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男女共学のバイビー192
松田はわざと尻餅をつき転倒して、走るヒロをやり過ごした。
松田の脳裡にパズルの集団自殺の一コマが雅の墓標となり黒く暗転するイメージが浮かび、そのコマが「松田」と言う声を上げ、松田は雅が死んだのを直感し悟った。
その巨大なる悲しみに松田は狂おしく大粒の涙を流しながらも、声は出さず、ヒロを確実に殺す為に、着実に断崖絶壁へと向かうべく足捌きを繰り返して行く。
笑い泣き走りながら松田は考える。
ヒロを殺すのに邪魔なのは若頭だけだと。
若頭の邪魔立てを何とか防がなければならないと考え、その方法が瞬時に閃き、松田はわざとよろめき尻餅をついて転倒した。
当然転倒した松田をヒロは見向きもせず、笑いながら追い越して行く。
その直後、若頭が足音の「死ね」と言う大合唱に紛れて「兄貴!」と喚き、砂を蹴りながら上から走り寄って来る直前、松田は立ち上がり、若頭に追い付かれないように再び大股で走り出した。