男女共学のバイビー182
緊迫する状況の中、お互いに抱く不安を絶対に口に出してはならないのよと、雅は加奈に言った。
無数の足音がバンガローを取り囲み、壁を突き抜け、床の上を走り、障害物に衝突衝撃を与えて貫通、反対側の壁を抜けて行く。
貫通する時の致命傷とその痛みが何時出現するのかを恐れおののきながら、二人はいたたまれない不安にかられ、固唾を飲み、推移を見守っている。
雅が深呼吸して、震えながら言った。
「加奈さん、今お互いに抱いている不安を絶対に口にしてはいけないのよ。それを口に出したら、パズルのコマの割り振りはそのように割り振られてしまうのよ。分かるわね、加奈さん?」
加奈がうろたえ動揺しながら頷き答える。
「分かります。分かりますが、パズルの割り振りは私達の心の不安を読んで、妄想を齎しているのならば、例えばその不安が現実化しても、それはあくまでも妄想であり、私達は死んだりはしませんよね、会長?」
雅が深呼吸を繰り返し、唇を震わせながら答える。
「それを祈るしか無いけれども、とにかく今はお互いに抱いている最悪のシナリオに対する不安を、絶対に口に出してはいけないのよ。分かるわね、加奈さん?」
加奈が恐怖と不安を外に追いやるように息を吐き出し答える。
「それを口に出してしまったら、妄想が現実に侵食するパズルのコマの割り振りがなされ、最悪のシナリオが具体化してしまうのですね、会長?」
雅が震える手で精神安定剤をシートから一錠出して、口に含み水も飲まず、そのまま飲み下してから言った。
「そうよ、加奈さん。パズルのコマの割り振りが心を読んで行われず、言葉のことだまに沿い呼応して具体化すると言う事、今はその可能性に賭けるしか道は無いのよ。加奈さん、分かるわね?」
加奈が戦慄のままにおののきつつ頷き答えた。
「はい…」




