男女共学のバイビー135
どうだ、ヒロと若頭はヒロを糾した。
若頭が感慨深げに言った。
「我々は濃霧立ち込める昼下がりの高原の順路がある遊歩道を、活路を見出だすべくパズルの集団自殺の狂気を何とかかい潜り勇躍全員無事に踏破生還出来たが、それは順路もあり、遊歩道だからこそ出来たと言う言葉も添えられるわけだ。逆に言えば俺の配下の者達や雅会長の配下の者達は、夜中の濃霧立ち込める山林の中、見えない敵に何時襲われるか分からない極限状況の中、恐怖におののき、いたたまれない不安に発狂、自決して果てて行ったのだが、それを思うと無念で、俺自身胸が張り裂けそうな気持ちになるな…」
罪悪感に打ちひしがれながらも、俯きつつヒロが尋ねる。
「でも兄貴や松田の兄貴は自決せずにここにいるじゃありませんか。その違いは何ですか?」
不用意とも言えるこの言葉を聞いて、松田が神経質に怒りの表情を作りヒロを睨み据えるのを、若頭が制するように答えた。
「それは俺も松田の兄貴も、お前やメンバーの者達を救いたい一心が有ったからだ。それはそのまま今回の高原踏破に結び付く事柄ではないか。お前も含めて皆他のメンバーの事を思いやったからこそ、正気を保ち生還出来たのでは無いのか。違うのか、ヒロ?」
責められヒロがうなだれたまま言った。
「すいません」
若頭がヒロを睨み、その視線を溶かすように眼を逸らしてから言った。
「ヒロ、何度も言うがそのすいませんは止めろ。ここではお前の責任の所在を論じているのではなく、あくまでもパズルの集団自殺の呪縛から脱出するべく論理を進めているのだし、お前自身も身勝手な自分の自殺願望など度外視して、皆を助ける為に最善を尽くすべきだと俺は思うが、どうだ、ヒロ?」
ヒロが俯いたまま答えた。
「はい、その通りですね、兄貴、すいません…」




