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男女共学のバイビー157
兄貴と、若頭は声を限りに松田に向かって呼び掛けた。
前方に激しく揺れるフォグランプの光芒を二つ見定め、若頭が踏ん張ってダッシュした刹那、背後で明瞭に足音が聞こえた。
若頭が足を止め振り返るが、そこには誰もいない。
背筋に悪寒が走り、全身が小刻みに震え出し、恐怖に涙ぐみ、心拍数が急速に上がり呼吸が苦しくなって行くのを鎮めるべく、若頭は二度深呼吸をして呼吸を調え、涙を拭って再び歩き出したのだが、自分の足音に加えてもう一つの足音が又しても聞こえ、若頭は振り返りフォグランプの光芒を背後に向けたが、誰もいはしない。
そして雅の号泣する声に併せて松田のやみくもに恫喝する叫び声を聞き付け、若頭は声を振り絞るように松田に呼び掛けた。
「兄貴!」




