男女共学のバイビー165
全身を駆け巡る脈動はまるでパントマイムのようだと、松田は感じた。
ピエロのような松田はパズルの集団自殺の上で踊っているのだが、松田の流した涙がパズルに落ちて、ひとコマの色を染め、鼠の足音となり、松田を追跡し始めた。
松田は背後から足音がひたひたと追い掛けて来ているのに気が付き、後ろを振り返るのだが、振り返ると、足音は止み、前を向いて歩くと追われる。その繰り返しだ。
それはあたかも正しくパントマイムのそれであり、物悲しい笑いに裏打ちされた踊りとなっているのだが、松田は小刻みに震え出し、心臓の脈動が全身に広がって行き、息苦しさを感じ、涙ぐみながら深呼吸を繰り返す。
それがパニックの兆しであり、けして心筋梗塞で無いのは分かってはいるのだが、一連の症状は心筋梗塞と全く同じものなので、恐怖心は拭えず、いたたまれない不安に陥ってしまう自分がいる。
「自分が死んだら皆が死ぬ」と松田は自分に言い聞かせ、全身の脈動と息苦しさを収めるのだが、背後で足音が聞こえると、又しても激しい脈動が繰り返され、息苦しくなってしまう。
脈動はまるでパントマイムを踊るピエロのように脈打っては止まり、又脈打ちを繰り返しているのだがが、松田は深呼吸をしてその脈動と息苦しさを収め、パニックに陥るのを辛うじて防いでいる。
そんな状態が続いている。




