男女共学のバイビー175
今、足音がしましたと、加奈が雅に言った。
雅が電話を切り、ため息をついてから言った。
「どうやら皆同じ妄想にかられ、発狂寸前何とか山林の中をこちらに帰還しようとしているのに、方向が定まらなくて出来ないみたいな案配よ。やはりどこかに呼ばれているようね。ただ救いとしては…」
加奈が尋ねる。
「救いとしては何ですか、雅会長?」
「救いとしては、その呼ばれている場所に行かなければ、パズルの集団自殺は自殺を仕向けないと言う事よね」
加奈が顔をしかめ尋ねる。
「でも逆に言えば、その呼ばれている場所に行けば、直ぐに自殺して果てる可能性が高いのですよね?」
雅が加奈の言葉を否定する。
「いや、お兄さんが今のところしっかりと二人をリードしているから大丈夫だと思うわ」
加奈が一つ頷き言った。
「同じ妄想にかられていると言う事は、逆に言えばパズルの集団自殺の誘導する術中に嵌まっていると言う事ですよね。だったら徐々に狂わされて行く事に変わりは無いと言う事ですよね、本当に大丈夫ですかね?」
憂いを湛えた表情をして雅が答える。
「今現在、私達には手も足も出ない事柄だから、ここはあの三人を信じて待つしか無いのよ。私はそう思うわ。加奈さん」
加奈が眉をひそめ口に人差し指をおもむろに当ててから聞き耳を立てて、言い放った。
「今、足音がしました。雅会長…」




