男女共学のバイビー19
この別荘にいるのが矛盾して一番危険だと、加奈は言った。
加奈が続ける。
「例えば私があなたを好きだと仮定して、私はこの別荘であなたと手に手を取り心中すれば、それはつまりこの別荘に於いての私の安全が脅かされる事となり、それは裏返せばこの別荘が異次元の安全性を損なう事となり、それこそが正にパズルの集団自殺の条理を損なう事となるわけじゃない。だから私があなたを好きではなく、この別荘を出る事は必然なのよ。そう思わない?」
ヒロ苦々しく唇を噛み締めてから答える。
「そうですね。そして加奈さんはこの安全な別荘を出て、危険に晒され殺されて、自分も死に、心中という形でパズルの集団自殺は帰結を迎えるのだと思います」
加奈が苦笑いを浮かべ否定する。
「それは無いわよ。だってこの安全な別荘から出れば、あなたは捕まり、自殺を封じられるのだから」
すかさずヒロが切り返す。
「でも加奈さんは死ぬ事に変わりは無いでしょう」
加奈が再び足を組み直し、余裕の笑みを浮かべて答える。
「そうかしら、例え私が捕まっても、裏社会の人達は若い女を金に換算する癖があるから、私は殺される可能性は低いと思うの。それはつまり君は捕まり、私は売り飛ばされるの帰結に繋がっているから、あなたが思い描く美しい心中劇は無いと思うのよ」
ヒロが首を振り否定を重ねる。
「パズルの集団自殺の条理は、不揃いの心の方位方角的配列が齎すものです。だからこの安全な別荘を出れば何が飛び出すのか分からない、全て可能性論となるのです。絶対と言うのはありません」
加奈が話しに蹴りを付けるようにうそぶく。
「だからそのスリルを私は愉しむのよ。それしか遊び道具はないじゃない」