男女共学のバイビー185
は、はい、会長、私何とかやってみますと、加奈が喘ぎながら言った。
前後左右、縦横無尽に走り回り、荷物に衝突壁を貫通、あるいは助走をつけて跳躍を繰り返して暴れ回る足音に、集中して耳を澄まし注意を払っている加奈が急にうろたえ、唇を震わせながらすすり泣き出したのを、雅が咎めるように喚く。
「ど、どうして泣くの、加奈さん?!」
加奈が小刻みに震え、泣きながら震える声で答える。
「会長、私、後ろから…」
声を震わせながら言った加奈の言葉を雅が「それを言っちゃ駄目!」と遮った瞬間、加奈の背後から迫り跳躍して来た足音が加奈の背中に激突、加奈は激痛を感じ、前のめりに車椅子を押しながら「痛い!」と叫び声を上げ、足音は雅の頭部をも簡単に貫通して行き着地、走り去り、痛みを感じなかった雅はすかさず機転を利かし「加奈さん、痛みは有っても傷は無いのよ、加奈さん、そうならば、返事して頂戴?!」と喚き、加奈が動転狼狽しパニックを引き起こすのを勇躍牽制し、加奈がその一喝で気を取り直し、落ち着きを取り戻し「はい、会長、すいませんでした」と返事を返した。
そして雅が息を調える為に深呼吸をしてからおもむろに言い放った。
「不意打ちは仕方ないのよ、でも加奈さん、こちらの弱点をわざわざ教えたりはしてはいけないのよ。そして落ち着いて出来るだけ耳を澄まし神経を集中して致命傷を負わないように的を外すしかないのよ、加奈さん、分かったわね?」
当然痛みの次には傷を負わされであろうという絶大なる不安を押し殺し、加奈が動揺し震える声で返事を返した。
「は、はい、分かりました、会長、私何とかやってみます」