男女共学のバイビー166
加奈が地を這う小動物の足音を聞き付けた。
車椅子で眠っている雅に膝掛けをかけてやり加奈は考える。
ヒロさんが死ねば雅会長も死に、そして松田さんやお兄さんも後を追いかけて、一人になった自分も当然死ぬに違いない。
パズルの集団自殺の苦痛に満ちた死のコマ振りは、死に対する恐怖心を全て拭い去り、死ぬ事のみを希望に変えて行く恐ろしい力と呼べよう。
死ねば、パズルの集団自殺のひとコマに成り下がり、新たなる死を増殖する材料に成り下がる。
それは悲しい出来事なのだが、避けられない事実でもあるのだ。
静寂なる中で、そぞろそんな事を考えている加奈の耳が聞き慣れない音を聞き付けた。
加奈は思考を停止し耳を澄ます。
足音だ…。
四ツ足の小動物が地を這う足音がバンガローの外側から壁を通して聞こえる。
それを確かめると、加奈の全身の血管が太い恐怖に満ちた脈動を開始して、涙ぐみ震え出し、息苦しく肩でしか息が出来なくなって行く。
死を夢見、意識が遠退く前に助けを求めなければいけないと思い、震える腕で荷物に手を入れて電話をまさぐるのだが何故か無い。
焦りは禁物だと自分に言い聞かせるのだが、意に反して気持ちは焦れるばかりであり、加奈は狂おしく雅の手を握り締め叫び声を上げた。
「雅会長、助けて下さい!」




