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男女共学のバイビー186

そうだなと、若頭が微笑み言った。

無数の足音を引き連れながら、夜が次第に明けて行き、霧が徐々に晴れ、日差しに木々の緑が眩しく見え始めて来た頃、若頭が玲瓏なる空気を深呼吸して立ち止まり、雅に電話を掛けたのだが、出ないのを訝り呟いた。





「で、出ないな…」





その言葉を聞いて神経質に松田が表情を強張らせ、真逆に微笑んだ直後、ヒロが狂ったように一声笑い、前方を指差し泣き笑いしながら大声で言った。





「兄貴、自分は死ぬのが怖くなく何だか嬉しくて仕方ありません。すいません、自分はもう狂ってしまったのですかね、兄貴。あの砂の斜面を下って行けばきっと楽にバンガローに着くのですよ、兄貴、そう思いませんか、すいません」




ヒロが指差した先に細かい砂が集まった下り坂の山の斜面が、霧が晴れて来たせいで見え隠れし始めている。





若頭がそんなヒロに向かって微笑みつつ言い放った。





「その気持ちは俺も大いに分かるが、しかし今は死ぬ事よりもバンガローの方が心配だ。そう思わないか?」





ヒロが恭しく頷き、くくくと無気味な声で笑い答える。





「兄貴、自分は死ぬ事なんか言っていません。あの坂を下って行けば、きっとバンガローに着くのですよ、兄貴そう思いませんか、行きましょうよ」





松田がまるでピエロのような表情を作り小躍りしてから頷き同意し「押忍」と言った。





その仕種を見て、若頭が微笑み嬉しそうに「そうだな、あの坂を下ればバンガローに着けるかもしれないな」と言った直後、後をつけて来ていた足音の群れが催促するようにざわざわと音を立てたのを聞いて、ヒロが「ほら、足音もそうだと言っているじゃありませんか」と言い、若頭が笑い改まった口調でヒロに尋ねた。





「走って下るのか、それとも歩くのか、どちらなんだ?」





ヒロが再び泣き笑いの表情を作り言った。





「走って下った方がバンガローに早く着けるじゃありませんか?」

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