男女共学のバイビー180
足音がぶつかり雅の車椅子が動いた。
雅が車椅子を自力で前進させ必死に加奈を宥める。
「加奈さん落ち着いて、これは全て妄想、幻覚なのよ。その証拠に加奈さんの身体には傷一つついていないじゃない。だから加奈さん、落ち着くのよ、加奈さん!」
加奈が雅の励ましに対して、しきりに頷き、深呼吸をしてから言った。
「そうですよね。ぶつかる衝撃は有ったけれども痛みは無かったし、傷もついていないから、これは私達が共有する幻覚妄想錯覚なのですよね、雅会長?!」
雅が力強く頷き言った。
「そうよ。この足音は私達を狂わして自殺に追い込む妄想なのよ。本当は何も無いのよ、加奈さん、だから心を落ち着かせて、妄想に心を破壊されないように注意しないといけないのよ、加奈さん、分かるわね?!」
加奈が震えながらも恭しく頷き答える。
「分かりました、雅会長、取り乱してしまってすいませんでした」
その言葉を聞いて安心した雅の車椅子の背もたれに、壁を貫通した足音がダッシュし、跳び上がってぶつかり、車椅子が前進、動いた後、雅の身体を貫通して、足音は床に着地し壁を通り抜けて行った。
加奈が戦慄驚愕の表情を作り、震える手で車椅子を指差し言った。
「会長、今確かに車椅子動きましたよね、会長?!」
雅が血走った眼を見開き、おののきを押し殺すように言った。
「い、いいえ、加奈さん、車椅子は動いてなんかいないのよ。最初からここに在ったのよ。だから加奈さん、落ち着いて…」




