男女共学のバイビー17
加奈さんが本当に好きだからですと、ヒロは言った。
加奈が至って冷淡な態度を崩さず、質問を繰り返す。
「あなたの言っている事はまるで理不尽目茶苦茶な理屈だわ。あなたは私を好きで、一人で死ぬのは寂しいから私と死にたがっているけれども、私はあなたなんか好きではなく、ほんの火遊びだし、遊びで死ぬのなんかまっぴら御免よ。冗談じゃないわ」
ヒロが加奈の話しを聞いて辛そうに顔をしかめ涙ぐみ、尋ねる。
「加奈さんは自分を好きだから、全身全霊全てを投げ打って、自分の言い付け通りこの別荘に来たのですよね。違うのですか?」
加奈がヒロを憐れむ目付きをしてせせら笑い言った。
「単なる火遊びよ。遊びで何故私が死ななければならないの。私が見届けて上げるから、あなたが勝手に一人で死ねばいいのよ。人を巻き込まないでくれる?」
ヒロが無念そうに言う。
「自分は弱虫で一人では死ねないのです。だからこの完成する事が無い、矛盾した相関関係のパズルを未完成として完成させ、パズルの集団自殺を図ったのです。自分が誰にも邪魔されずに死ぬには、後一歩加奈さんが一緒に死んでくれると決意してくれれば、不条理なパズルは未完成という矛盾した完成を招き、自分は悲願を達成死ねたのに、本当に残念です」
加奈がしたたかに笑い言った。
「つまり私の心にあなたを好きだという項目が抜けていたから、未完成のパズルは矛盾した未完成としての完成を見なかったわけね?」
ヒロが苦渋を呑む顔付きをしてから答える。
「一応そうなりますが、まだ分かりません」
加奈が訝り尋ねる。
「まだ分からないと言うのはどんな意味?」
息をつきヒロが答える。
「加奈さんがこの別荘を離れ、自分は加奈さんが殺されるのを見届けてから、自殺しても遅くはありませんから」
加奈がほくそ笑み言う。
「もし私が殺されなかったら、どうするの?」
一度瞼を閉ざし、見開いてからヒロが言った。
「今回このパズルの集団自殺に関わった様々な人間の心模様が加奈さんを死に追いやる未完成としての不条理な完成図に期待して待つだけです」
加奈が悪意しか無い目付きでヒロを見遣り言う。
「でもこの別荘を出たら、あなたは捕まり自殺する事さえ不可能でしょう。私が死ぬのなんか待っていられないじゃない。違うかしら?」
ヒロがため息をつき答える。
「その展開はパズルの相関関係が無いのを読む事ですから、自分にはどうなるのかは分かりません。ただ自分は加奈さんが死んだら、死ぬように努力したい。それだけです」
加奈がヒロを睨みつけ言う。
「何故私にこだわる訳?」
ヒロが言い切る。
「加奈さんが本当に好きだからです」