男女共学のバイビー2
ヒロが勤めるホストクラブに赴く加奈の前に、突然二メートルを超える大男が立ちはだかった。
ホストクラブ通いを始めて半年、ようやく騙しがいのあるホストが見つかったと加奈は思った。
加奈は裕福な家庭に育った、女子大生だ。
高校の時、好きになった男子学生に弄ばれ堕胎までさせられ、こっぴどく棄てられてからと言うものまともな恋愛が出来なくなってしまった。
大学生になっても恋愛など一切せず、つまらない学校通いを見限って、風俗店やガールズバーで適当に働き、遊ぶ日々が続いている。
両親は仕事にかまけて、遊び歩く加奈とは会話さえ交わさず、遊興費を無心されれば、それがどんな大金であろうが惜しみ無く投げ、仕事が忙しいと逃げてしまう。
そんな今風の恋愛出来ない症候群、退屈を持て余している加奈は、いつしか金に任せてホストを逆に騙し捨て去る事の悦びを覚え、ヒロに出会い、ヒロをどのように騙そうかと考えながら、ヒロが勤めるホストクラブに向かうべく繁華街を歩く途中、交差点で足を止めた時、いきなり二メートルを超える車椅子を押した大男が唐突に立ちはだかった。
その大男は加奈を大上段からさんぱく眼の眼で睨みつけ、加奈が萎縮したところで、車椅子に乗っている中年の婦人が大声で制止した。
「松田、止めなさい。話は私がしますから!」
松田と呼ばれた大男は命令に従い加奈から視線を外し、うなだれかしづくような形で車椅子を加奈の方に向け、今度は中年の婦人が驚いている加奈を血走った眼で睨み据え言い放った。
「あなた加奈さんね。ならば加奈さん、ヒロは私の男なの。横取りしたら、この松田があなたを殺すわよ。この意味分かるわね?」
怯んだが気の強い加奈は言い返した。
「それはどういう意味ですか。私にヒロさんを諦めろと言う事ですか?」
車椅子に乗った婦人が恭しく頷き答えた。
「その通り、諦めて頂戴。私はこの通り歩けない身だけれども、一声かければ屈強の男達が千人でも動く力を持っているの。あなたが私の忠告に逆らえば、あなたは死ぬわ。それを肝に銘じなさい」