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男女共学のバイビー153
加奈が電話に向かって、お願い、助けてと、絶叫を上げた。
直ぐ後ろを誰かがついて来る気配に、いたたまれない恐怖感を抱き、加奈が奥歯を鳴らし震えながら振り返った。
だがそこにはランプに照らし出された濃霧の漆黒の闇が広がるだけで誰もいはしない。
加奈は発狂しそうな予感に狂おしくかぶりを振り、早鐘のように鳴る動悸を鎮めるべく深呼吸をして、何とか息苦しさを収め、額に滲んだ脂汗を拭った。
すると加奈の頭に赤ん坊の声が背中に張り付き自分を追っていると言う妄想が擡げ、加速度的に現実化して行く。
赤ん坊の泣き声が背中に張り付きどこまでも追い掛けて来るという、理不尽で不条理な妄想が加奈の心をわしづかみにして絶望のどん底に落として行く。
加奈は立ち止まり、うずくまって、動悸と息苦しさに胸を摩りつつ震え涙ぐみながら、ザックの中から電話を出して若頭に連絡を入れるべく一度タッチして、耳に充てた瞬間、背中を赤ん坊の泣き声で激しく叩かれ、電話を落として、恐怖におののき、狂おしく泣きながら電話をまさぐるように拾い上げ叫んだ。
「お願い、助けて!」




