男女共学のバイビー115
条件があると、ヒロは若頭に言った。
若頭が威勢をつけてヒロを脅す。
「おい、ヒロ。お前は確信犯だろうが、未必の故意だろうが、いずれにしてもパンドラの箱を開けてしまった償いはしなければならず、それはつまり俺達の自殺願望を消去する事を手伝い、自分も生還する事であり、途中裏切る事は俺が許さないからな?!」
ヒロが若頭に尋ねる。
「それはどういう意味ですか、兄貴?」
若頭が睨みを利かしながら続ける。
「高原での脱出行の際変な動きは一切禁じるという事だ。分かったな!」
ヒロが苦笑いを浮かべ答える。
「しかし兄貴それは無理な話しではありませんか。自分はあくまでも加奈さんの後を追い心中する事が目的なのですから、それを変えてまで協力なんか出来ませんよ…」
眼鏡を指で挟み神経質にかけ直す動作をしながら若頭が続ける。
「お前は自分の身勝手な心中願望に巻き込み、ここにいる者全員の命を脅かしたのだ。その償いとしてここにいる者全員の命を助けるのがお前の義務であり、ひいては開けてしまったパンドラの箱を閉めパズルの集団自殺の暴走を止めるのも、お前自身の責任に於いて必ず果たすべき行いだろう。違うのか、ヒロ?!」
ヒロが気圧され険しげな表情を作り、寸暇黙考してから答えた。
「その責任は何とか果たしますが、それじゃ兄貴、自分としては見返りとして、それなりの条件があります?」
眉間に縦皺を寄せ、若頭が尋ねる。
「条件?」
ヒロが頷き妙にひねこびるような感じで言った。
「皆の自殺願望が解けるように自分も責任を果たすべく最善を尽くしますが、万が一加奈さんがいたたまれない不安に耐えられず自殺して果てた場合、自分も後を追い死なせて下さい。お願いします」




