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男女共学のバイビー123
加奈がうずくまり、子守唄を歌い始めた。
背後で霧が竦み、赤子の泣き声を上げたのを加奈は耳にした。
咄嗟に振り返るが、そこには濃霧が視界を遮るだけで誰もいない。
一つ息を吐き出してから、柵に手をかけ、どちらに向かえば良いのかを、柵の手触りから判断確認しようとした時、再び赤子の泣き声が聞こえた。
水子と言う語句が脳裏を掠め、堕胎した時の忌まわしい記憶がめくるめく甦り、加奈はその悲しみに、濃霧の中死を夢見て、泣きながらうずくまり、赤子をあやすように微笑んだ。
うずくまったまま加奈が悲しげに歌を歌い始める。
「ねんねんころりよ…」
その子守唄が最後まで歌われれば加奈は自分が死ぬと考えるのだが、自分の歌声を自分で止める事が出来ない。
悲しい子守唄のいんが濃霧に包まれ、高原の静寂の中を哀しみを帯びて伝わって行く。
そして歌い終わる直前、加奈は両手で耳を塞ぎ「御免なさい。御免なさい。許して頂戴!」と叫び、その叫び声に正気を取り戻して立ち上がり、ふらつきながらも再びゆっくりと歩き出した、




