打ちをして下山、本部に帰還するべきだと思います」
それに対して頭が自分の意見を述べる。
「皆も本音の部分で林と気持ちは同じだと俺は思う。あんなガキ一人の為に命を懸けるのなんて割に合わないしな。だが残念ながら、現時点でそれは出来ない不可能な事だと俺は思うんだ」
林がもう一度挙手して尋ねる。
「頭、それは何故ですか?」
立ったまま頭が腕を組み答える。
「まずここで退却すれば、若頭の面子が立たず、俺達全員に厳しい処分が為されるだろう事が予測出来る」
林の隣にいる今井というメンバーが軽く挙手し小声で尋ねる。
「自分はこのバンガローにダイナマイトを投げ込まれ、全員木っ端みじんになる前に、霧に紛れて移動一旦下山して、態勢を立て直すべきだと思います。それに加えて厳しい処分というのはどんな処分でしょうか。両方共答えて下さい?」
頭が頷き答える。
「厳しい処分と言うのは良くてエンコ詰めした上で除名、悪くすれば破門という事だ。それと現時点でここから出るのは、殺される前に遭難する恐れが有り危険過ぎるから出来ない。それに加えて、敵は相当数の犠牲者を出しており、それに見合った犠牲者がこちらに出ていない限り、手打ちは有り得ないという事だ」
今井の後ろにいる後藤というメンバーが挙手して質問をする。
「しかし若頭はこのガキの遺体さえ先手で回収しろと厳命していますが、何故これ程迄に若頭はこのガキに肝煎りこだわるのですか?」
頭が一息深呼吸をしてから答える。
「これは他言無用だが、あのガキは若頭の弟なんだ」




