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男女共学のバイビー155
心臓の高鳴りが遠くに聞こえ、頭が真っ白くなって行くと加奈は感じた。
加奈は感じる。赤ん坊の泣き声が動悸の高鳴りと重なり、交互に聞こえ、息苦しさに肩で息をする度に、高鳴る心臓が肥大して口から飛び出しそうになる。
叫び声を上げたくても脱力感に声が出ない。息苦しさに過呼吸が始まり、震えも感じなくなり心臓の高鳴りが遠くに聞こえ出して、頭が真っ白くなって行くと感じた瞬間「すいません、加奈さん?」と後ろから優しく声を掛けられ、それがヒロの声だと分かると、激しい動悸と息苦しさが嘘のように収まって行き、加奈は嬉しさの余り熱い涙をぽろぽろと流して、啜り泣いた。
ヒロがうずくまり泣いている加奈の肩に手を掛け、再び優しげに言った。
「加奈さん、もう大丈夫です。自分と一緒に戻りましょう」
そして泣いている加奈が恭しく相槌を打ち立ち上がって、差し出されたヒロの手を握り、二人は手を繋ぎ下に向かって歩き出した。
啜り泣いている加奈が震える声でヒロに感謝した。
「あ、有り難うごさいます、ヒロさ、ん」




